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トーエの気迫
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水獣・雷獣ともに
「溶剛の斬」『溶剛の斬』
で倒し、これで集めた魂のかけらは九十個になった。
あとはガイアの頑張りを期待するだけ、と国家図書館に戻ると人だかりが出来ている、
(なんだろう)
と覗いてみると何という事か!
ガイアが張り付けられて鞭打ちを受けている!その横で奥様と思わしき女性とトーエが送った靴下を履いた赤ん坊が泣き叫んでいた。
声が聞こえる
《誰の命令で魂のかけらを持ち出そうとしたのか言え!》
[何のことかさっぱりわからんな、俺が欲しかったから持ち出したんだ]
張り付けられて鞭打ちにされてもなお、僕達の事は口外せずに彼は守ってくれていたのだ!
《これ以上言わないと、お前の家族を殺す!》
[やめろ!それが国家のする事か!俺は殺されても構わないから家族には手を出すな!]
・・・恐らく僕も弟も初めて見ただろう、トーエが本気で怒った瞬間を。
後ろで結ばれていた髪留めが自然と外れ、長い髪が静電気を帯びたようにパチパチと音を立てて緩やかに逆立っている。
泣いている赤ん坊目指して真っ直ぐに歩き、彼女が優しく微笑むと赤子は泣き止んだ。
突然の乱入者にざわつく周囲を気にすることなく、ガイアの奥様に何か耳打ちしたかと思うと、今度は鞭打ちされている彼の元に歩み寄った。
[バカヤロウ!なんで出てきたんだ!]
そう叫んだガイアに彼女は
『リファル・エミン』
と唱え、傷を回復させて眠らせた。
そして国家軍の方を向き再び髪が逆立ったかと思うと、
『ラゴ―マ』
と唱え、炎の雨を降らせたのだ。
(トーエ、攻撃魔法使えたんだ)
『この勇気ある民に刃を向けるものは私が相手になりましょう、その覚悟があるのなら出てきなさい』
炎の雨に怯んだ国家軍だったが彼女が一人という事もあり
「かかれー!」
という号令と共に多数出てきた。
今の彼女なら暴走しかねないという事と、このまま彼女を危険な目には合わせられないという事で僕等の意見は一致し、彼女の前に聖騎士二名が立ちはだかった。
『言ったよなあ、その気になれば国ごと聖騎士が壊すって!』
「お前ら、覚悟は出来ているんだろうな、本気でやるぞ?」
僕等に凄まれてすっかり大人しくなってしまった国家軍に
「ガイアが持っていた物を出せ」
と(魂のかけら十個・一冊の本)ガイアと奥さんと赤ん坊、みんなまとめて
『ラルド』
と帰還魔法で宿屋に帰ってきた。
奥様とガイアをベッドに休ませ、赤ん坊はトーエが抱っこしてあやしている、気になった僕は彼女に聞いてみた。
「さっきの『ラゴーマ』って、いつ覚えたの?」
『え、なにそれ?』
・・・どうやら彼女もいわゆる(バーサク状態)になったみたいだ。
ペンダントの中に眠るサンが彼女を守るために一時的に彼女の身体を借りて魔法を発動させたのだろう。
あの時僕達兄弟が飛び出しておいて正解だったのかもしれない、下手したら大惨事どころか伝説の勇者とあれば、国なんか簡単に滅ぼしてしまっていた事だろう、僕らはゾッとした。
『ねえ、赤ちゃんお風呂入れてあげたいから手伝ってくれる?』
僕等はその言葉を聞き、心臓が口から出そうなほどドキドキした。
(え、だってあれだろ?赤ちゃんお風呂に入れるって事はトーエもお風呂に入るわけで、そうなると・・・)
大の男が二人して真っ赤になっているのを見てクスクス笑いながら
『あはは、私は服着てるから大丈夫よ』
「なあーんだ・・・」
『ちぇっ、そうだったのか』
と口にした二人に、意地悪そうな顔で
