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本編

09.ギルドの裏側で

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これはギルドの関係者以外立ち入り禁止の場所で行われた、ギルドの極秘会議である。

「今日、新人が持ってきたというヒトリダケについてだ。」
「あのヒトリダケのサイズは過去の資料にも2・3件というレアケースだ。何かタネがあるに違いない。」
「新人からは1人でヒトリダケを採りに行ったといっていました。なにか理由があるんでしょうか。」
「1人というワードに意味がありそうですね。明日呼び出して詳細を聞いてみましょう。」

「これでヒトリダケ不足が解消されるといいんですが…。」
「そうなれば新人のランクをもう1段階上げることも視野に入れることになります。」
「パーティー単位で上げるか彼個人で上げるか迷いどころですね。」
「単独で上げるのが妥当でしょう。」


「明日彼を呼び出した時に値段の交渉もしましょう。売ってもらわないと困りますから多少の痛手は覚悟しておいてください。」
「「「了解。」」」








「おはよう。」
「おはよう!」

昨日はお店で買いたい服を見て回った。今日か明日かにヒトリダケの値段が決まると嬉しいんだが…。

「あんた!ギルドでなんかやらかしたのかい?」

部屋から出た途端宿屋のおばちゃんに声をかけられた。ヒトリダケのことかな?

「ギルドに呼び出されるなんて相当だよ~。」



「シンさんですね。こちらへどうぞ。」

ギルドに着くやいなや職員さんに呼び出された。
銀行に宝くじを受け取りに行ってる気分だ。




「おはよう。君には聞きたいことが山ほどある。」


もしかしてギルド長だろうか。貫禄が違う。聞きたいことってなんだろう。


「まずは巨大ヒトリダケの採集感謝する。必要量としてはまだまだではあるが君が採ってきたものは大きな進歩となったことは間違いない。」

あのサイズのヒトリダケってそこまですごい事だったのか。みんな1人で行くことを知らないのかな。

「そこでだ。どうやってヒトリダケを採集したのかを教えて欲しい。もちろん教えてもらえれば報酬に色を付けさせてもらう。」

1人で採りにいくだけって昨日言った気がするんだけど…。伝わってなかったのかな。

「僕は1人で採りに行っただけです。今までそういった方はいなかったんですか?」
「そういった者の報告は上がっていない。ほんとう1人で採りにいくだけなのか?」
「ええ。」
「分かった。おい!今すぐ単独依頼手配しろ!報酬は高めに設定忘れんな!」


ギルドの裏側が騒がしくなってきた。もしかして僕達すごい事したんじゃないか?

「よし、シン。今度は報酬の話だ。ギルド内の資料を漁ってみると過去にも2・3度同じようなサイズのヒトリダケの買取履歴があった。それらは全て80万Gで取引されていた。」
「はちじゅうまん!?」
「そうなるのも無理はない。今回はそれに情報料を加えた100万Gでどうだ?」
「ひゃっ!?」

なんなんだその値段は!頭おかしいんじゃないか!?何が薬草100gで500Gだよ!薬草がかわいそうだわ!

「この値段はギルドからしても相当頑張った値段だ。出来ればこれで勘弁して欲しい。」
「な、なな、何言ってるんですか!?そっそんな、100万Gなんて、20ヶ月分の生活費ですよ!」
「もしかして不満か?」
「とんでもない!逆にいいんですか?」
「もちろんだ。これだけの発見をしたんだから。」



「シンさんおめでとうございます。冒険者ランク二階級昇格になります!これでシンさんの冒険者ランクはDとなります。他のパーティーの方は一段階昇格でEランクとなります。」

二段階!?これもヒトリダケの影響か?

「なんで僕だけ二段階なんですか?」
「本来は薬草採集の依頼達成で皆さん同じEランクへ昇格なのですがシンさんはヒトリダケの件があるのでもう一段階昇格しました。」
「はあ。」
「シンさんはもう少し自分がすごい事をしたっていう自覚を持った方がいいですよ。」

まだ現実を受け入れきれない。

「それとシンさん。100万G、バンクに振り込んでおきました。最初は自分が生活できる程度にって言っていたのに~隅に置けませんね。」
「しようと思ってしたんじゃないんですけどね。」
「またまた~謙遜しちゃって~。」
「職員さん、口調変わってますよ。」
「ハッ!失礼しました。そんなことより早くパーティーの方に報告してあげてください。きっと喜びますよ!」
「はい。」


僕はギルドバンクから10万Gを取り出してから宿へと向かった。


「「「「おかえり!」」」」
「ただいま。」
「結果、どうやったん?服買えそう?」
「どうか、服だけは買わせてください!」

「結果から言います。あのキノコ、100万Gで買い取ってもらいました。」

「「「「は?」」」」











「ギルド長、シンさんには納得してもらえましたか?」
「ああ。でもあいつ自分がすごい事をしたって気付いてなかったみたいだぞ。」
「謙遜してるんですよ。きっと。それよりか次の全体会議でこの事話さないと行けませんね。」
「胃が痛い。」
「我慢してください。」


こうしてヒトリダケ騒動は幕を閉じた。




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