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第一章「憧れのセンパイ」
①
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恋をするのに、一番大切なことって何だろう?
幾ら考えても分からないから、私は考えるのをやめて目の前にある大好きなマフィンにガブッとかじりついた。
ーー
「あぁ、王寺先輩今日もホントに素敵!」
私は中学一年生の白石つばさ。ついニヶ月前に、この栗並第ニ中学校に入学したばかり。
放課後の今はテニスコートで、ひたすらボール拾いをしてる。
あんまり運動得意じゃない私が、何でソフトテニス部に入部したのか。その理由はたった一つ。
男子テニス部エースの王寺龍之介先輩に、一目惚れしてしまったから。
「ちょっとツバサ!ぼんやりしてると先輩に怒られるよ」
私と一緒にテニス部に入ったはーちゃんこと、桜木春ちゃんが私の肩を指でチョンチョンとつつく。
はーちゃんとは幼稚園の時からの仲良しで、ふわふわしがちな私のことをいつも心配してくれて、凄く頼りになる大切な友達だ。
「王寺先輩ばっかり見てないで!」
「ごめんはーちゃん、もうよそ見しないから!」
二人で怒られたらはーちゃんにまで迷惑がかかるから、私は慌てて目の前の飛んでくるボールに集中した。
栗並第二中のソフトテニス部は、特別強豪って訳じゃない。だから練習もそんなにハードじゃないんだけど、それでも私にとっては毎日ヘロヘロになるくらいキツい。
ボール拾いとラケット素振りの毎日で、まともにコートに立ったこともないし。
「ナイッコー(ナイスコース)、もういっぽーん!」
「声出してこー!」
先輩達の声が響く中、私も一生懸命声出しをしながら、飛んでくる白いボールをひたすら追いかけ続けたのだった。
「はぁ…今日も疲れたぁ~」
パンパンになった足を引きずり、空に向かってそう叫ぶ。隣を歩いてるはーちゃんが呆れたように笑った。
「はーちゃんは凄いよ。私と違ってもうコートで打たせてもらってるんだから」
「たまたまだって。ツバサだって頑張ってるじゃん」
「毎日ボール拾いばっかりで、腰が痛いけどね…」
「それだって大事なことだよ。ボールがなきゃ打てないし」
「それはまぁ、そうだけどさ」
肝心の王寺先輩とは、全然話せないまま。同じ部活に入れば少しはお近付きになれるかと思ったけど、それは凄く甘い考えだったみたい。
そもそも男子と女子じゃ使うコートが違うし、部活が終わったら同じ二年生の先輩達と話してるから、中々近付けない。
私が出来ることといえば、フェンス越しに王寺先輩を見つめることだけ。
部活見学の時目にした、キラキラ輝く王寺先輩の姿。コートを駆けながら力強くボールを打つ先輩に一目ボレしてからずっと、王寺先輩だけを目で追ってしまっている。
「全然先輩に近付けないよぉ!」
「じゃあ、そんなツバサにいいこと教えてあげる」
はーちゃんはにやりと笑って、私の耳元でささやいた。
幾ら考えても分からないから、私は考えるのをやめて目の前にある大好きなマフィンにガブッとかじりついた。
ーー
「あぁ、王寺先輩今日もホントに素敵!」
私は中学一年生の白石つばさ。ついニヶ月前に、この栗並第ニ中学校に入学したばかり。
放課後の今はテニスコートで、ひたすらボール拾いをしてる。
あんまり運動得意じゃない私が、何でソフトテニス部に入部したのか。その理由はたった一つ。
男子テニス部エースの王寺龍之介先輩に、一目惚れしてしまったから。
「ちょっとツバサ!ぼんやりしてると先輩に怒られるよ」
私と一緒にテニス部に入ったはーちゃんこと、桜木春ちゃんが私の肩を指でチョンチョンとつつく。
はーちゃんとは幼稚園の時からの仲良しで、ふわふわしがちな私のことをいつも心配してくれて、凄く頼りになる大切な友達だ。
「王寺先輩ばっかり見てないで!」
「ごめんはーちゃん、もうよそ見しないから!」
二人で怒られたらはーちゃんにまで迷惑がかかるから、私は慌てて目の前の飛んでくるボールに集中した。
栗並第二中のソフトテニス部は、特別強豪って訳じゃない。だから練習もそんなにハードじゃないんだけど、それでも私にとっては毎日ヘロヘロになるくらいキツい。
ボール拾いとラケット素振りの毎日で、まともにコートに立ったこともないし。
「ナイッコー(ナイスコース)、もういっぽーん!」
「声出してこー!」
先輩達の声が響く中、私も一生懸命声出しをしながら、飛んでくる白いボールをひたすら追いかけ続けたのだった。
「はぁ…今日も疲れたぁ~」
パンパンになった足を引きずり、空に向かってそう叫ぶ。隣を歩いてるはーちゃんが呆れたように笑った。
「はーちゃんは凄いよ。私と違ってもうコートで打たせてもらってるんだから」
「たまたまだって。ツバサだって頑張ってるじゃん」
「毎日ボール拾いばっかりで、腰が痛いけどね…」
「それだって大事なことだよ。ボールがなきゃ打てないし」
「それはまぁ、そうだけどさ」
肝心の王寺先輩とは、全然話せないまま。同じ部活に入れば少しはお近付きになれるかと思ったけど、それは凄く甘い考えだったみたい。
そもそも男子と女子じゃ使うコートが違うし、部活が終わったら同じ二年生の先輩達と話してるから、中々近付けない。
私が出来ることといえば、フェンス越しに王寺先輩を見つめることだけ。
部活見学の時目にした、キラキラ輝く王寺先輩の姿。コートを駆けながら力強くボールを打つ先輩に一目ボレしてからずっと、王寺先輩だけを目で追ってしまっている。
「全然先輩に近付けないよぉ!」
「じゃあ、そんなツバサにいいこと教えてあげる」
はーちゃんはにやりと笑って、私の耳元でささやいた。
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