上 下
39 / 44
第六章「彼のトナリをかけたタイマン勝負⁉︎の前に嫌われちゃった⁉︎」

しおりを挟む
「その証拠に、朝日さんのオモシロ写真いっぱい持ってるしな、おれ」
「あ、あ、あれー!ないと思ってたら、持って帰っちゃってたの?」
「センセーには、ナイショな?」
 そ、そんな顔して言ったってダメなんだからね⁉︎カッコいいのに、かわいい顔もできるとか、ズルい!
「でも朝日さん、最近おれのことちょっと避けてなかった?」
「え?そ、そんなことないよ⁉︎」
「めちゃくちゃ分かりやすいんだけど」
 そうなんだよ、ウチの家族ってみんなウソが下手なんだよね……。
「避けてたっていうか、うまく言えないんだけど……」
 これ以上ゴカイさせるのもいやだから、正直に全部話した。って言っても、ホントにうまくいえないんだけど。
 夕日ヶ丘君のキラキラスマイルはステキ、でも見てると胸がギュッてなるし、キラキラスマイルじゃない夕日ヶ丘君を知ってるのがわたしだけってことが、すごくうれしい。それに最近、夕日ヶ丘君を見つけるとみんなの前でも声かけちゃいそうになる。だから、ついいやな態度になっちゃった。
「ってわけなんだ。ごめんね、夕日ヶ丘君」
 チラッと彼を見ると、なんでかほっぺたが赤い。あ、耳も赤い。
「朝日さん、そんなこと言うキャラじゃなかったじゃん」
「わたしも、初めてだよ」
「うわ……なんだこれ」
 どんどん顔が赤くなって、手がパタパタしてる。いつもヨユーそうな夕日ヶ丘君が、めずらしく焦ってる。
「やっぱりいやだった?」
「い、いやそういうわけじゃ」
「なんか変だよ、大丈夫?」
 心配になって、夕日ヶ丘君の顔をのぞき込む。パチッと目が合った瞬間、思いっきり逸らされた。
 ガーン、みたいな悲しい音が頭の中に響く。悲しくなって、わたしはガックリと頭を下げた。
「ち、違うから!いやでもないし、怒ってもないから!」
「ホント?ホントにホント?」
「ホントだってば!近いし、その顔やめて!もっといつもみたいに、こわい顔してよ!」
 ちょっと、いつもみたいにこわい顔ってなに⁉︎
「わたし、今どんな顔してる?」
「し、知らない!」
 あらら、夕日ヶ丘君顔隠しちゃった。
「えへへ……」
 でも、うれしい。もう、こうして話せないって思ってたから。
「そうそう。そのこわい顔が、いつもの朝日さんって感じで、落ち着くよ!」
 夕日ヶ丘君は、ビシッと親指を立てる。あれ?わたし今、結構自然に笑えてたつもりだったんだけど……あれ?
 首をカクカクさせるわたしと、んんっと咳払いする夕日ヶ丘君。なんかかみ合ってない気がするけど、まぁいっか。
「てか、どうするの?南さんとの勝負は完敗だったじゃん」
「そういえば、すっかり忘れてた。夕日ヶ丘君が拍手してくれたのがうれしすぎて、正直言うともういいやって思っちゃって」
 あ、夕日ヶ丘君また顔隠してる。
「おれも一緒に言うよ。このまま、朝日さんが副委員長じゃなくなるのも、なんかいやだし」
「でもわたし……」
「おれだって、こうして素が出せる相手はキチョーだし、朝日さんといるとタイクツしないしさ」
 照れ隠しみたいに、ニッて笑う夕日ヶ丘君を見ると、また泣きそうになる。
「ホントに良い人だよね、夕日ヶ丘君って……うう……」
「別に、誰にでもそうしてるんじゃないからね⁉︎おれは、朝日さんだから、その……」
「よし!わたしも夕日ヶ丘君を見習って、もう一回南さんと話してみるよ!」
 おっきい声で宣言しながら、にぎった拳でドン!と胸を叩く。夕日ヶ丘君が、ビクッと肩を揺らした。
「じゃあ、帰ろっか!あ、一緒に出るのはまずいから、夕日ヶ丘君先に……」
「いいよ、一緒に帰ろ」
「え⁉︎で、でも」
「いいからほら、帰るよ!朝日さん!」
 夕日ヶ丘君が、笑ってる。みんなの前での師匠スマイルも、今のちょっとイジワルスマイルも、わたしにとってはどっちもキラキラして見える。
「うん!」
 わたしも思いっきり笑いながら、夕日ヶ丘君の背中を小走りで追いかけたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怪談掃除のハナコさん