『なあに、二人とも。じゃあ一緒にお風呂入る?十体倒したお祝いに』
とトーエ。
「え、いいの?」
『マジで!!』
『冗談よ、お客様いらっしゃるのに何言ってるの!奥様起きてこられたから二人とも外を見張ってて、バカ!』
僕等は素直にすっかりしょげてしまった、一瞬本当に嬉しかっただけにそのショックは相当なダメージだった。
外に出るべく剣を掴もうとしゃがんだ時に
『ありがとう、二人とも大好きよ』
とお互いの頬に女神がご褒美をくれた、すっかり元気になった僕達は無駄に紫色のオーラを放ちながら二人共闘態勢で宿を守っていた、俺達単純だ。
その日からガイア家族が同居人として、食事の世話から洗濯までいろいろ手伝ってくれるようになった。
これで魂のかけらは百個になったものの、錬金についても調べなければならないし、「魂の雫」がどうしたらできるのか、できたとしてどのように使えばいいのか、何か呪文は必要なのか、全くわからない。
とりあえず今自分達が出来る事は何かを考える、ガイア一家が快適にう事が出でき、赤ちゃんに優しい環境を作る事。
魔法も剣技も使わずに僕達三人は見違えるほど綺麗に宿屋を修復した。
トーエはお洗濯担当、僕は部屋の内装修理担当、コタロウは雨漏りや壊れた壁の修理担当として丸一日かけて素敵な宿屋へと変化を遂げたのだ。
夜になるとポットとフライパンから人間の姿になるお父様とお母様も、この来客にとても喜んでくれた。
お代はコタロウが帰ってきたこと、コタロウが大量の金貨を持ってきたこと、そしてトーエが幸せそうにいつも笑っている事ですべて解決した。
今まで修行中心の生活でお父様とお母様の起きている時間帯はなるべく会話をしたり眠ったりする時間に充てていた(昼夜逆転)が、一般のお客様がいらっしゃった以上は昼は昼、夜は夜である。
たとえ昼なのか夜なのかわからない空であっても活動時間の変更は必要、我々三人はしばらく時差に苦しむことになるのだが。
宿も綺麗になり暖炉も復活し、コタロウが作り上げた見事なダイニングテーブルも、僕が作った赤ちゃんベッドもちゃんと役に立っている。
そんな穏やかな日が三日ほど続いて僕らの時差ボケも無くなってきた頃、ガイアの奥様が考古学者であるという話を聞いた。
僕らが読んだ伝説の騎士に関する文献も聖獣に関する文献もちゃんと理解していて、我々の経験をもとに知識を加えて色々な話をしてくれた。
「溶剛の斬」『溶剛の斬』
で倒し、これで集めた魂のかけらは九十個になった。
あとはガイアの頑張りを期待するだけ、と国家図書館に戻ると人だかりが出来ている、
(なんだろう)
と覗いてみると何という事か!
ガイアが張り付けられて鞭打ちを受けている!その横で奥様と思わしき女性とトーエが送った靴下を履いた赤ん坊が泣き叫んでいた。
声が聞こえる
《誰の命令で魂のかけらを持ち出そうとしたのか言え!》
[何のことかさっぱりわからんな、俺が欲しかったから持ち出したんだ]
張り付けられて鞭打ちにされてもなお、僕達の事は口外せずに彼は守ってくれていたのだ!
《これ以上言わないと、お前の家族を殺す!》
[やめろ!それが国家のする事か!俺は殺されても構わないから家族には手を出すな!]
・・・恐らく僕も弟も初めて見ただろう、トーエが本気で怒った瞬間を。
後ろで結ばれていた髪留めが自然と外れ、長い髪が静電気を帯びたようにパチパチと音を立てて緩やかに逆立っている。
泣いている赤ん坊目指して真っ直ぐに歩き、彼女が優しく微笑むと赤子は泣き止んだ。
突然の乱入者にざわつく周囲を気にすることなく、ガイアの奥様に何か耳打ちしたかと思うと、今度は鞭打ちされている彼の元に歩み寄った。
[バカヤロウ!なんで出てきたんだ!]
