2 / 6
②
しおりを挟む
四月
数名を除きほとんどの同級生が地元の同じ高校に進学した。
そして、僕は中学時代と同じ野球部に入部した。
この辺ではそこそこの強豪校として知られているだけあり僕の高校生活が部活動一色になるのはすぐの話だった。毎日朝練をして放課後はどの部活よりも遅い時間まで練習をした。
あっという間に最初の一年が過ぎた。二年生になるとさらに部活に熱が入るようになっていた。大会にも結果を残し自分の実力にも自信が持てるようにもなっていた。
僕の高校の部活は二年生の夏の大会を最後に引退をすることになっていた。
「これが最後の夏ってやつか」
自分でも驚くほど本気だった。
どおりで漫画や映画のシュチュエーションでよく使われる訳だ。
予選準決勝敗退。
完敗だった。
試合が終わりロッカールームに戻ると全員で肩を組みながら大泣きした。監督の言葉も何も入ってこない。監督が解散を告げても僕らはその場を動くことができなかった。
しばらくするとポツリポツリと帰り始め、僕も家路についた。
一人でトボトボ歩きながら無意識にこんなことを思った。
「最後の試合あの子に見に来てほしかったな。」
「?」
すぐに我に帰り自分に驚いた。
それまで部活動一色で頭から無理やり消していたはずの彼女がなんで今出てくるんだ?
これだけ時間が経っても彼女にいてほしいのか、僕は。
これはどうしようもない。
やっぱりまだ好きなんだよな。
となんだか呆れるように考えた。
数日後、引退式兼後輩への引き継ぎ式を部活内で行った。
後輩たちの後は任せろと言わんばかりの真っ直ぐな瞳を見て少し気持ちが軽くなった。
後輩のマネージャー達から色紙と花を受け取った。
真っ赤な芍薬の花だった。
意外にも監督が選んだらしく花言葉は「誠実」
うちの部活のモットーだっけか。
最後まで監督なんだなと心の中で少し笑った。
式も終わり帰り道の中、仲間の一人が花掲げてこんなことを言った。
「俺たちの高校生活はこの花みたいに青春と情熱の赤だったな!」
皆が歩みを止めた。
「くさすぎる」「よくそんなことが言えるな」
と全員でツッコんで笑った。
笑いながら僕は
「赤ね。仮に花に例えるなら確かにそうかもな」
と内心少し納得してしまった。
これは誰にも言わないでおこう。
そこからは受験勉強をしながら残りの高校生活を楽しもうと学校行事には全力で参加した。
定番だが、学園祭の準備で夜遅くまで友達と学校に残ったり、体育祭でがむしゃらになったり、放課後にファミレスで勉強したり、地元の夏祭りに行ったりとそれまで部活動で通ってこなかった普通の「青春」を送ることができていたと思う。
そんな楽しい時間の合間にも「この場に彼女がいたらな」と考えてしまう。
毎日の生活のさまざまな場面に彼女の姿を思い浮かべていた。
三年生になりあっという間に受験本番だ。
野球は高校でやりきったと感じたから進路はかなり迷った。
ならばやりたいことを見つけられるところに行こうと決めて、たくさんの業界について学べる学部がある大学へ進学することにした。
勉強は部活動の時から厳しく習慣化されていたからそこまで苦手ではなかった。
そのおかげか受験もスムーズに進み無事志望した大学に合格できた。
部活に続けてまた一つ落ち着いた。後は卒業式を待つのみ。
三月
卒業式の日だ。
周りが別れを惜しむ中僕は
「あの卒業式からもう三年も経つのか」
みたいなことを考えていた。
式を終え友人たちと先生方に別れとお礼伝えて高校を後にした。
通学路を歩きながら
「せっかくなら僕個人の高校生活も花に例えてみよう」と思いついた。
僕はあいつの花に例える感じを気に入っているらしい。
いろいろなことを思い出した。
部活動、授業、休み時間や放課後のくだらない事、一瞬気になる子もできたっけな。
そんなことを思い返しながら頭にパッと浮かんだのは水色の花だった。
なんの種類かもわからない。
だけど自分の中でとてもしっくりきた。
「水色の花か、爽やかでいいじゃないか。」
なんてことを考えた。
こうして僕は二本の花を持って高校生活に終わりを告げた。
数名を除きほとんどの同級生が地元の同じ高校に進学した。
そして、僕は中学時代と同じ野球部に入部した。
この辺ではそこそこの強豪校として知られているだけあり僕の高校生活が部活動一色になるのはすぐの話だった。毎日朝練をして放課後はどの部活よりも遅い時間まで練習をした。
あっという間に最初の一年が過ぎた。二年生になるとさらに部活に熱が入るようになっていた。大会にも結果を残し自分の実力にも自信が持てるようにもなっていた。
僕の高校の部活は二年生の夏の大会を最後に引退をすることになっていた。
「これが最後の夏ってやつか」
自分でも驚くほど本気だった。
どおりで漫画や映画のシュチュエーションでよく使われる訳だ。
予選準決勝敗退。
完敗だった。
試合が終わりロッカールームに戻ると全員で肩を組みながら大泣きした。監督の言葉も何も入ってこない。監督が解散を告げても僕らはその場を動くことができなかった。
しばらくするとポツリポツリと帰り始め、僕も家路についた。
一人でトボトボ歩きながら無意識にこんなことを思った。
「最後の試合あの子に見に来てほしかったな。」
「?」
すぐに我に帰り自分に驚いた。
それまで部活動一色で頭から無理やり消していたはずの彼女がなんで今出てくるんだ?
