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第五章「キラキラ?チクチク?どっちなの⁉︎」
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「おれ、別に優しくないから。そう思う朝日さんの方が変わってるってだけ」
「違うよ、夕日ヶ丘君は優しいよ!だってわたし、初めてだったんだもん!誰かに、こんな風にしてもらえたの。遠足も、交流会も、今も、迷惑かけてごめんなさいって思うのに、うれしいって思っちゃうんだよ⁉︎」
「うれしいんだったらいいじゃん」
「全然良くないっ!」
早く戻らなきゃ、今度は夕日ヶ丘君が悪く言われちゃう。悪役は、わたしだけで十分なんだから。
夕日ヶ丘君は、水を止めてハンカチを取り出す。そしてそれを、わたしの手に優しく巻いた。
「ていうかおれも、初めてだったんだけど」
「え……?」
「おれがなに言ってもなにしても、朝日さんは否定しない。すごい、かっこいい、努力家だって、こわい顔しながら全力でほめてさ。変な女子って思いながら、実はけっこーうれしかった」
なんでかな。冷やしてもらったはずの手が、すごく熱い。夕日ヶ丘君に触れられてるところも、そうじゃないところも全部、どうしようもないくらいにドキドキしてる。
夕日ヶ丘君の顔も、赤い。ホントに夕日みたい、なんて。そんなことだけは思いつくんだから。どうせならもっと、かわいいセリフでもひらめいたらいいのに。わたしのバカ。
「あ、あの。て、手当してくれてありがとう。ホントは、痛かったから」
「うん、だろうと思った。なんで強がってたの?」
「夕日ヶ丘君に、迷惑かけたくなくて……」
どうしよう、泣くの止まんない。困らせたくないのに、早く教室に戻ってほしいのに、体が全然いうこと聞いてくれない。
夕日ヶ丘君はわたしの手を離すと、今度は自分のジャージのソデを伸ばして、わたしの目元にポンポンって当てる。
「だ、ダメだよ!汚れちゃう!」
「だってハンカチ、手に使ってるし」
「大丈夫だから、やめてってば!」
「やだね、やめない」
言い方はちょっとイジワルなのに、手つきはすごく優しい。さっきよりもっとドキドキして、心臓が体を突き破っちゃうんじゃないかって思う。だって、こんな風になったことないんだもん。
「朝日さん、耳も顔も全部真っ赤!」
「ゆ、夕日ヶ丘君のせいだよぉ!」
「あはは、そーなんだ。それはごめんね?」
もう、自分だって赤いくせに!ていうか、ごめんって思ってない顔してる!
「保健室、行こっか」
「今⁉︎ムリムリ、泣いちゃってるし!」
夕日ヶ丘君はニヤニヤしながら、わたしの顔をのぞき込んでくる。
「じゃあ早く泣き止んでよ」
「分かってる、今止めるから!」
っていっても方法が思いつかないから、とりあえず息するのやめてみた。
「それはダメでしょ!それ涙じゃなくて心臓止まるやつから!」
「ぶはぁっ!し、死ぬかと思った……」
「なにやってんの、ホントにもう」
あきれ声の夕日ヶ丘君は、わたしの背中をトンッと優しく押した。
「ほら、早く行くよ!」
「わ、わたしひとりで」
「おれも行くったら行く!分かった?分かったね⁉︎てか分かった以外の返事はなし!」
「わ、分かった!」
しまった、思わず言っちゃった。でも、夕日ヶ丘君うれしそうだから、いっか。今だけ、甘えさせてもらおう。
ハンカチを巻いてもらった手を、ギュッと胸に当てて、わたしは夕日ヶ丘君のとなりに並んだ。
「違うよ、夕日ヶ丘君は優しいよ!だってわたし、初めてだったんだもん!誰かに、こんな風にしてもらえたの。遠足も、交流会も、今も、迷惑かけてごめんなさいって思うのに、うれしいって思っちゃうんだよ⁉︎」
「うれしいんだったらいいじゃん」
「全然良くないっ!」
早く戻らなきゃ、今度は夕日ヶ丘君が悪く言われちゃう。悪役は、わたしだけで十分なんだから。
夕日ヶ丘君は、水を止めてハンカチを取り出す。そしてそれを、わたしの手に優しく巻いた。
「ていうかおれも、初めてだったんだけど」
「え……?」
「おれがなに言ってもなにしても、朝日さんは否定しない。すごい、かっこいい、努力家だって、こわい顔しながら全力でほめてさ。変な女子って思いながら、実はけっこーうれしかった」
なんでかな。冷やしてもらったはずの手が、すごく熱い。夕日ヶ丘君に触れられてるところも、そうじゃないところも全部、どうしようもないくらいにドキドキしてる。
夕日ヶ丘君の顔も、赤い。ホントに夕日みたい、なんて。そんなことだけは思いつくんだから。どうせならもっと、かわいいセリフでもひらめいたらいいのに。わたしのバカ。
「あ、あの。て、手当してくれてありがとう。ホントは、痛かったから」
「うん、だろうと思った。なんで強がってたの?」
「夕日ヶ丘君に、迷惑かけたくなくて……」
どうしよう、泣くの止まんない。困らせたくないのに、早く教室に戻ってほしいのに、体が全然いうこと聞いてくれない。
夕日ヶ丘君はわたしの手を離すと、今度は自分のジャージのソデを伸ばして、わたしの目元にポンポンって当てる。
「だ、ダメだよ!汚れちゃう!」
「だってハンカチ、手に使ってるし」
「大丈夫だから、やめてってば!」
「やだね、やめない」
言い方はちょっとイジワルなのに、手つきはすごく優しい。さっきよりもっとドキドキして、心臓が体を突き破っちゃうんじゃないかって思う。だって、こんな風になったことないんだもん。
「朝日さん、耳も顔も全部真っ赤!」
「ゆ、夕日ヶ丘君のせいだよぉ!」
「あはは、そーなんだ。それはごめんね?」
もう、自分だって赤いくせに!ていうか、ごめんって思ってない顔してる!
「保健室、行こっか」
「今⁉︎ムリムリ、泣いちゃってるし!」
夕日ヶ丘君はニヤニヤしながら、わたしの顔をのぞき込んでくる。
「じゃあ早く泣き止んでよ」
「分かってる、今止めるから!」
っていっても方法が思いつかないから、とりあえず息するのやめてみた。
「それはダメでしょ!それ涙じゃなくて心臓止まるやつから!」
「ぶはぁっ!し、死ぬかと思った……」
「なにやってんの、ホントにもう」
あきれ声の夕日ヶ丘君は、わたしの背中をトンッと優しく押した。
「ほら、早く行くよ!」
「わ、わたしひとりで」
「おれも行くったら行く!分かった?分かったね⁉︎てか分かった以外の返事はなし!」
「わ、分かった!」
しまった、思わず言っちゃった。でも、夕日ヶ丘君うれしそうだから、いっか。今だけ、甘えさせてもらおう。
ハンカチを巻いてもらった手を、ギュッと胸に当てて、わたしは夕日ヶ丘君のとなりに並んだ。
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