そう叫んだガイアに彼女は
『リファル・エミン』
と唱え、傷を回復させて眠らせた。
そして国家軍の方を向き再び髪が逆立ったかと思うと、
『ラゴ―マ』
と唱え、炎の雨を降らせたのだ。
(トーエ、攻撃魔法使えたんだ)
『この勇気ある民に刃を向けるものは私が相手になりましょう、その覚悟があるのなら出てきなさい』
炎の雨に怯んだ国家軍だったが彼女が一人という事もあり
「かかれー!」
という号令と共に多数出てきた。
今の彼女なら暴走しかねないという事と、このまま彼女を危険な目には合わせられないという事で僕等の意見は一致し、彼女の前に聖騎士二名が立ちはだかった。
『言ったよなあ、その気になれば国ごと聖騎士が壊すって!』
「お前ら、覚悟は出来ているんだろうな、本気でやるぞ?」
僕等に凄まれてすっかり大人しくなってしまった国家軍に
「ガイアが持っていた物を出せ」
と(魂のかけら十個・一冊の本)ガイアと奥さんと赤ん坊、みんなまとめて
『ラルド』
と帰還魔法で宿屋に帰ってきた。
奥様とガイアをベッドに休ませ、赤ん坊はトーエが抱っこしてあやしている、気になった僕は彼女に聞いてみた。
「さっきの『ラゴーマ』って、いつ覚えたの?」
『え、なにそれ?』
・・・どうやら彼女もいわゆる(バーサク状態)になったみたいだ。
ペンダントの中に眠るサンが彼女を守るために一時的に彼女の身体を借りて魔法を発動させたのだろう。
あの時僕達兄弟が飛び出しておいて正解だったのかもしれない、下手したら大惨事どころか伝説の勇者とあれば、国なんか簡単に滅ぼしてしまっていた事だろう、僕らはゾッとした。
『ねえ、赤ちゃんお風呂入れてあげたいから手伝ってくれる?』
僕等はその言葉を聞き、心臓が口から出そうなほどドキドキした。
(え、だってあれだろ?赤ちゃんお風呂に入れるって事はトーエもお風呂に入るわけで、そうなると・・・)
大の男が二人して真っ赤になっているのを見てクスクス笑いながら
『あはは、私は服着てるから大丈夫よ』
「なあーんだ・・・」
『ちぇっ、そうだったのか』
と口にした二人に、意地悪そうな顔で
『なあに、二人とも。じゃあ一緒にお風呂入る?十体倒したお祝いに』
とトーエ。
「え、いいの?」
『マジで!!』
『冗談よ、お客様いらっしゃるのに何言ってるの!奥様起きてこられたから二人とも外を見張ってて、バカ!』
僕等は素直にすっかりしょげてしまった、一瞬本当に嬉しかっただけにそのショックは相当なダメージだった。
外に出るべく剣を掴もうとしゃがんだ時に
『ありがとう、二人とも大好きよ』
とお互いの頬に女神がご褒美をくれた、すっかり元気になった僕達は無駄に紫色のオーラを放ちながら二人共闘態勢で宿を守っていた、俺達単純だ。
その日からガイア家族が同居人として、食事の世話から洗濯までいろいろ手伝ってくれるようになった。
これで魂のかけらは百個になったものの、錬金についても調べなければならないし、「魂の雫」がどうしたらできるのか、できたとしてどのように使えばいいのか、何か呪文は必要なのか、全くわからない。
とりあえず今自分達が出来る事は何かを考える、ガイア一家が快適にう事が出でき、赤ちゃんに優しい環境を作る事。
魔法も剣技も使わずに僕達三人は見違えるほど綺麗に宿屋を修復した。
トーエはお洗濯担当、僕は部屋の内装修理担当、コタロウは雨漏りや壊れた壁の修理担当として丸一日かけて素敵な宿屋へと変化を遂げたのだ。
夜になるとポットとフライパンから人間の姿になるお父様とお母様も、この来客にとても喜んでくれた。
お代はコタロウが帰ってきたこと、コタロウが大量の金貨を持ってきたこと、そしてトーエが幸せそうにいつも笑っている事ですべて解決した。
今まで修行中心の生活でお父様とお母様の起きている時間帯はなるべく会話をしたり眠ったりする時間に充てていた(昼夜逆転)が、一般のお客様がいらっしゃった以上は昼は昼、夜は夜である。
たとえ昼なのか夜なのかわからない空であっても活動時間の変更は必要、我々三人はしばらく時差に苦しむことになるのだが。
宿も綺麗になり暖炉も復活し、コタロウが作り上げた見事なダイニングテーブルも、僕が作った赤ちゃんベッドもちゃんと役に立っている。
そんな穏やかな日が三日ほど続いて僕らの時差ボケも無くなってきた頃、ガイアの奥様が考古学者であるという話を聞いた。
僕らが読んだ伝説の騎士に関する文献も聖獣に関する文献もちゃんと理解していて、我々の経験をもとに知識を加えて色々な話をしてくれた。
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