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九尾の狐編
サンライズ その2 九尾の狐
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サンライズ 九尾の狐編 2
翌日。今日は部活の紹介がある。別に何の部活に入りたい、というわけでは無いのだけど見るだけ見ることにした。
「入ったらしんどそうだけど、入ってみたい気もする」
と謎の言葉を姉さんが言う。それでも聞いてみても何に入るとかはまったく決めてないらしい。
何事もなく授業が終わって放課後になると、先輩たちがいろいろ準備をしている。ひとりでいろいろ見てると、横手が誰かに捕まっている。どうやら中学の先輩らしい。可哀想に。可哀想ではあるけど巻き込まれかねないのでとりあえず避難する。運動部の勧誘は過激なので文化部のほうに行ってみる。書道、文芸、美術。王道といえば王道だけど、あまり縁のないようなものが並んでいた。あまり入りたいのは無いかな、という印象だった。入るのはやめようかな。
いろいろ見てて時間が経ったからか、昇降口で横手にばったりと会う。結局どうなったか聞いてみるとなんとか逃げ出せたらしい。良かったな。
「良くねえよ・・・・・・あー先輩に目をつけられたらどうしよう」
「もっと強い先輩を味方につければいいんじゃないかな」
「それはそれできつい、今度はもっと強い先輩に目をつけられかねないからな」
「それもそうだ」
横手と別れて駅に向かうと、帰りの電車は姉さんと一緒だった。
「文芸はちょっとやってみたかったんだけど、部員が三年生しかいなくて、二年生も入るの決めた一年生もいないっていうから入らなかったよ」
「確かにそれは躊躇するなぁ」
最寄りの駅で降りて帰り道をひたすら歩く。今日は寒かったからか、家の中が暖かく感じた。
「おかえりー」
「ただいま」
妹のはるかが出迎える。
「なんだか疲れてるみたいだよ?大丈夫?」
「そうか?」
「中学校のときより疲れてそうに見えるよ」
「そうかなぁ」
はるかはじっと俺の顔を見る。いや、じっと見ることはないだろう。
「疲れたんじゃなくて、老けたんじゃないの」
姉さんがニヤニヤしながらジョークを言う。そんな簡単に老けるか。真面目に考えると学校までが遠くなったのが原因だろう。
自分の父さんと母さんは離れたところで暮らしている。仕事の都合らしいが、二人とも遠くで暮らしているのは不思議だ。おそらく話の都合だろう。母さんの妹のときさんが一緒に暮らしている。が、帰りがいつも遅いのでなかなか晩御飯を一緒に食べたり、ということは少ない。
というわけで、俺と姉さんが交互に晩御飯を作っているのだ。どうだ、凄いだろう。高校生の男子で料理が作れるやつなんかそうそういない。今日はオムライスにする。最初に作ってから三年のわりと自信のあるメニュー。
「おいしいね」
とはるかは満足顔。
「ひーくん、それで満足なの?」
「なにぃっ!?」
「もっと、美味しい、オムライスの道を研究してみない?」
「さらに美味しいオムライスだと!?」
そういえば、失敗しないで安定して作れるようにはなったが、さらに美味しい、という研究はまったくしていなかった。確かにその研究は必要だ。隠し味か?それとも調理法の見直しがいるのか?
「そういえば高校に料理研究会っていうのがあったね」
「んー、それはなんかちょっとなぁ、部活でやるのとは違う気がする」
「そっか。それに女子しかいないような部活に入ったら変な男みたいに思われるしね」
「それもあるな」
何かしら、独学でやってみるか。
翌日。独学で料理の研究をやるといっても難しいので、放課後に図書館で本を借りようかな、などとぼんやり考えながら学校へ向かう途中のこと。
「あの人、九尾の狐っていうひとが探してる人に似てない?」
「えっどこだ?」
「あそこあそこ、今コンビニに入っていった」
「行ってみよう」
追ってコンビニに入って影から観察すると、確かにその人にそっくりだった。とりあえず名前を呼んでたしかめる。
「鶴島さん。鶴島悠さん」
「・・・・・・」
こちらをちらりと見るが、気にせずといった感じ。もしかして別人か?
「写真に写ってた人はもっと優しげな表情だったよね」
「確かにそうだ」
さっきちらりと見られたときは、ぎろりと睨むような目だった。写真の彼とは違う。
うーん、九尾に聞いてみるしかないか。ケータイを取り出す。・・・・・・番号知らないな。姉さんは知らないだろうし。
結局どうすることも出来なくその場を離れた。
放課後は急いでその鶴島さんらしき人のいた場所に戻った。図書館は後にすることにして探すが、いない。
「その鶴島っていう男をなんで探してるんだ?」
興味本位でついてきた横手に尋ねられ、今までの成り行きを話す。
「九尾の狐なんてそんな漫画みたいなのがいるわけないだろう、そいつが鶴島を探してるのは確かかもしれないけど、狐じゃねえ」
「そうかねぇ」
横手も実際に会ったら考えも変わるにちがいない。百聞は一見に如かずというやつだ。鶴島さんはその日はまったく見つからなかった。図書館に行って料理の本を借りて帰る。
鶴島さんはまた見つかるだろうか?
