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第五章「タイセツだと思うから」

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「ん…」

ひと通りのことが済んだ私は、ギンガ君と一緒に甘崎君の様子を見にやってきた。彼はモゾモゾと体を動かすと、ゆっくりと目を開ける。

「あっ、ごめんね。起こしちゃった?」

「し、白石?何でウチに」

「兄ちゃん何言ってるの?ツバサさん手伝いに来てくれたでしょ?」

ギンガ君の言葉に、甘崎君は思い出したように「そういえば…」と呟く。

「体調はどう?まだ辛い?」

「寝たら大分熱が下がった気がする」

甘崎君はまだ意識がハッキリしてないのか、何度も瞬きを繰り返してる。いつものしっかりした彼とは違っていて、ちょっと可愛いなんて思ってしまった。

「おかゆ作ったんだ。もし良かったら食べて」

トレーに乗せたおかゆをベッドサイドにあるテーブルに置く。

「それから薬とお水も。ご飯食べた後に飲んでね」

「これ、白石が作ってくれたの?」

「あ…うん、スマホのレシピ見ながら。想像してたより水分の少ないおかゆになっちゃって、ちょっとボソボソしてるかもしれないけど…」

あんなに料理上手な甘崎君に私の作ったものを食べてもらうのは、かなり恥ずかしい。

甘崎君はレンゲでおかゆをすくうと、ふーふーしながら口に運んだ。

「だ、大丈夫?ちゃんと食べられそう?」

「…おいしい」

甘崎君はさんそう言ってひとくち、またひとくちとどんどん食べ進めてくれた。

この間甘崎君に嫌な思いをさせちゃったのに、そんなこと関係なくちゃんと食べてくれる。

こんな時でも優しい彼の姿に、私は涙が出そうになった。

「水もうないね。僕取ってくる」

「あっ、私行くよ」

「いいから、ツバサさんはここにいて」

ギンガ君はそう言うと、コップを持って部屋を出て行った。小学二年生なのに、しっかりしてるよなぁ。

シュタロー君も私より年上に見えるくらい落ち着いてるし、ミドリ君とアオ君も今日は凄くテキパキ動いてた。

甘崎兄弟は皆、力を合わせて頑張ってるんだ。私も、寂しいなんて言ってられない。

「…あ」

ふと、今自分が甘崎君と二人きりだということを思い出す。途端に恥ずかしくなって、体がガチガチに固まった。しかも今更だけど、初めて男の子の部屋に入っちゃったし。

「あ、あの私、アオ君達の様子見てくるね!」

甘崎君の方を見られないまま立ち上がると、部屋を出て行こうとする。

「待って、白石」

パシッと手を掴まれて、その瞬間私は体が動かなくなった。
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