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最終章「仲直りのエガオ」
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朝。私はラケットケースを背中にかけ、運動靴を履く。玄関のドアを開けると、光の眩しさに一瞬目の前がクラクラした。最近益々暑くなってきたから、水筒もちゃんと持っていかないと。
「行ってきます」
お母さんはすでに仕事に行っちゃってて、家の中には誰もいない。だけど私は穏やかな顔で、小さくそう呟いた。
「あっ、ツバサちゃんおはよー!」
「ツバサー!」
お隣さんの二階から、私の名前を呼ぶ声がする。視線を上に向けて両手を思いっきりブンブン振って答えた。
「おはよー二人とも!幼稚園、気をつけて行ってきてねー!」
「行ってきまーす!」
朝からミドリ君とアオ君の元気な声が聞けたから、朝練も更に頑張れそうな気がする。
二人は相変わらず私に懐いてくれる、とっても可愛いツインズだ。この間は一緒にゲームセンターに行って、サメオさんすやすやバージョンを見事ゲットした。
ギンガ君に宿題を教えたり、シュタロー君とゲームしたり。この間お父さんに初めて会って挨拶したけど、凄く優しそうな人だった。顔立ちは、甘崎君とよく似てる。
彼が大人になったらこんな感じなのかなぁ、なんて想像して一人で赤くなっちゃったっけ。
最近の私は、できることから少しずつ家のことを手伝うようになった。お母さんは涙ぐむくらい喜んでくれて、すぐビデオ通話で単身赴任のお父さんに報告してた。
そしたらお父さんも涙ぐんでて、私はなんだか気恥ずかしくなって笑ってごまかした。
部活もますます頑張ってて、今度ペアを組む相手の発表があるから今からドキドキしてるところだ。
「白石」
相手を確認した瞬間、私は笑顔でそっちに駆け出した。
「甘崎君!」
「おはよう」
「おはよう!」
ニコッと笑顔を向けると、甘崎君の口元も少し緩む。朝だからか、前髪から覗く目元がまだ眠そうで可愛い。
「これ、弁当」
「えっ、いいの!?」
「今日は父さんの分も作ったから、そのついで」
「嬉しい、ありがとう甘崎君!」
思わず目を輝かせながらお弁当を受け取ると、甘崎君も嬉しそうに頷いた。
「昨日の夜ね、カップケーキ焼いてみたんだ。この前甘崎君に教えてもらった通りにやったら、結構上手くできたよ。夕方持っていくね」
「ありがと、ミドリ達喜ぶよ」
そう言った後、甘崎君はなぜかモゴモゴと口ごもる。
「俺も…嬉しいし」
「フフッ、よかった」
赤い耳を髪で隠そうとしてる甘崎君は、やっぱり可愛い。教室ではクールで真面目な甘崎君のこんな表情を、これからも知ってるのが私だけだったらいいのに。
なんて。甘崎君はどんな甘崎君でも、私にとってはキラキラ輝いて見える。
「じゃあ、朝練行ってくるね。また教室で!」
私はそう言うと小さく手を振って、足を前へ進めた。
「白石!」
名前を呼ばれて、振り返る。
「行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます!」
お弁当の袋をギュッと握って、私は幸せな気持ちで思いっきり笑った。
朝。私はラケットケースを背中にかけ、運動靴を履く。玄関のドアを開けると、光の眩しさに一瞬目の前がクラクラした。最近益々暑くなってきたから、水筒もちゃんと持っていかないと。
「行ってきます」
お母さんはすでに仕事に行っちゃってて、家の中には誰もいない。だけど私は穏やかな顔で、小さくそう呟いた。
「あっ、ツバサちゃんおはよー!」
「ツバサー!」
お隣さんの二階から、私の名前を呼ぶ声がする。視線を上に向けて両手を思いっきりブンブン振って答えた。
「おはよー二人とも!幼稚園、気をつけて行ってきてねー!」
「行ってきまーす!」
朝からミドリ君とアオ君の元気な声が聞けたから、朝練も更に頑張れそうな気がする。
二人は相変わらず私に懐いてくれる、とっても可愛いツインズだ。この間は一緒にゲームセンターに行って、サメオさんすやすやバージョンを見事ゲットした。
ギンガ君に宿題を教えたり、シュタロー君とゲームしたり。この間お父さんに初めて会って挨拶したけど、凄く優しそうな人だった。顔立ちは、甘崎君とよく似てる。
彼が大人になったらこんな感じなのかなぁ、なんて想像して一人で赤くなっちゃったっけ。
最近の私は、できることから少しずつ家のことを手伝うようになった。お母さんは涙ぐむくらい喜んでくれて、すぐビデオ通話で単身赴任のお父さんに報告してた。
そしたらお父さんも涙ぐんでて、私はなんだか気恥ずかしくなって笑ってごまかした。
部活もますます頑張ってて、今度ペアを組む相手の発表があるから今からドキドキしてるところだ。
「白石」
相手を確認した瞬間、私は笑顔でそっちに駆け出した。
「甘崎君!」
「おはよう」
「おはよう!」
ニコッと笑顔を向けると、甘崎君の口元も少し緩む。朝だからか、前髪から覗く目元がまだ眠そうで可愛い。
「これ、弁当」
「えっ、いいの!?」
「今日は父さんの分も作ったから、そのついで」
「嬉しい、ありがとう甘崎君!」
思わず目を輝かせながらお弁当を受け取ると、甘崎君も嬉しそうに頷いた。
「昨日の夜ね、カップケーキ焼いてみたんだ。この前甘崎君に教えてもらった通りにやったら、結構上手くできたよ。夕方持っていくね」
「ありがと、ミドリ達喜ぶよ」
そう言った後、甘崎君はなぜかモゴモゴと口ごもる。
「俺も…嬉しいし」
「フフッ、よかった」
赤い耳を髪で隠そうとしてる甘崎君は、やっぱり可愛い。教室ではクールで真面目な甘崎君のこんな表情を、これからも知ってるのが私だけだったらいいのに。
なんて。甘崎君はどんな甘崎君でも、私にとってはキラキラ輝いて見える。
「じゃあ、朝練行ってくるね。また教室で!」
私はそう言うと小さく手を振って、足を前へ進めた。
「白石!」
名前を呼ばれて、振り返る。
「行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます!」
お弁当の袋をギュッと握って、私は幸せな気持ちで思いっきり笑った。
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