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九尾の狐編
サンライズ その3 九尾の狐
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サンライズ 3
土曜日。半ドンだ!!!
「朝からテンション高いね」
呆れたように姉さんは言う。確かにテンションは高かった。部活が無くて、午後がまるまる暇なのはめちゃ嬉しい。
駅までの通学路は山道だから、幸いにもテンション高くて問題になることはなかった。ていうか普段は大抵テンション低い。電車とバスを乗り継ぎ学校へ。
「お前姉さんと仲良いよなぁ」
「んあ?」
横手が突然そんなことを言うから変な聞き返しをしてしまった。確かに仲が悪いなんてことは無いな。
「最近さぁ、俺の妹が俺を嫌ってるんだよ」
「妹っていくつだ?」
「11」
「じゃあそんな年頃だろ」
「それはわかってンだけどさぁ」
ふつうの兄弟姉妹とは違って、俺は姉さんと双子だからそういうところがあるかもしれない。
「双子はちょっとレアなケースだからな」
「レアだろうとミディアムだろうと仲の良さに関係ないだろう」
「それはそうだけど」
半ドンで、三、四時間目はホームルームなので本当に早くお昼がやってきた。菓子パンを頬張る。何故か昼休みのあとにさらにホームルームがあって下校なのがちょっと残念。授業終わりですぐ飛び出したいところ。
学校を出ると、今日は自分が料理する日だからスーパーに向かう。降りる駅の側のスーパーでオムライスの材料を買うと、卵があるのでわりと急いで家に帰る。今日の帰り道はひとりだ。家に大分近づいたところで、
「ひので君」
九尾の狐に声をかけられる。
「来てほしいんだよ、悠くんが見つかったんだよ」
「よかったじゃないか」
「でも、幽霊にとりつかれてるみたいで、それで一緒に戦ってほしいんだよ」
「・・・・・・わかった」
出来たら食材を早いところ持ち帰りたかったが仕方あるまい。九尾の狐に連れられて行くと確かにそこに鶴島さんがいた。目は昨日みた、ぎろりとした目。
「倒すと行ってもどうしたらいいんだ?」
「わたしに任せて、そこに立ってて?」
そうすると九尾の狐は俺を踏み台にして跳んだ!手には何か袋を抱えている。やたら重かった。なんだ?
「これでも食らえーーーっ!消えろ悪霊!」
袋の中身をぶちまける。もしかして塩か?鶴島さんに塩をどっさりとぶっかける。傷に染みるぞこれは。
「あっったったったっ!!!!」
鶴島さんはそのあたりをのたうち回っている。少し落ち着いてから
「いきなり何するのさ、みやこ」
と九尾の狐を見る。そして後ろにいた俺の方もちらり。目はさっきと違い、怒っているのに優しげな目だった。
「いきなりーって、じゃあさっきまで何してたのさ」
「それは・・・・・・あれ?」
「悠くんは悪霊に取り憑かれてたの」
「そういうことだったんだね、ごめんみやこ」
「いいのいいの」
九尾の狐のことを鶴島さんは「みやこ」と呼んでいるようだった。そういう名前があるのか。
「君の名前は?」
鶴島さんが俺に尋ねる。名を名乗ると九尾の狐が助けるのに手伝ってくれたんだよ、と補足した。踏み台になっただけで手助けしたのかは微妙なところ。
「そうなんだ、ありがとう。これからもよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
鶴島さんと九尾の狐の関係はいまいちよく解らなかったが、それより食材を持ち帰るのが先決だった。ちょっとした挨拶をしてその場を離れる。
夕飯は俺が作ったオムライス。研究時間不足でこの前とはほとんど変わらないレシピ。今日は土日だからとき姉さんもいるので四人の食卓。
「鶴島さん見つかったって」
「そうなんだ、良かったね、狐さん喜んでた?」
「めっちゃ喜んでた」
この話題に一番喜んでたのははるか。そして何故かとき姉さんが食いつく。
「鶴島さんってもしかして悠くん?」
「とき姉さん何で知ってるの?」
「私の中学と高校の同級生だったから」
「へーっ」
意外な関係性に俺たち三人は驚いた。九尾の狐とつるんでいるような神秘的(?)なあの人がまさか、とき姉さんと知り合いとは。
翌日、日曜日。午前中は勉強しようと机に向かってみたけれどまったかやる気が起きなかったので、午後は適当に散歩に出かける。
「やっほーひので君」
九尾の狐がひょっこりと現れる。
「どうした」
「暇してるならうちに来ない?」
「家?」
「そう、別に遠慮はいらないよ」
「じゃあお邪魔するよ」
連れてこられたのは近くの神社。何回も来たことがある。
「私はここに住んでるんだ」
そう言ってどこからかアイスティーを持ってきた。ありがたくご馳走になる。
「ねえひので君、私は東洋一の大妖怪、九尾の狐なんだけど、信じる?」
「信じてもいいかもな」
ここ数日でいろいろな体験をした。狐が化けてみせたり、謎の悪霊に取りつかれた男性も見た。そしてそれを除霊するところ。インチキくさい宗教っぽい出来事だけど、そこにあるリアルと金儲けか介在してなさそうな姿を見た。
「でもお前が東洋一の大妖怪ってところは信じられないな。もっと強そうなのいるだろう、ヤマタノオロチとか」
「はぁ、確かに、見た目かわいい系じゃダメかぁ」
九尾の狐はほんのちょっとだけ真面目そうに悩んでいた。
九尾の狐編
おしまい。
サンライズはまだ続きます。
土曜日。半ドンだ!!!
