さくらとホタル

湯殿たもと

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さくらとホタル 4

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さくらとホタル4


夏の暑い日差し。陽炎。蝉時雨。こんな日に外を歩くひとはすくない。犬の散歩やジョギングの人は皆朝や夕方を選ぶ。買い物は皆くるま。だから子供とロボットしか歩いていない(こんな暑い中ロボットを歩かせるのはどうかと思うが)。

子供が水鉄砲を持っていても違和感がない。だから狩りには丁度良い。前方に家庭用ロボ。籠を持って道を二つのタイヤで進んでいた。ボクは周りに人通りがないことを確認し、さらに弾が十分か確認した。ロボットのそばまで走っていき、思いっきり後ろから蹴り飛ばしてロボットを転倒させる。家庭用は床を傷めないよう軽く出来ているので転ばすのは簡単だった。

ロボットはコンピューターなので熱を排出する穴が必ずある。そこに水鉄砲で塩水をぶちこむ。そして走ってその場を離れる。一時間ほど後、その現場に舞い戻って見ると騒ぎになっていた。今までに十機近くのロボが破壊されているから当然だ。犯人は誰だ、という目つきで大人たちが周りを見渡す。しかしまだまだボクの犯行とはばれなそうだった。

あまりにしつこい犯行で手口も同じ。しかしロボットが重いという先入観のようなものがあるのか、子供の犯行とは思われていなかったのだ。

そしてボクのお父さんはロボットを扱う学者だった。なのでボクは少しも疑われなかった。

盆のころ、新しいロボットが送られてきた。今まではまっすぐ粗大ゴミかストレス発散に殴り壊していた。とても女の子のすることとは思わなかったが。

今回は町を歩かせてみることにした。模倣犯が出るかもしれない。そうしたら自分の罪もなすりつけられる。

こっそり後からつけてみた。暑い夏の日にこれだけのために歩いているのも馬鹿らしい。何日も歩いたが模倣犯は一向に現れない。つまらない。夏の終わりに今までのように破壊することにした。塩水で。しかししばらく期間が空いたせいか、人にみられてしまったのだった。

「不来方?」

「・・・」

「いったいどうしたんだよ」

「違うっ違う言わないでっ誰にも言わないでっ」

「さくら、起きろ」

「うるさいうるさいうるさい!」

ボクは船引くんを突き飛ばし走って逃げ・・・あれ、夢?

「大丈夫か、ずいぶんうなされてたが」

かなめ君が心配そうな顔をする。どうやら居眠りしてしまったらしい。大丈夫、大丈夫だよと言って顔を洗いに洗面所へ。授業で寝てしまったのは瑞雲と久しぶりのことだった。

「おい不来方」

女子生徒が話しかけてくる。この声は池田。外をボクと昔から仲が悪い。

「良い子ぶって調子のってんじゃないよ」

「え?」

「せいぜい彼氏の前では本性を出さないようにね」

くけけけけけけけと良いながら池田は去っていった。

・・・本性?あの昔の荒れてた自分が本性?いや、そうじゃない。あれはボクの本性じゃない。気の迷い。何か悪いものにとりつかれてただけ。

だとしたら今ボクがロボットを壊す夢を見て、少しでも不快に感じない瞬間があったなら、それはボクが今まさに何かにとりつかれているということ。

今のボクこそ不来方さくら。そう思っている。しかしこれが本当にボクの本性なのか。池田の言うようにかなめ君の前では本性を出していない。としたら・・・


ボクは誰?


続きます
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