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2章

煩悩爆発??????

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1.裕次郎はウキウキでお屋敷を後にした。それもそのはず、ヤコから『何でも』お願いを聞いてくれると言われたからだ。
「裕次郎? お願いは決まったかニャ?」
 ヤコは手を後ろに組み、顔を覗き込んでくる。
「・・・まだ決めてないよ。もう少し待ってくれる?」
 裕次郎は視線を下げ、ヤコの体を見る。女性的な魅力のある体、とは言いがたいが、それはそれでいいかも・・・
「わかったニャ! 決まったら言ってくれニャ!」
 ヤコは無邪気に「ニャア」と笑いかけてきた。
・・・この後、俺がどんなお願いをするかも知らずに、呑気なものだ。
 裕次郎は、お願いを話した後のヤコの反応を妄想する。こんな感じだろうか・・・
『ニャ・・・初めてだから、優しくお願いするニャ・・・』
 いや、もしかしたら、
『わかったニャ! 早くするニャ!』
 みたいに、積極的に来るかも・・・
 妄想が限界突破しそうになった瞬間、いきなり手を引っ張られ現実の世界に引き戻される。
「パパ? なんでわらってるの?」
 引かれた右手を見ると、サキが手を握ってきていた。
「笑ってないよ?」
 裕次郎は繋いだ手をブンブンと振りながら、慌てて誤魔化す。
「・・・ずいぶん楽しそうだが、急がないと置いていくぞ」
 イザベルが振り返り、呆れたようにそう言った。

2.「ただいまー」
 裕次郎は、玄関のドアを開けると、崩れ落ちるようにリビングに倒れ込んだ。
「サキも~」
 そう言いながら、裕次郎の隣に寝転がる。
「パパ~」
 サキが裕次郎の胸に顔を埋めて来た。目の前の頭を優しく撫でてやると、満足そうに抱きついてくる。
「ウジ~」
 ベルも反対側から背中に体当たりするように抱きついてきた。
「ベルもよしよし!」
 裕次郎は寝返りを打つと、真っ白い体を撫で始めた。
「ウジ・・・」
 気持ち良さそうに体をよじらせた後、満足したように、もたれ掛かってきた。
「裕次郎、モテモテニャ~」
 ヤコが、ニヤニヤしながら見下ろしてきた。
「・・・・・・」
 裕次郎は、無言でヤコを見上げる。
「なな、なんニャンニャ?」
 ヤコは、慌てたように後ずさりする。
「・・・・・・フッ」
 裕次郎は、狼狽えたヤコを見て、「ニヤリ」と笑ってしまう。
 この後、あられもない姿をさらすとも知らず、呑気なものだ。
「今日は、しっかりとお風呂で温まってきなよ」
 裕次郎は、それだけアドバイスすると、にやけの止まらない顔を隠すためうつ伏せになった。

3.みんなで、イザベルの作ったご飯を食べた後、お風呂に入る。
 イザベルとサキが一番風呂、二番目にヤコが、最後に裕次郎とベルが入った。豆芝は、あまりお風呂に入りたがらないので、今日はお休みだ。
「ベル、入るよ~」
 裕次郎が呼ぶと、待ってましたとばかりに飛びかかってきた。
「ウジ!」
 小さい突起を左右に動かしながら飛んできたベルを、しっかりとキャッチし小脇に抱えた。そして、そのまま風呂場へ直行した。

4.「こら! 暴れるな!」
 裕次郎は、いつものようにベルの体を洗っていた。洗い始めは大人しかったものの、やっぱりいつものように、暴れだす。
「ウジウジ!」
 真っ赤になりながら、必死に抵抗している。
 しかし、裕次郎の方が力は上だ。無理矢理押さえつけ、しっかりと洗っていく。
『ゴシゴシゴシゴシ・・・』
 綺麗に洗われたベルは、いつものように床に転がった。
 裕次郎は、ぐったりとしているベルを抱え上げ、湯船につける。
「ウジ!」
 元気になったベルは、小さい突起で、腕にしっかりと掴まってきている。
 ゆっくりと百数えた裕次郎は、水に濡れてテカテカしているベルを頭に乗せ、逆上せる前に風呂場から出た。

5.「裕次郎、イザベル達はもう寝たニャよ?」
 ヤコが猫のように、のびをしながら裕次郎を見上げてくる。
「じゃあ、俺達も寝ようか?」
「わかったニャ! それで、ヤコちゃんはどこで寝ればいいのかニャ?」
「こっちだよ。付いてきて」
「わかったニャ!」
 裕次郎は、ヤコを部屋へ案内する。ヤコは後ろからにゃあにゃあ付いてきている。
「ここだよ」
 一つの部屋を指差した後、頭の上に乗せていたベルをゆっくりと床に下ろす。
「ウジ?」
 なぜ下ろしたのか分かっていないベルは、大きな目をパチパチと瞬きしている。
「ここで寝ればいいのかニャ?」
 勝手に俺の部屋に入ったヤコは、すでにベッドに潜り組んでいる。
「うん。そうだよ」
 裕次郎は後ろ手にドアを閉め、鍵をかけた。部屋の外から微かにベルの鳴き声が聞こえてくる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 ヤコも、裕次郎も無言のまま見つめ合う。先に口を開いたのはヤコだった。
「・・・裕次郎? 部屋に案内してくれてありがとうニャ。もう大丈夫ニャよ?」
 しかし、裕次郎はヤコを寝かせるつもりも、ここから出で行くつもりも無かった。
「ヤコ、何でもお願い聞いてくれるって言ったよね?」
 裕次郎は、ゆっくりとヤコに近づいていく。
「そうだニャ。でも今日はもう遅いニャ。明日にしようニャ?」
 ヤコは身の危険を感じたのか、毛布をギュッっと握りしめる。
「ううん。お願い事はもう決まってるんだ。」
 裕次郎は、ヤコの肩にゆっくりと手をかけた。

続く。





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