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第一章「わたしは悪役令嬢です⁉︎」

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 全員が終わると、次は委員決め。皆もう、大体何の委員があってどんな仕事をするのか知ってるから、サクサク進んでいく。今年は六年だから、やることも増えるのかな。
「じゃあ最後に、クラス委員長と副委員長を決めましょう」
 上川先生が、メガネのブリッジを指で持ち上げながら、そう口にする。上川先生はヒョロッとしていて、声が小さくて、どちらかというとオドオドしたタイプの男の人。ウチのお父さんやお兄ちゃんとは真逆だけど、上川先生の妹になったら、優しくしてもらえそうだから、いいな。ウチのお兄ちゃんもわたしには激甘なんだけど、なんせ見た目がどヤンキーだからマイナス、要らないギャップだ。
 ていうか、最後にクラス委員長と副委員長決めるなんて、上川先生も面白いやり方するなぁと思う。
「六年は主体となって動くことが多いから、大変かもしれません。誰か、やってくれるという人はいますか?」
上川先生の自信なさげな発言の後、しばし沈黙。もしかして、皆嫌がると思って先に他の委員を決めたのかな。
「はーい、おれやります!」
 出た、神様の声。もうすっかり覚えてしまった、夕日ヶ丘君の声だった。ニコニコしながら手を挙げて、そのおかげで嫌な空気が一瞬で吹っ飛んだ。
 夕日ヶ丘君は、ホントにすごい。わたしの思い描いてる理想そのもので、これからの一年は彼を参考にしたいという気持ちが、ムクムクとわきあがる。そうだよ、夕日ヶ丘君のそばにいれば、彼のテクニックを学べるかも。
「夕日ヶ丘君、ありがとう。じゃあ次に、副委員長に立候補してくれる女子は……」
「はい!」
 今までだったら、こんなのありえなかった。悪目立ちしたくなかったし、上手く出来る自信もなかったから。だけど今日、今、こここから、わたし自分を変えるために一歩前進するんだ。
「あ、朝日さんが上げてる」
「ウソでしょ?だってあの子……」
 ああ、ジゴク耳が辛い。ヒソヒソ話のつもりかもしれないけど、全部聞こえてる。胸が痛いけど、まぁ仕方ない。
 副委員長に立候補したのは、わたし含めてなんと四人。先生の心配をよそに、夕日ヶ丘効果で人気職業になってしまった。人気者の効果、おそろしい……。
 公平にジャンケンをした結果、見事に副委員長の座をゲットしたわたし。おしくも敗れた三人の女子からは、なぜか謝られた。
「朝日さん、これからよろしくね!」
「はい」
「えっ、なんで敬語?おもしろ!」
 わたし的にはいたって真面目な返事だったんだけど、なぜか夕日ヶ丘君は笑ってくれる。ああ、いい人オーラが頭の上から降り注いで、このまま浄化されそうな気がする。
 悪評まみれのわたしが副委員長なのに、彼は嫌な顔をしない。それどころかよろしく、なんて。緊張とよろこびでニヤけそうになるのを堪える為に、拳を作ってドン!ドン!と二回太ももを叩いたのだった。
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