「朝からテンション高いね」
呆れたように姉さんは言う。確かにテンションは高かった。部活が無くて、午後がまるまる暇なのはめちゃ嬉しい。
駅までの通学路は山道だから、幸いにもテンション高くて問題になることはなかった。ていうか普段は大抵テンション低い。電車とバスを乗り継ぎ学校へ。
「お前姉さんと仲良いよなぁ」
「んあ?」
横手が突然そんなことを言うから変な聞き返しをしてしまった。確かに仲が悪いなんてことは無いな。
「最近さぁ、俺の妹が俺を嫌ってるんだよ」
「妹っていくつだ?」
「11」
「じゃあそんな年頃だろ」
「それはわかってンだけどさぁ」
ふつうの兄弟姉妹とは違って、俺は姉さんと双子だからそういうところがあるかもしれない。
「双子はちょっとレアなケースだからな」
「レアだろうとミディアムだろうと仲の良さに関係ないだろう」
「それはそうだけど」
半ドンで、三、四時間目はホームルームなので本当に早くお昼がやってきた。菓子パンを頬張る。何故か昼休みのあとにさらにホームルームがあって下校なのがちょっと残念。授業終わりですぐ飛び出したいところ。
学校を出ると、今日は自分が料理する日だからスーパーに向かう。降りる駅の側のスーパーでオムライスの材料を買うと、卵があるのでわりと急いで家に帰る。今日の帰り道はひとりだ。家に大分近づいたところで、
「ひので君」
九尾の狐に声をかけられる。
「来てほしいんだよ、悠くんが見つかったんだよ」
「よかったじゃないか」
「でも、幽霊にとりつかれてるみたいで、それで一緒に戦ってほしいんだよ」
「・・・・・・わかった」
出来たら食材を早いところ持ち帰りたかったが仕方あるまい。九尾の狐に連れられて行くと確かにそこに鶴島さんがいた。目は昨日みた、ぎろりとした目。
「倒すと行ってもどうしたらいいんだ?」
「わたしに任せて、そこに立ってて?」
そうすると九尾の狐は俺を踏み台にして跳んだ!手には何か袋を抱えている。やたら重かった。なんだ?
「これでも食らえーーーっ!消えろ悪霊!」
袋の中身をぶちまける。もしかして塩か?鶴島さんに塩をどっさりとぶっかける。傷に染みるぞこれは。
「あっったったったっ!!!!」
鶴島さんはそのあたりをのたうち回っている。少し落ち着いてから
「いきなり何するのさ、みやこ」
と九尾の狐を見る。そして後ろにいた俺の方もちらり。目はさっきと違い、怒っているのに優しげな目だった。
「いきなりーって、じゃあさっきまで何してたのさ」
「それは・・・・・・あれ?」
「悠くんは悪霊に取り憑かれてたの」
「そういうことだったんだね、ごめんみやこ」
「いいのいいの」
九尾の狐のことを鶴島さんは「みやこ」と呼んでいるようだった。そういう名前があるのか。
「君の名前は?」
鶴島さんが俺に尋ねる。名を名乗ると九尾の狐が助けるのに手伝ってくれたんだよ、と補足した。踏み台になっただけで手助けしたのかは微妙なところ。
「そうなんだ、ありがとう。これからもよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
鶴島さんと九尾の狐の関係はいまいちよく解らなかったが、それより食材を持ち帰るのが先決だった。ちょっとした挨拶をしてその場を離れる。
夕飯は俺が作ったオムライス。研究時間不足でこの前とはほとんど変わらないレシピ。今日は土日だからとき姉さんもいるので四人の食卓。
「鶴島さん見つかったって」
「そうなんだ、良かったね、狐さん喜んでた?」
「めっちゃ喜んでた」
この話題に一番喜んでたのははるか。そして何故かとき姉さんが食いつく。
「鶴島さんってもしかして悠くん?」
「とき姉さん何で知ってるの?」
「私の中学と高校の同級生だったから」
「へーっ」
意外な関係性に俺たち三人は驚いた。九尾の狐とつるんでいるような神秘的(?)なあの人がまさか、とき姉さんと知り合いとは。
翌日、日曜日。午前中は勉強しようと机に向かってみたけれどまったかやる気が起きなかったので、午後は適当に散歩に出かける。
「やっほーひので君」
九尾の狐がひょっこりと現れる。
「どうした」
「暇してるならうちに来ない?」
「家?」
「そう、別に遠慮はいらないよ」
「じゃあお邪魔するよ」
連れてこられたのは近くの神社。何回も来たことがある。
「私はここに住んでるんだ」
そう言ってどこからかアイスティーを持ってきた。ありがたくご馳走になる。
「ねえひので君、私は東洋一の大妖怪、九尾の狐なんだけど、信じる?」
「信じてもいいかもな」
ここ数日でいろいろな体験をした。狐が化けてみせたり、謎の悪霊に取りつかれた男性も見た。そしてそれを除霊するところ。インチキくさい宗教っぽい出来事だけど、そこにあるリアルと金儲けか介在してなさそうな姿を見た。
「でもお前が東洋一の大妖怪ってところは信じられないな。もっと強そうなのいるだろう、ヤマタノオロチとか」
「はぁ、確かに、見た目かわいい系じゃダメかぁ」
九尾の狐はほんのちょっとだけ真面目そうに悩んでいた。
九尾の狐編
おしまい。
サンライズはまだ続きます。
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