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第一章「憧れのセンパイ」
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それから王寺先輩は、廊下ですれ違うと声をかけてくれるようになった。ラケットの使い心地を聞いてくれたり、手入れの仕方を教えてくれたり。
誰にでも気さくな人だって分かってるけど、それでもこんな風に話せるようになるなんて思ってなかったから、学校に行くのが毎日楽しみで仕方ない。
でも王寺先輩は人気者で周りには可愛い先輩もいっぱいいるから、中々自分からは話しかけにいけない。私は目立つ方じゃないし、この間まで小学生だったし、テニスも下手だし…
みんなに囲まれてる先輩を見るとついネガティブになりがちで、そんな自分も嫌だ。だからとにかく今は、テニスを頑張るんだ。
せっかく、王寺先輩にラケット選んでもらったんだし。
「白石さん最近、頑張ってるね。フォアの打ち方も少しずつだけど上手くなってるよ」
「本当ですか!ありがとうございます」
ある日の部活終わりに、女子ソフトテニス部のキャプテン・三年の美山先輩からそう声をかけられた。
やった!日々の努力が報われた!
内心ウキウキしながら、私は勢いよく頭を下げる。美人でテニスも上手い美山先輩から褒められるなんて、ホントに嬉しい。
それもこれも、王寺先輩のおかげだ。少しでも先輩に追いつきたいって思うから、力が湧いてくるんだもん。
「ねぇねぇ今日家庭科で作ったクッキー、王寺君にあげる?」
「えぇー、どうしよう」
その時ふと、美山先輩の後ろで帰り支度をしていた二年の先輩達の声が聞こえた。美山先輩に申し訳ないと思いつつ、私の耳はうちわみたいに大きく広がった(気分だけ)。
「知ってる?王寺君って、超甘党なんだって!クッキーとかケーキとか大好きらしいよ」
「そうなの?可愛いー」
「しかもさ、そういうお菓子とかが上手に作れる家庭的な子がタイプなんだって。王寺君と同じクラスの男子から聞いたから、間違いないよ!」
「それ聞いたら、クッキー渡すの自信なくなっちゃう」
「私もー」
そんな会話を盗み聞きしていた私の目の前に、ひらひらと何かが映る。それは、美山先輩の手の平だった。
「白石さん聞いてる?ボーッとしてるけど大丈夫?」
「す、すみません!大丈夫です」
私ってば、せっかく褒めてもらったのになんて失礼な…
何度も美山先輩に謝りながら、頭の中ではさっき聞いた会話の内容がぐるぐる回っていた。
誰にでも気さくな人だって分かってるけど、それでもこんな風に話せるようになるなんて思ってなかったから、学校に行くのが毎日楽しみで仕方ない。
でも王寺先輩は人気者で周りには可愛い先輩もいっぱいいるから、中々自分からは話しかけにいけない。私は目立つ方じゃないし、この間まで小学生だったし、テニスも下手だし…
みんなに囲まれてる先輩を見るとついネガティブになりがちで、そんな自分も嫌だ。だからとにかく今は、テニスを頑張るんだ。
せっかく、王寺先輩にラケット選んでもらったんだし。
「白石さん最近、頑張ってるね。フォアの打ち方も少しずつだけど上手くなってるよ」
「本当ですか!ありがとうございます」
ある日の部活終わりに、女子ソフトテニス部のキャプテン・三年の美山先輩からそう声をかけられた。
やった!日々の努力が報われた!
内心ウキウキしながら、私は勢いよく頭を下げる。美人でテニスも上手い美山先輩から褒められるなんて、ホントに嬉しい。
それもこれも、王寺先輩のおかげだ。少しでも先輩に追いつきたいって思うから、力が湧いてくるんだもん。
「ねぇねぇ今日家庭科で作ったクッキー、王寺君にあげる?」
「えぇー、どうしよう」
その時ふと、美山先輩の後ろで帰り支度をしていた二年の先輩達の声が聞こえた。美山先輩に申し訳ないと思いつつ、私の耳はうちわみたいに大きく広がった(気分だけ)。
「知ってる?王寺君って、超甘党なんだって!クッキーとかケーキとか大好きらしいよ」
「そうなの?可愛いー」
「しかもさ、そういうお菓子とかが上手に作れる家庭的な子がタイプなんだって。王寺君と同じクラスの男子から聞いたから、間違いないよ!」
「それ聞いたら、クッキー渡すの自信なくなっちゃう」
「私もー」
そんな会話を盗み聞きしていた私の目の前に、ひらひらと何かが映る。それは、美山先輩の手の平だった。
「白石さん聞いてる?ボーッとしてるけど大丈夫?」
「す、すみません!大丈夫です」
私ってば、せっかく褒めてもらったのになんて失礼な…
何度も美山先輩に謝りながら、頭の中ではさっき聞いた会話の内容がぐるぐる回っていた。
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