これだけ時間が経っても彼女にいてほしいのか、僕は。
これはどうしようもない。
やっぱりまだ好きなんだよな。
となんだか呆れるように考えた。
数日後、引退式兼後輩への引き継ぎ式を部活内で行った。
後輩たちの後は任せろと言わんばかりの真っ直ぐな瞳を見て少し気持ちが軽くなった。
後輩のマネージャー達から色紙と花を受け取った。
真っ赤な芍薬の花だった。
意外にも監督が選んだらしく花言葉は「誠実」
うちの部活のモットーだっけか。
最後まで監督なんだなと心の中で少し笑った。
式も終わり帰り道の中、仲間の一人が花掲げてこんなことを言った。
「俺たちの高校生活はこの花みたいに青春と情熱の赤だったな!」
皆が歩みを止めた。
「くさすぎる」「よくそんなことが言えるな」
と全員でツッコんで笑った。
笑いながら僕は
「赤ね。仮に花に例えるなら確かにそうかもな」
と内心少し納得してしまった。
これは誰にも言わないでおこう。
そこからは受験勉強をしながら残りの高校生活を楽しもうと学校行事には全力で参加した。
定番だが、学園祭の準備で夜遅くまで友達と学校に残ったり、体育祭でがむしゃらになったり、放課後にファミレスで勉強したり、地元の夏祭りに行ったりとそれまで部活動で通ってこなかった普通の「青春」を送ることができていたと思う。
そんな楽しい時間の合間にも「この場に彼女がいたらな」と考えてしまう。
毎日の生活のさまざまな場面に彼女の姿を思い浮かべていた。
三年生になりあっという間に受験本番だ。
野球は高校でやりきったと感じたから進路はかなり迷った。
ならばやりたいことを見つけられるところに行こうと決めて、たくさんの業界について学べる学部がある大学へ進学することにした。
勉強は部活動の時から厳しく習慣化されていたからそこまで苦手ではなかった。
そのおかげか受験もスムーズに進み無事志望した大学に合格できた。
部活に続けてまた一つ落ち着いた。後は卒業式を待つのみ。
三月
卒業式の日だ。
周りが別れを惜しむ中僕は
「あの卒業式からもう三年も経つのか」
みたいなことを考えていた。
式を終え友人たちと先生方に別れとお礼伝えて高校を後にした。
通学路を歩きながら
「せっかくなら僕個人の高校生活も花に例えてみよう」と思いついた。
僕はあいつの花に例える感じを気に入っているらしい。
いろいろなことを思い出した。
部活動、授業、休み時間や放課後のくだらない事、一瞬気になる子もできたっけな。
そんなことを思い返しながら頭にパッと浮かんだのは水色の花だった。
なんの種類かもわからない。
だけど自分の中でとてもしっくりきた。
「水色の花か、爽やかでいいじゃないか。」
なんてことを考えた。
こうして僕は二本の花を持って高校生活に終わりを告げた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。


男性向けフリー台本集
氷元一
恋愛
思いついたときに書いた男性向けのフリー台本です。ご自由にどうぞ。使用報告は自由ですが連絡くださると僕が喜びます。
※言い回しなどアレンジは可。
Twitter:https://twitter.com/mayoi_himoto
YouTube:https://www.youtube.com/c/%E8%BF%B7%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E6%B0%B7%E5%85%83%E4%B8%80/featured?view_as=subscriber
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる