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第一章「わたしは悪役令嬢です⁉︎」

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 制服のブラウスとスカートに身を包み、わたしは鏡の前に立つ。グイッと顔を近づけて、思いっきり笑顔を作ってみた。
「……やっぱどう見ても、なんか悪だくみしてる顔にしか見えない」
 がっくんと肩を落として、鏡からぷいっと目をそらした。やっぱり、こうなる。
「……いや、あきらめちゃダメ麗!六年になった今年こそは『悪役令嬢』を脱出して、お友達を作るんだから!その為にはなんでもしようって、決めたんだもん!」
 朝日 麗(アサヒ ウララ)、今日から小学六年生。影のあだ名は「悪役令嬢」だけど、ジゴク耳だからそう呼ばれてることはバッチリ知ってる。でもそう、今年こそは!いや、今年で最後の小学校生活なんだけど。だからこそ、わたしは心に誓ってる。絶対に絶対に、この一年を楽しむんだって。
 
 吹き抜けの階段を降りると、すぐ一階のリビングが目に飛び込んでくる。壁もフローリングも家具も、落ち着いたモダンヴィンテージ、つまりグレー系で統一されてる。
「麗、おはよう」
「おはよう、お父さん」
 自分の家だけど、モデルルームみたいにオシャレだって思ってる。ジマンの本革ソファに座ってるお父さんは、このステキ空間に全然まったくちっとも映えてないけどね。
 ツルツルのスキンヘッドに鍛えたマッチョな体と185センチ超えの身長、加えてドスの効いたガラガラ声。どっからどう見ても、危ない職業の人。だから、ハえてない。スキンヘッドだけに。なんちゃって。
「今日もかわいいなぁ、麗ちゃんは」
「やめてよ。わたしかわいくなんかないから」
「ああん?俺の最愛の娘が、かわいくないわけないだろう!どこのどいつだ、そんなふざけたこと抜かすヤツは!」
 立ち上がっただけで、ドン!と床が軋む。お父さんってば「何があっても崩れない頑丈な家を建てるのが俺のポリシー」だとか言ってるくせに、自分がその家壊しちゃったらシャレになんないから。
「誰にも言われてないし、落ち着いてよね。もう」
「麗~、先に起きてたのか。今日もかわいいなぁ、お前は」
「おはよう、お兄ちゃん」
 お父さんと同じことを言いながら上から降りてきたのは、わたしのお兄ちゃんである朝日建士(ケンシ)。トシが十二も離れているせいか、ベッタベタに甘やかしてくる。いやじゃないけど恥ずかしいし、お父さんに似て思いっきり強面だし、そう考えたらやっぱいやかも。だってお兄ちゃんってば、ピカピカの金髪だし両サイド刈り上げてるしピアスいっぱい開いてるしで、イケナイ人に見えない要素がないんだもん。今年こそは絶対、学校に迎えに来るの阻止しなきゃ。
「ケン。お前今日は打ち合わせだろう?」
「ああ。設計士と一緒に俺も顔見せることになってる。親父は現場か?」
「もちろん。俺は足腰ぶっ壊れようが、生涯現役だからな。ウハハハ」
 うわ、その笑い方悪役過ぎる。とか思いつつ、心の中ではわたしは二人を尊敬してるんだ。
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