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第一章「わたしは悪役令嬢です⁉︎」
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いつの間にか「悪役令嬢」なんて変なあだ名付けられてたけど、最初は自分のことだって思わなかったから、どの子がそう呼ばれてるんだろうって、キョロキョロして探したなぁ。だって、悪役とはいえ「令嬢」だよ?見た目だけでいえば、ドラマから殺し屋一家の役のオファーが来てもおかしくないのに。まぁ、その正体は町一番の工務店なんだけど。そう、自慢じゃないけど絶対町一番。ふふん。
「お母さん!わたしこの一年、本気出すから見ててよね!」
「本気?何に本気出すの?」
「そりゃあもう、はちゃめちゃで最高の最強に楽しい学校生活に決まってるでしょ!」
気合いを表す為に、目の前のカップを手に取って、一気に飲み干す。コンポタが意外とトロッとしてたからノドにつっかえて、ガハガハっとむせた。
「麗はねぇ……しゃべらなきゃ私に似て美人なんだけど」
「おい母さん!俺のかわいい妹麗は、頭のてっぺんから足の先まで、すべてがさいっこうに愛しいんだ!」
「はいはい建士、アンタもかわいいよ。ポンコツで」
「うそ、俺ポンコツ⁉︎どこが⁉︎」
いまだにゴホゴホ言ってるわたしのトナリで、お兄ちゃんが思いっきり頭振ってる。意味が分かんない。
「麗はなにしてもかわいいからなぁ。特に、笑った顔なんか天使だ」
お父さん。鼻の下伸ばしてデレデレしてる場合じゃないから。その笑顔が天使どころか悪魔だから、困ってるんじゃないか。
「わたしの笑顔、ホントに天使?」
そう言って、さっき鏡の前でやったみたいにニッコリ笑う。テーブルの上に置いてるスプーンに反射してるのが見えて、自分でもちょっとゾッとした。例えば、日曜朝八時とかにやってる女の子向けのアニメのヒロインがこんな笑い方だったら、絶対皆泣くよ。
おっかしいなぁ。自分では最大限口角上げてるつもりなのに、どうしてこんなにひきつっちゃうんだろう。一重で目も吊り気味だから、余計悪だくみしてるみたいに見えるんだよね。キンチョーしいで口べたなのも、怒ってるって思われるし。
「麗ちゃん、かわいすぎる……」
「おい麗、外でそんなキュートでかわいい顔見せたらさらわれるぞ!」
「麗、ファイト」
お父さんとお兄ちゃんはやっぱりデレデレ、お母さんはグッと親指を立てた。
「ホントうちの家族って、キャラ濃いよね」
「麗もしっかり朝日家の血を受け継いでるから、安心しな」
「それって喜んでいい?」
「ビミョーかな」
お母さんの用意してくれた朝ごはんをしっかり完食したわたしは、再びしっかり手を合わせる。
まぁなんにせよ、今日からわたしはスタートラインに立つんだ。悪役令嬢だとか、コワモテ一家だとか、前世は殺し屋だとか、そういうウワサ話はこの際忘れちゃおう。うん。
広々とした造りの玄関ポーチでローファーをはいてから、スクールバックを背負う。去年急に背が伸びたから、制服は買い直したんだよね。わたしとしては小さくて小柄が理想だけど、家族全員背が高いからムリだ。
「麗!お父さんが送ろうか?」
「いや、兄ちゃんが送ってやるよ!」
「どっちも絶対イヤですぅ!」
「「何で⁉︎」」
涙目の二人は気にしないことに決めて、わたしはお母さんに向かってニコッと笑う。悪役令嬢スマイルだけど、家族だけは受け入れてくれる。
「行ってらっしゃい、麗」
「行ってきます!」
大きな大きな期待と気合いを胸に、わたしはトン!っと一歩ふみ出したのだった。
「お母さん!わたしこの一年、本気出すから見ててよね!」
「本気?何に本気出すの?」
「そりゃあもう、はちゃめちゃで最高の最強に楽しい学校生活に決まってるでしょ!」
気合いを表す為に、目の前のカップを手に取って、一気に飲み干す。コンポタが意外とトロッとしてたからノドにつっかえて、ガハガハっとむせた。
「麗はねぇ……しゃべらなきゃ私に似て美人なんだけど」
「おい母さん!俺のかわいい妹麗は、頭のてっぺんから足の先まで、すべてがさいっこうに愛しいんだ!」
「はいはい建士、アンタもかわいいよ。ポンコツで」
「うそ、俺ポンコツ⁉︎どこが⁉︎」
いまだにゴホゴホ言ってるわたしのトナリで、お兄ちゃんが思いっきり頭振ってる。意味が分かんない。
「麗はなにしてもかわいいからなぁ。特に、笑った顔なんか天使だ」
お父さん。鼻の下伸ばしてデレデレしてる場合じゃないから。その笑顔が天使どころか悪魔だから、困ってるんじゃないか。
「わたしの笑顔、ホントに天使?」
そう言って、さっき鏡の前でやったみたいにニッコリ笑う。テーブルの上に置いてるスプーンに反射してるのが見えて、自分でもちょっとゾッとした。例えば、日曜朝八時とかにやってる女の子向けのアニメのヒロインがこんな笑い方だったら、絶対皆泣くよ。
おっかしいなぁ。自分では最大限口角上げてるつもりなのに、どうしてこんなにひきつっちゃうんだろう。一重で目も吊り気味だから、余計悪だくみしてるみたいに見えるんだよね。キンチョーしいで口べたなのも、怒ってるって思われるし。
「麗ちゃん、かわいすぎる……」
「おい麗、外でそんなキュートでかわいい顔見せたらさらわれるぞ!」
「麗、ファイト」
お父さんとお兄ちゃんはやっぱりデレデレ、お母さんはグッと親指を立てた。
「ホントうちの家族って、キャラ濃いよね」
「麗もしっかり朝日家の血を受け継いでるから、安心しな」
「それって喜んでいい?」
「ビミョーかな」
お母さんの用意してくれた朝ごはんをしっかり完食したわたしは、再びしっかり手を合わせる。
まぁなんにせよ、今日からわたしはスタートラインに立つんだ。悪役令嬢だとか、コワモテ一家だとか、前世は殺し屋だとか、そういうウワサ話はこの際忘れちゃおう。うん。
広々とした造りの玄関ポーチでローファーをはいてから、スクールバックを背負う。去年急に背が伸びたから、制服は買い直したんだよね。わたしとしては小さくて小柄が理想だけど、家族全員背が高いからムリだ。
「麗!お父さんが送ろうか?」
「いや、兄ちゃんが送ってやるよ!」
「どっちも絶対イヤですぅ!」
「「何で⁉︎」」
涙目の二人は気にしないことに決めて、わたしはお母さんに向かってニコッと笑う。悪役令嬢スマイルだけど、家族だけは受け入れてくれる。
「行ってらっしゃい、麗」
「行ってきます!」
大きな大きな期待と気合いを胸に、わたしはトン!っと一歩ふみ出したのだった。
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