天端怪奇伝

湯殿たもと

文字の大きさ
上 下
23 / 23

天端怪奇伝EX3

しおりを挟む
天端怪奇伝EX3


「こんばんはっ!」

小柄な体にぱっちりとした目。なんの変哲もない(と言ったらおかしいか)女の子。黒い翼にちょこんと生えた角。それが普通の女の子ではなく悪魔という事実を証明する。

「何だもう寝るところだよ」

時計は午前一時の十分前。流石に寝ないと明日の授業に支障が出る。ほんのちょっとだけ、拒絶するような反応をとってみる。

「せっかく地獄から休みを取ってきたんだよ」

「週に二回も来てるじゃないか」

「それは最低限保証された権利だよ」

本当はこうして彼女が来てくれるのは嬉しいこと。しかし今は眠い。歯を磨いてもうまさにいま寝るところなのだ。

「いま本当に寝ないといけないんだよ、あした学校だから」

「そっか」

すこししょげたような顔をする。しかし事情は解ってくれたらしい。そして自分と同じ布団を被る。おやすみなさい。・・・・・・。


いろはは静かな寝息をたてている。いろはとは相思相愛の関係にあるのは確かなのだが、実際はただ仲の良い友達にとどまっている、という実感だ。いろはにしたって何か変に戸惑うこともなくこうやってくっついている。中学三年生の年なのだから多少は意識しそうなものだが・・・・・・。でも現にこうやって友達か、親戚か、あるいは兄妹のように寝ているのが何とも思っていない証明になるのかもしれない。

しかしそれだったらいろはは母のところに行くべきであろう。家族で過ごした方が良い。それでもこちらを選ぶというのはそれは嬉しいことかも知れないけど、不思議に思う。

目が冴えてきた。カーテンを開けると月明かりが差し込む。綺麗ななお月様がこちらを覗いてくる。変わらずいろはの寝息が聞こえる。この夜空のしたにはいったいいくらの家族がいるのだろうか。どんな思いをしてくらしているのか。そんなこと考えたってわからない。道ですれ違った車のドライバーそれぞれに人生があっても交わることはないように、ひとの家族の事を知ることなんて無い。

いろはにしたって家族ではないし、明智の家として家族があるはずだ。

ははは、何を考えてるんだろうな。柄でもない。そんなこと考えたってなんにもならない。思った通りに素直に、また同じ布団に入った。寝る!いま寝ないと明日がきついからな。

・・・・・・

・・・

「お父さん」

心地よい眠りの中で、いろはがうっすらそう呟いたような気がした。


おしまい。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

声劇台本集〜クリスマス編〜

咲良
恋愛
声劇用に書きおろしたもの 1人用、2人用あります。 フリー台本です。感じたまま演じて下さい。ただし、悪ふざけはNGです。 (解釈次第で色んなパターンになるよう作ってあります) 使用報告も不要です。 報告して下さるならTwitterのDMで事後報告で大丈夫です。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...