灰色サレナ
児童書・童話
小学校最後の夏休み……皆が遊びに勉強に全力を注ぐ中。 警察官の両親を持つしっかり者の男の子、小学6年生のユウキはいつでも一緒の幼馴染であるカコを巻き込んで二人は夏休みの自由研究のため、学校の不思議を調べ始める。 学校でも有名なコンビである二人はいつもと変わらずはしゃぎながら自由研究を楽しむ……しかし、すすり泣くプール、踊る人体模型、赤い警備員……長い学校の歴史の裏で形を変える不思議は……何にも関係ないはずの座敷童の家鳴夜音、二次動画配信者として名を馳せる八尺様を巻き込んで、本物の不思議を体験することになった。 学校の担任や校長先生をはじめとする地域の大人が作り上げた創作不思議、今の世に発祥した新しい怪異、それを解明する間にユウキとカコは学校の最後のにして最初の不思議『怪談掃除のハナコさん』へと至る。 学校の不思議を舞台に紡がれるホラーコメディ! この夏の自由研究(読書感想文)にどうですか?

わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~

立花鏡河
児童書・童話
【第1回きずな児童書大賞】奨励賞を受賞しました! 応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます! 「ひさしぶりだね、魔法少女アイカ」 再会は突然だった。 わたし、愛葉一千花は、何の取り柄もない、フツーの中学二年生。 なじめないバスケ部をやめようかと悩みながら、掛けもちで園芸部の活動もしている。 そんなわたしには、とある秘密があって……。 新入生のイケメン、乙黒咲也くん。 わたし、この子を知ってる。 ていうか、因縁の相手なんですけどっ!? ★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★ わたしはかつて、魔法少女だったんだ。 町をねらう魔物と戦う日々――。 魔物のリーダーで、宿敵だった男の子が、今やイケメンに成長していて……。 「意外とドジですね、愛葉センパイは」 「愛葉センパイは、おれの大切な人だ」 「生まれ変わったおれを見てほしい」 ★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★ 改心した彼が、わたしを溺愛して、心をまどわせてくる! 光と闇がまじりあうのはキケンです! わたしたちの恋愛、NGだよね!? ◆◆◆第1回きずな児童書大賞エントリー作品です◆◆◆ 表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。

落ちこぼれ魔女・火花の魔法改革!〜孤独なマーメイドと海の秘宝〜

朱宮あめ
児童書・童話
火花は天真爛漫な魔女の女の子。 幼なじみでしっかり者のノアや、臆病だけど心優しい親友のドロシー、高飛車なダリアンたちと魔法学校で立派な魔女を目指していた。 あるとき、授業の一環で魔女にとって魔法を使うための大切な燃料『星の原石』を探しに行くことに。 火花とドロシーが選んだのは、海の中にある星の原石。 早速マーメイドになって海の中を探検しながら星の原石を探していると、火花は不思議な声を聴く。 美しくも悲しい歌声に、火花は吸い寄せられるように沈没船へ向かう。 かくして声の主は、海の王国アトランティカのマーメイドプリンセス・シュナであった。 しかし、シュナの声をドロシーは聴くことができず、火花だけにしか届かないことが発覚。 わけを聞くと、シュナは幼い頃、海の魔女・グラアナに声を奪われてしまったのだという。 それを聞いた火花は、グラアナからシュナの声を取り戻そうとする。 海の中を探して、ようやくグラアナと対峙する火花。 しかし話を聞くと、グラアナにも悲しい過去があって……。 果たして、火花はシュナの声を取り戻すことができるのか!? 家族、学校、友達、恋! どんな問題も、みんなで力を合わせて乗り越えてみせます! 魔女っ子火花の奇想天外な冒険譚、ここに誕生!!

大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot
児童書・童話
 薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。 「シチュー作れる?」  …………へ?  彼女の正体は、『森の魔女』。  誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。  そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。  どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。 「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」 「あ、さっきよりミルク多めで!」 「今日はダラダラするって決めてたから!」  はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。  子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。  でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。  師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。  表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。

オタわん〜オタクがわんこ系イケメンの恋愛レッスンをすることになりました〜

石丸明
児童書・童話
 豊富な恋愛知識をもち、友人からアネゴと呼ばれる主人公、宮瀬恭子(みやせきょうこ)。けれどその知識は大好きな少女漫画から仕入れたもので、自身の恋愛経験はゼロ。  中二で同じクラスになった、みんなのアイドル的存在である安達唯斗(あだちゆいと)から、好きな人と仲良くなるための「恋愛レッスン」をして欲しいと頼まれ、断りきれず引き受ける。  唯斗はコミュニケーション能力が高く、また気遣いもできるため、恭子に教えられることは特になかった。それでも練習として一緒に下校などするうちに、二人は仲を深めていった。  恭子は、あどけない唯斗のことを「弟みたい」だと感じ、惹かれていくが……。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1、ブザービートからはじまる恋〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※第15回童話・児童書大賞用作品のため、アルファポリス様のみで掲載中。→noichigoさんに転載。

処理中です...