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5章
戦争
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1.裕次郎は困惑していた。まさか、この世界に自分以外の『転生者』がいるなどとは予想すらしていなかったからだ。
しかも、その転生者たちとの戦争は避けられないらしい。
俺、転生者なのに転生者と戦わなきゃいけないのかよ・・・。
そして裕次郎はあることに気がつく。イザベルは『敵国の人間の痕跡があったらしいのだ』と言っていた。つまりそれは『転生者の痕跡』だ。
俺はさっちゃんがぶっ壊した裏庭に行ったのだ。
つまり。
その痕跡は俺で、戦争の原因も俺じゃん。どうしよう。
裕次郎は焦っていた。
もし自分が転生者だとばれてしまったら拷問に合うかもしれない。殺されるかもしれない。
なら先手をうって正直に言うか?
『俺、本当は異世界から来たんだ。敵兵の痕跡も俺だよ多分。でも敵じゃないから』
と。
そんなことをしたら、ほぼ間違いなくスパイと見なされて拷問されるに違いない。
ブラックジャックで殴られて、ベッドに縛り付けられて、洗面器で殴られるに違いない。
はだしの○ンでもそんな感じだったし。そんなん絶対いやだ。
ならばどうるか。
裕次郎は考え、答えを導きだした。
黙ってよう。そうしよう。
と。もしかしたら本当に敵兵がいたかもしれないし。戦争が起こるのも、もともと国同士が仲悪いせいだし。俺のせいじゃないし。
そうと決まればやることは決まっている。自分が倒される前に敵兵を倒すのみだ。こっちには悪魔の力もあるし、元神の妹もいるし、サキのビームもある。死にはしないだろう。多分。
「い、イザベル! 戦争頑張ろうね!」
裕次郎は平静を装いながらも少し噛んでしまった。
「ああ。そうだな。全員が戦闘に参加するわけではないが、精一杯頑張るとしよう。それでその子は誰なのだ?」
イザベルはさっちゃんを指差した。裕次郎はさっちゃんを連れてくると、説明を始めた。
「えっと、この子はさっちゃんって言うの。俺の妹だよ」
「裕次郎の妹? そんなのがいたのか?」
「うん・・・俺も初耳だったけど・・・」
「ん? そうなのか? 妹なのに知らなかったのか?」
「えっ!? いや複雑な家庭環境のせいで、色々事情があって!」
「お、おお。そうなのか・・・・・・」
「うん! そうなの! それで、できればしばらくここに住まわせたいんだけど、いいかな?」
「ああ。私は構わんぞ。サキもいいだろう?」
イザベルはサキを抱き上げるとそう尋ねた。そのサキの頭には、黒い角が二本そびえたっているが気にする様子は全くない。
恐らくこれも『過去改変』の力のせいだろう。
「うん! いもうとほしかったんだ!」
サキはそう言うと嬉しそうに手足をばたばたと振る。
『妹』といわれたその時、さっちゃんの体がぴくりと反応したが、反論はしないようだ。
その時、天井に張り付いていたベルが裕次郎の頭の上にぼとりと落ちてきた。
頭蓋に伝わってくる中々の衝撃に驚いていると、ベルが話しかけてきた。
「戦争ですか! 私も裕次郎さんと一緒に頑張りますね!」
ベルは嬉しそうにそう言った。
その時、イザベルが驚いたように後ずさった。
「なに! そいつ喋れるのか!」
「えっ? イザベルベルの言葉がわかるの?」
「わかるもなにもそいつ喋っているではないか!」
イザベルはそう言いながらベルを指差した。
ベルはその大きい瞳をぎょろりと動かしながら言った。
「言い忘れていましたけど私、進化したときに話せるようになったんですよ」
2.イザベルはよほど驚いたのか、しばらく固まったあと我に帰った。
「おお・・・そうなのか・・・これからもよろしく頼む・・・えっと・・・」
イザベルは握手を求めようとするが、ベルの突起を見るとその手を下ろした。
ベルはにっこりと笑いながら自己紹介する。
「私は・・・ツチノコの悪魔で、ベルといいます。よろしくおねがいします」
「・・・こちらこそよろしく頼む」
イザベルはそう言うと笑った。裕次郎は小声でベルに尋ねた。
「なんで蝿の王の子供だって言わなかったの?」
ベルも小声で答える。
「・・・蝿の王の子供なんて言えるわけないでしょう。言い忘れてましたけど、サタンのことも、裕次郎さんのその力も出来るだけばれないようにしてくださいね。まあ、あのマリアって女たちにはばれちゃっているようですが」
「・・・うん、わかった」
裕次郎は、
『なんでダメなんかな?』
と思いながらも、詳しくは訊かなかった。
続く。
しかも、その転生者たちとの戦争は避けられないらしい。
俺、転生者なのに転生者と戦わなきゃいけないのかよ・・・。
そして裕次郎はあることに気がつく。イザベルは『敵国の人間の痕跡があったらしいのだ』と言っていた。つまりそれは『転生者の痕跡』だ。
俺はさっちゃんがぶっ壊した裏庭に行ったのだ。
つまり。
その痕跡は俺で、戦争の原因も俺じゃん。どうしよう。
裕次郎は焦っていた。
もし自分が転生者だとばれてしまったら拷問に合うかもしれない。殺されるかもしれない。
なら先手をうって正直に言うか?
