成長する殺人鬼1(完結)

一二の三太郎

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六章 被害者さんへのお手紙

『九人目』

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 唯へ

  手紙、遅くなってごめんなさい。
 本当は一番最初に書こうかとも思ったんですけど、やっぱり順番通りに書くことにしました。先に殺した人間に失礼になりますから。
 俺は、相変わらず面会や裁判など忙しい毎日を送っています。
 最近、遺族との面会がとても苦痛に感じるようになりました。
 不幸のどん底にいる遺族達を解放してあげたい。今ではそう思っています。
 しかし、丈夫な仕切りが邪魔をします。包丁を突き刺し、首を絞める事が出来る距離にいながら、殺せません。
 とても歯がゆいです。
 今度誰かを殺す時は、一族全て殺してあげようと心に決めました。遺された人間が可愛そうですからね。
 ああ。唯の妹も殺したかった。
 そういえば話していませんでしたね。
 唯を殺した後、妹の心咲も殺そうとしたんですよ。でも、もう少しの所で失敗してしまったんです。
 思い出すだけで頭の中が脈打ちます。
 あと少し、本当にあと少しだったんですよ。
 でも諦めた訳ではないんです。ここを抜け出して、絶対殺してやる......と言いたい所ですけど、違います。時間がたって、考えが変わりました。
 実はある計画を立てているんです。
 聞きたいですか?
 良いです。話しましょう。
 今回捕まって、色々と考える時間がたくさんあったんです。そんな時、ふとある疑問が浮かんだんです。
 もし、自分が終身刑になってしまったら、もう人間を殺せないのか? と。
 運の良いことに、今回は隔離病棟に送られましたが、次はどうなるか分かりません。
 そこで、後継者を作ることにしたんです。
 材料は、俺と心咲ちゃんと望結ちゃんです。 ああ、望結ちゃんは希美ちゃんの妹さんですよ。
 そして二人には、俺の赤ちゃんを産んでもらうことにしたんです。良いアイデアでしょう?
 勿論子供達には、人間の殺し方を徹底的に叩き込むつもりです。
 そして最後に母親を殺させて、完成。
 色々考えたんですけど、やっぱりこれしかないと思うんです。
 とりあえず二人で二十人は産んでもらうつもりです。ある程度育ててから、間引いていけば問題は無いはずです。
 最終的に十人まで間引いて、それぞれに名前をつけてあげるんです。九人目には、唯と名付けましょう。
 どうです? 考えるだけでわくわくしませんか? 大丈夫です。すぐに実行しますよ。
 実は、今日この病院を脱走するつもりです。月に一回の病室の掃除があるからです。
 掃除用具を持ってくる医者を殺し、なりすまして逃げだすつもりです。
 唯も応援していてくださいね。もし計画が成功すれば、大量の姪ができますよ。良かったですね。
 間引いた分はそっちで面倒を見てくださいね。よろしくお願いしますね。
 それじゃあ、死んだ時にまた会いましょう。積もる話はその時に。


 明弘。

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