夜明けのひかり

湯殿たもと

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1章 一年目の七月

夜明けのひかり その4

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夜明けのひかり その4


今日は雨。どんよりとした雲と地面にできた水たまりの風景。

「今日は雨かぁ、傘持ってるか?」 

「ん、あるけど・・・・・・でも平日のこの時間はほとんど誰も歩いてないよ」

「そうだな、雨だし余計にそうだ」

何故今私は東海くんを引き留めたのだろう。

「本とか漫画借りてもいいか?」

「いいよ」

「サンキュー」

私は宿題を始めることにした。今度の冬は受験だし、早めに宿題は終わらせてしまわないと。

・・・・・・

あまり集中出来ない。さっき東海くんを引き留めたことが頭に残っている。東海くんは人を探しにきたのにそれを引き留めるというのは良くない。東海くんはそこまで切羽詰まっているようには見えないのだけど、それでも引き留めたりしては駄目だ。

「やっぱり傘貸してくれ、出掛けてくる」

「私も行くよ」

引き留めてしまった分手伝って返さないと。別の方向に別れて探せばもだと早く見つかるかもしれない。・・・・・・でも、私はその人の姿を見たことが無いし、ひとりでは見逃してしまうかもしれない。だから取り敢えず一緒に行動する。

「その探してる人の写真ってありますか?」

「そうだな、撮ったときと年は変わっているがこれとかどうかな」

一枚の写真。ピースしている女の子と東海くん。どこかに出掛けたときの写真らしい。この人が湯殿たもとなのか。結構可愛い。

「これならわかるか?」

「大丈夫」

こうして二手に別れて探し始めた。写真を持っていると人に聞きやすくて助かる。そして歩いていたお婆さんに訊いてみるとなんと最近見た覚えがあるという。海の方に歩いていったとか。しかしどこに住んでいるかというのは解らなかった。合流してその事を伝える。東海くんの顔は少しだけ緩んだが、しかしまた顔が固くなる。なかなか難しい問題らしい。

夕方には雨が止んだので海へ。黒い雲の隙間から橙色の空が見える。波は穏やかに、繰り返し打ち寄せて、海鳥は浜辺を歩く。すべてがゆっくり流れる。

東海くんは近くの商店に買い物に行った。それと入れ替わりに荒海さんがやってくる。

「見つかりそう?」

「解らないよ・・・手がかりはあるけれど」

「でも、絶対見つかる、諦めないで」

荒海さんは何故か確信したような口調で言った。

「ん、荒海さんもいたのか」

「うん」

「ジュース二本しか買ってないぞ・・・ほら」

私と荒海さんにジュースを手渡す。そして海を見つめていた・・・


続きます
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