寄り道戦線異状ナシ!

湯殿たもと

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寄り道戦線異状ナシ!8

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寄り道戦線異状ナシ!8

六月十五日。午後二時。浦佐と俺は例の作戦を実行しようとしていた。調達した潜入先の制服を着て忍び込む。人はたくさん歩いているがかえってありがたい。隠れるなら人混みの中が一番だ。

別の目的があるという浦佐と別れて一人風紀委員の教室へ。どの棟のどの階か聞いていたので結構すぐ見つかる。鍵は開いていない。開いていなくて正解なのだ。忍び込むわけだから。職員室まで行き鍵を調達する。そして再び部屋の前に行き、鍵を使って忍び込む、というより堂々と入る。丁度その時チャイムが鳴った。二時十分。早めに済ませたいところだ。

探し物の地図はすぐ見つかった。非常に分かりやすいところに置いてあって助かる。一枚いや高原の分も取ってすぐ脱出する。浦佐は大丈夫だっただろうか。町を学生の中に紛れて歩き、待ち合わせ場所のコンビニに行くと既に私服に着替えた浦佐の姿があった。

「さっさと着替えちまった方がいいぞ」

着替えてしまえば間違って風紀委員に捕まることもない。トイレで着替えるとやっと緊張から解放された。浦佐にこちらの作戦の成果を伝え、逆に浦佐はどうだったか聞いてみる。

「いや、まあ、最善は尽くしたけど 」

あまりはっきりしない返事だった。これ以上深入りしないでおこう。


六月十七日。

ムシムシとした暑い朝。朝からこんな暑さだとどうなってしまうのか、という気持ちを押さえながら登校。着くなり磐田にこっそり制服を返しておく。

昼休み、寝てなまった体を伸ばしながら学食に行くと先に来ていた浦佐が青い顔をしている。どうしたのかと聞くとやはり土曜のこと。

「忍び込んだのが噂になってるんだよ」

小声で話す。以外にもメンタルが弱いのか、かなり参っているようだった。そのうちバレるかもしれないな。

「しかも俺の方しか話題になってねぇ、代われっ」

「代わるかっ」


放課後。どんよりとした空に変わってきた。明日は雨かな。

「明智くん」

「高原、いいものがあるから一緒に帰ろうぜ」

「良いものってなんですか」

「今は見せられない。ついてこい」

出来るだけ人に見られないようにしたいので人気のないところに連れていく。安全を確認してからそれを開く。

「これは・・・・・・もしかして取り締まり地図?」

「そうだ、この中で風紀委員は仕事をしているんだ。つまりこの外は安全なんだ」

取り締まり範囲はそこそこあったが、無理のない広さだ。先週の梨木堂は外。

「牧場の朝っていうお店があるんですけどもしかして外ですか?」

「たぶん」

入ったことはないがすぐそこっていう訳でもない。せっかくだから行こうか。

「そういえば学校に誰かが忍び込んだって噂になってたんですけどもしかして明智くんなのですか?」

「俺も忍び込んだけど噂になってるのは俺の友達だ」

「先生も大慌てでたくさん見回りをして歩いているそうですよ」

「何、それじゃきついなぁ、臨時で遠くまで見張りしてるかもしれないし。今日はやめとこう」

少し残念な顔をした千穂と別れる。今度こそは。


続きます

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