『俺、本当は異世界から来たんだ。敵兵の痕跡も俺だよ多分。でも敵じゃないから』
と。
そんなことをしたら、ほぼ間違いなくスパイと見なされて拷問されるに違いない。
ブラックジャックで殴られて、ベッドに縛り付けられて、洗面器で殴られるに違いない。
はだしの○ンでもそんな感じだったし。そんなん絶対いやだ。
ならばどうるか。
裕次郎は考え、答えを導きだした。
黙ってよう。そうしよう。
と。もしかしたら本当に敵兵がいたかもしれないし。戦争が起こるのも、もともと国同士が仲悪いせいだし。俺のせいじゃないし。
そうと決まればやることは決まっている。自分が倒される前に敵兵を倒すのみだ。こっちには悪魔の力もあるし、元神の妹もいるし、サキのビームもある。死にはしないだろう。多分。
「い、イザベル! 戦争頑張ろうね!」
裕次郎は平静を装いながらも少し噛んでしまった。
「ああ。そうだな。全員が戦闘に参加するわけではないが、精一杯頑張るとしよう。それでその子は誰なのだ?」
イザベルはさっちゃんを指差した。裕次郎はさっちゃんを連れてくると、説明を始めた。
「えっと、この子はさっちゃんって言うの。俺の妹だよ」
「裕次郎の妹? そんなのがいたのか?」
「うん・・・俺も初耳だったけど・・・」
「ん? そうなのか? 妹なのに知らなかったのか?」
「えっ!? いや複雑な家庭環境のせいで、色々事情があって!」
「お、おお。そうなのか・・・・・・」
「うん! そうなの! それで、できればしばらくここに住まわせたいんだけど、いいかな?」
「ああ。私は構わんぞ。サキもいいだろう?」
イザベルはサキを抱き上げるとそう尋ねた。そのサキの頭には、黒い角が二本そびえたっているが気にする様子は全くない。
恐らくこれも『過去改変』の力のせいだろう。
「うん! いもうとほしかったんだ!」
サキはそう言うと嬉しそうに手足をばたばたと振る。
『妹』といわれたその時、さっちゃんの体がぴくりと反応したが、反論はしないようだ。
その時、天井に張り付いていたベルが裕次郎の頭の上にぼとりと落ちてきた。
頭蓋に伝わってくる中々の衝撃に驚いていると、ベルが話しかけてきた。
「戦争ですか! 私も裕次郎さんと一緒に頑張りますね!」
ベルは嬉しそうにそう言った。
その時、イザベルが驚いたように後ずさった。
「なに! そいつ喋れるのか!」
「えっ? イザベルベルの言葉がわかるの?」
「わかるもなにもそいつ喋っているではないか!」
イザベルはそう言いながらベルを指差した。
ベルはその大きい瞳をぎょろりと動かしながら言った。
「言い忘れていましたけど私、進化したときに話せるようになったんですよ」
2.イザベルはよほど驚いたのか、しばらく固まったあと我に帰った。
「おお・・・そうなのか・・・これからもよろしく頼む・・・えっと・・・」
イザベルは握手を求めようとするが、ベルの突起を見るとその手を下ろした。
ベルはにっこりと笑いながら自己紹介する。
「私は・・・ツチノコの悪魔で、ベルといいます。よろしくおねがいします」
「・・・こちらこそよろしく頼む」
イザベルはそう言うと笑った。裕次郎は小声でベルに尋ねた。
「なんで蝿の王の子供だって言わなかったの?」
ベルも小声で答える。
「・・・蝿の王の子供なんて言えるわけないでしょう。言い忘れてましたけど、サタンのことも、裕次郎さんのその力も出来るだけばれないようにしてくださいね。まあ、あのマリアって女たちにはばれちゃっているようですが」
「・・・うん、わかった」
裕次郎は、
『なんでダメなんかな?』
と思いながらも、詳しくは訊かなかった。
続く。
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