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第五章「キラキラ?チクチク?どっちなの⁉︎」

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「一心、こっち来いよ!」
「夕日ヶ丘君、さっき授業で分からなかったところ、教えてくれない?」
「キャーッ、夕日ヶ丘くーん!!」
 これは、いつものこと。師匠はみんなの人気者で、男子からは慕われて女子からはハートの目を向けられてる。すごいし、かっこいいし、キラキラしてるし。
「みんな待って、順番にね!」
 ……うん、ダメだ。なんでだかこの前から、夕日ヶ丘君のスマイル見てると、モヤモヤチクチクしてしょうがない。あんなに好きだったのに、自分でも全然理由が分かんないから困る。
 夕日ヶ丘君は、笑顔がクセだって言ってた。たまに疲れたり、めんどうだって思うことはあっても、ずっと無理してるってわけじゃないんだと思う。西山君とかと遊んでる時は、楽しそうだし。
 
 パチッ
 
うわあぁ!夕日ヶ丘君と目が合った!わたしはいつも彼のことばっかり見てるから、そんなのめずらしくもなんともないのに。今日はあからさまに、目をそらしちゃった。ダメだよね、いくら夕日ヶ丘君がいい人だからって、失礼な態度取っちゃ。ちょうど今日の放課後、クラス委員会の集まりがあるし、そこでちゃんと謝ろう。
「ごめんね夕日ヶ丘君」
「ああ、思いっきりかんじ悪く無視したこと?別に全然まったくこれっぽっちも気にしてないけど?」
 あれ?笑ってるのに怒ってるみたいに見えるのは、なんで?
 委員会のあと、二人で教室に帰る道すがら、今日プイッとしたことを謝ったら、許してもらえた(たぶん)。
「でも意外。夕日ヶ丘君、わたしに見られるのいやなんだと思ってたのに」
「別にどっちでもないよ。ていうか、朝日さん最近おれのこと見てないじゃん」
「えっ?」
「は⁉︎なに⁉︎なんも言ってないけど⁉︎」
 なんにも言ってないことはないと思うけど、夕日ヶ丘君が言うならそうなのかも。
「そういえば、今日給食のコンポタ残してなかった?」
「よく知ってるね?」
「たまたま!たまたまだし、別にマジでたまたまだって言ってんじゃん!たまたまだ!」
「う、うん。分かってるよ」
 確かに今日は、給食残しちゃった。ごめんなさい。明日は頑張って食べます。
「心配してくれてありがとう」
「別にしてませんけど?」
「あはは、そうだね」
 なんだろう。こっちの夕日ヶ丘君だと、すごく安心する。うまく言えないけど、笑顔以外の夕日ヶ丘君を知ってるのは、わたしだけっていう、トクベツ感?こういうの、なんていうんだっけ……あ、そうだ。
「ユーエツカン、だ」
「は?なに?」
「え⁉︎ゆーあーうぇるかむって言ったんだよ!」
「急にどういたしましてってなんで⁉︎ありがとうって言ったのそっちでしょ!」
 おお、相変わらずキレのあるツッコミ、ステキだ。
「あーもう。やっぱ朝日さんはいつも通りだね。心配してソンした」
「えへへ」
「やっぱ笑うとこわいな」
 だって、さっき心配してないって言ってたのに。夕日ヶ丘君は、優しいなぁ。それなのにわたしは、笑顔以外の彼を知ってるってことにユーエツカン感じてるなんて、性格悪い。顔が悪役令嬢で、性格まで悪くなっちゃったら、もうどうしようもない。
 夕日ヶ丘君は、しかたなくわたしの相手をしてくれてるだけなんだから。ちょっと最近、甘えすぎてる気がする。もっと自分で、頑張っていかなきゃ!来月には、またイベントがあることだしね!
「よし、よし、よーーし!」
「気合いの入れ方がヘン」
 あきれ顔の夕日ヶ丘君の横で、わたしは握りこぶしをググッと天高く上げたのだった。
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