続きます。
翌日。今日は部活の紹介がある。別に何の部活に入りたい、というわけでは無いのだけど見るだけ見ることにした。
「入ったらしんどそうだけど、入ってみたい気もする」
と謎の言葉を姉さんが言う。それでも聞いてみても何に入るとかはまったく決めてないらしい。
何事もなく授業が終わって放課後になると、先輩たちがいろいろ準備をしている。ひとりでいろいろ見てると、横手が誰かに捕まっている。どうやら中学の先輩らしい。可哀想に。可哀想ではあるけど巻き込まれかねないのでとりあえず避難する。運動部の勧誘は過激なので文化部のほうに行ってみる。書道、文芸、美術。王道といえば王道だけど、あまり縁のないようなものが並んでいた。あまり入りたいのは無いかな、という印象だった。入るのはやめようかな。
いろいろ見てて時間が経ったからか、昇降口で横手にばったりと会う。結局どうなったか聞いてみるとなんとか逃げ出せたらしい。良かったな。
「良くねえよ・・・・・・あー先輩に目をつけられたらどうしよう」
「もっと強い先輩を味方につければいいんじゃないかな」
「それはそれできつい、今度はもっと強い先輩に目をつけられかねないからな」
「それもそうだ」
横手と別れて駅に向かうと、帰りの電車は姉さんと一緒だった。
「文芸はちょっとやってみたかったんだけど、部員が三年生しかいなくて、二年生も入るの決めた一年生もいないっていうから入らなかったよ」
「確かにそれは躊躇するなぁ」
最寄りの駅で降りて帰り道をひたすら歩く。今日は寒かったからか、家の中が暖かく感じた。
「おかえりー」
「ただいま」
妹のはるかが出迎える。
「なんだか疲れてるみたいだよ?大丈夫?」
「そうか?」
「中学校のときより疲れてそうに見えるよ」
「そうかなぁ」
はるかはじっと俺の顔を見る。いや、じっと見ることはないだろう。
「疲れたんじゃなくて、老けたんじゃないの」
姉さんがニヤニヤしながらジョークを言う。そんな簡単に老けるか。真面目に考えると学校までが遠くなったのが原因だろう。
自分の父さんと母さんは離れたところで暮らしている。仕事の都合らしいが、二人とも遠くで暮らしているのは不思議だ。おそらく話の都合だろう。母さんの妹のときさんが一緒に暮らしている。が、帰りがいつも遅いのでなかなか晩御飯を一緒に食べたり、ということは少ない。
というわけで、俺と姉さんが交互に晩御飯を作っているのだ。どうだ、凄いだろう。高校生の男子で料理が作れるやつなんかそうそういない。今日はオムライスにする。最初に作ってから三年のわりと自信のあるメニュー。
「おいしいね」
とはるかは満足顔。
「ひーくん、それで満足なの?」
「なにぃっ!?」
「もっと、美味しい、オムライスの道を研究してみない?」
「さらに美味しいオムライスだと!?」
そういえば、失敗しないで安定して作れるようにはなったが、さらに美味しい、という研究はまったくしていなかった。確かにその研究は必要だ。隠し味か?それとも調理法の見直しがいるのか?
「そういえば高校に料理研究会っていうのがあったね」
「んー、それはなんかちょっとなぁ、部活でやるのとは違う気がする」
「そっか。それに女子しかいないような部活に入ったら変な男みたいに思われるしね」
「それもあるな」
何かしら、独学でやってみるか。
翌日。独学で料理の研究をやるといっても難しいので、放課後に図書館で本を借りようかな、などとぼんやり考えながら学校へ向かう途中のこと。
「あの人、九尾の狐っていうひとが探してる人に似てない?」
「えっどこだ?」
「あそこあそこ、今コンビニに入っていった」
「行ってみよう」
追ってコンビニに入って影から観察すると、確かにその人にそっくりだった。とりあえず名前を呼んでたしかめる。
「鶴島さん。鶴島悠さん」
「・・・・・・」
こちらをちらりと見るが、気にせずといった感じ。もしかして別人か?
「写真に写ってた人はもっと優しげな表情だったよね」
「確かにそうだ」
さっきちらりと見られたときは、ぎろりと睨むような目だった。写真の彼とは違う。
うーん、九尾に聞いてみるしかないか。ケータイを取り出す。・・・・・・番号知らないな。姉さんは知らないだろうし。
結局どうすることも出来なくその場を離れた。
放課後は急いでその鶴島さんらしき人のいた場所に戻った。図書館は後にすることにして探すが、いない。
「その鶴島っていう男をなんで探してるんだ?」
興味本位でついてきた横手に尋ねられ、今までの成り行きを話す。
「九尾の狐なんてそんな漫画みたいなのがいるわけないだろう、そいつが鶴島を探してるのは確かかもしれないけど、狐じゃねえ」
「そうかねぇ」
横手も実際に会ったら考えも変わるにちがいない。百聞は一見に如かずというやつだ。鶴島さんはその日はまったく見つからなかった。図書館に行って料理の本を借りて帰る。
鶴島さんはまた見つかるだろうか?
続きます。
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