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3章

間一髪?

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1.裕次郎が飛び出すと同時に、ゴリラ男は動けないルイーゼに向かって獄炎大爆球ヘル・フレイム・ボールを放った。
 裕次郎はどうにかしてルイーゼを助けようと全力で走る。しかし、獄炎大爆球ヘル・フレイム・ボールのスピードは予想以上に速かった。
 無理だ。このスピードじゃ間に合わない。
 裕次郎は慌てた。このままじゃルイーゼが丸焦げになってしまう。それだけは阻止しないと。
 無我夢中で右手に力をこめる。掌から黒い煙が溢れ、渦を巻きながら鉤爪を作り、最後に手の甲を黒く染めた。
 裕次郎は変色した右手を地面に突き刺し、そのまま右手で地面を蹴った。弾丸のように発射された裕次郎は、一直線にルイーゼめがけて突き進んでいった――

2.――が、裕次郎はまだこの力に慣れていなかった。頭の中では、ギリギリでルイーゼを抱きかかえ、攻撃を華麗にかわすつもりだった。
 しかし、現実はそううまくはいかない。手元が狂った裕次郎はルイーゼにではなく、獄炎大爆球ヘル・フレイム・ボールめがけて飛びかかっていた。
「ヤバイ! このままじゃ俺が焦げる!」
 裕次郎は慌てて体勢を変えようと、手足をばたつかせる。しかし、空中でいくら暴れても何の意味も無い。
「ああああ! もう無理だぁぁ!」
 完全にビビってしまった裕次郎は、思わず目をつぶり、顔を守るように手足を前に付き出した。

3.「いたぁい!」
 気がつくと、裕次郎は壁に激突していた。一瞬壁にはりついた後、力無く地面に倒れ込んだ。
「あれ?」
 裕次郎は、痛む体を起こしながら確認する。
 壁にぶつかった所はズキズキと痛むが、それ以外は特に怪我はしていなかった。
 慌ててルイーゼを見たが、地面に倒れてはいるものの、特に怪我はしていないようだ。
 裕次郎は、ルイーゼの元へ駆け寄り、抱き起こした。
「大丈夫? 怪我してないよね?」
 裕次郎がそう言うと、ルイーゼは何か呟きながら手を握ってきた。
「な、なに? まさか俺の事好きっていったの・・・・・・あああああ!」
 いきなり手を握られキョドる裕次郎。テンパるあまり、幻聴まで聞こえていた。
 しかし現実は、ルイーゼが、魔力を吸い取る魔法を唱えていただけだった。
 全身の力が抜けた裕次郎は地面に倒れ込んだ。入れ替わるように元気になったルイーゼは立ち上がり、呪文を唱えた。
水壁ウォーター・ウォール!」
 裕次郎は噴き出してきた水の壁を見つめていた。そしてその向こうには、ゴリラ男が放っていた獄炎大爆球ヘル・フレイム・ボールが迫ってきていた。二つはぶつかり合い、大量の水蒸気を発生させた。

4.「裕次郎! なんで途中で割り込んできたのよ!」
 やっと動けるようになった裕次郎は、戦闘準備室でルイーゼの前に正座させられていた。
「だだだって、ルイーゼやられそうだったから・・・」
 裕次郎は、まさか怒られるとは思っていなかった。泣き目になった顔を見られないようにうつ向いた。
「まだなんとかなったわよ!」
 ルイーゼはプリプリと怒りながら指差してきた。
「そうだぞ裕次郎。ルイーゼならまだ何とか出来ていたかもしれないな」
 イザベルも、腕を組ながら裕次郎を見下ろしていた。
「え? なにそれ!」
 裕次郎は思わずイザベルを見上げた。さっき、
『そうだな。勝負あったな』
 とか言ってたくせに、まさかの裏切りかよ!
 裕次郎は一言文句を言おうとした。しかし、思い止まった。
 確かにルイーゼが何とかなったと言っている以上、何とかなったのかもしれないし、俺が助けたせいでルイーゼ反則負けになっちゃったし、やっぱ俺が悪いのかな・・・
「ま、まあでも、私を助けようとしてくれたみたいだし! 今回はもういいわよ!」
 ルイーゼは少し照れながら裕次郎にそう言うと、どこかに行ってしまった。
「まあ、やってしまったものはしょうがないな。それより次は裕次郎の番だ。頑張れよ」
「パパがんばって!」
「ウジウジウジ」(頑張ってくださいね)
 裕次郎に声をかけた後、みんな部屋を出ていった。ヤコはどこかにいってしまったのか、姿は無い。
 裕次郎は、気持ちを切り替える事にした。
 そうだ。この試合はデートがかかっている。絶対に落とせない。殺す気でやらなければ。
 裕次郎は気合いを入れ直し、部屋を出た。



 続く。
















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