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贈りものの意味とは
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結局、ほとんど最初から最後までアザゼル様に見守られながらの作業になってしまった。せっかくロココさんが「驚かせればいい」と案をくれたのに、それを達成できなかったことに私は肩を落とした。
それにやはり、ハンカチを広げてまじまじと見ていると気になる箇所が幾つもある。こんなものが日々のお礼になるのかと思うと、渡すことが躊躇われた。
「アザゼル様…あの…」
「あ?」
「申し訳ありませんが、このハンカチは差し上げられません」
ぼそぼそと告げると、彼は金色の瞳をまん丸にしてこちらを見つめる。
「俺の為に刺繍してくれたんじゃねぇのかよ」
「それはそうなのですが…」
「楽しみにしてたんだけど」
(楽しみに…してくれていたのね)
ぽろりと、涙が溢れる。ハンカチを汚してしまわないように、慌てて上を向いた。
「イザベラ?どうした?」
「あっ、あの…私…」
ここに来てから、この人に出会ってから私は、いつもこうだ。自分の中に溢れてくる感情に追いつけず、すぐに涙を流してしまう。
聖女として力を使っていた何年もの間、こんなことはあり得なかったというのに。
「申し訳ございません、アザゼル様」
「謝んな。いつも言ってんだろ?俺は」
(そう。アザゼル様はいつだって、私の味方でいてくれる)
腕で乱暴に涙を拭うと、再びハンカチを彼の前に差し出した。
「自分の手で作り出したものを、貴方に差し上げたかったのです。どうか、受け取っていただけますか?」
彼の手が、こちらへ伸びてくる。私の目尻に溜まった涙を指でちょいと掬い取り、それは嬉しそうに破顔した。
「馬鹿、当たり前だろ?」
「…ふふっ、はい」
「肌身離さず持っててやる」
不出来だろうとなかろうと、そんなことは関係なかった。私が彼に何かを贈りたいと願い、その気持ちごと受け取ってくれた。
これ以上幸せなことはないと、先程とは違う意味でまた涙が溢れた。
(贈りものをするって、どちらも嬉しいのね)
贈る側も受け取る側も、これ以上ない程に満ち足りていた。
アザゼル様はしばらく嬉しそうな表情でハンカチを眺めていたけれど、ふと疑問を口にする。
「なぁイザベラ。この金色の小鳥ってさ」
「それですか?アザゼル様の瞳のお色に合わせました」
「それだけか?どっかでこんな鳥を見かけたとか、そういうことじゃなくて?」
どうしてそんなことを聞かれるのか、よく分からない。けれどもしかすると、アザゼル様もあ・の・子・のことを知っているのかもしれないと、胸の奥が反応を示した。
「見かけた…というか、少し前に金色の綺麗な小鳥を家で保護していたことがあるのです。あの子もおそらく、魔物だったのだと思います」
「…ふうん。今、ソイツは?」
「分かりません。今はきっとこの深林のどこかで、幸せに暮らしていると私は信じています。あの子は私にとって、本当に大切な存在でしたから」
思い出すと、今でも心が温かくなる。あの子と暮らした短い日々は、とても幸せに溢れていた。
「すみません。その刺繍、お嫌でしたか?」
「…いや」
ちらりと様子を伺ってみても、確かに不快な表情はしていない。むしろ心なしか、耳や頬が紅く染まっているように見える。
「アザゼル様?」
「なんでもねぇよ」
矢継ぎ早にそう言うと、彼はするりと私の頬に指を沿わせる。そしてあの子と同じ金色の瞳で、じっと私を見つめた。
「イザベラ」
「はっ、はい」
「大切にするから」
それはハンカチのことだと、分かっているのに。痛い程に高鳴る胸の鼓動に、私は抗うことができなかった。
それにやはり、ハンカチを広げてまじまじと見ていると気になる箇所が幾つもある。こんなものが日々のお礼になるのかと思うと、渡すことが躊躇われた。
「アザゼル様…あの…」
「あ?」
「申し訳ありませんが、このハンカチは差し上げられません」
ぼそぼそと告げると、彼は金色の瞳をまん丸にしてこちらを見つめる。
「俺の為に刺繍してくれたんじゃねぇのかよ」
「それはそうなのですが…」
「楽しみにしてたんだけど」
(楽しみに…してくれていたのね)
ぽろりと、涙が溢れる。ハンカチを汚してしまわないように、慌てて上を向いた。
「イザベラ?どうした?」
「あっ、あの…私…」
ここに来てから、この人に出会ってから私は、いつもこうだ。自分の中に溢れてくる感情に追いつけず、すぐに涙を流してしまう。
聖女として力を使っていた何年もの間、こんなことはあり得なかったというのに。
「申し訳ございません、アザゼル様」
「謝んな。いつも言ってんだろ?俺は」
(そう。アザゼル様はいつだって、私の味方でいてくれる)
腕で乱暴に涙を拭うと、再びハンカチを彼の前に差し出した。
「自分の手で作り出したものを、貴方に差し上げたかったのです。どうか、受け取っていただけますか?」
彼の手が、こちらへ伸びてくる。私の目尻に溜まった涙を指でちょいと掬い取り、それは嬉しそうに破顔した。
「馬鹿、当たり前だろ?」
「…ふふっ、はい」
「肌身離さず持っててやる」
不出来だろうとなかろうと、そんなことは関係なかった。私が彼に何かを贈りたいと願い、その気持ちごと受け取ってくれた。
これ以上幸せなことはないと、先程とは違う意味でまた涙が溢れた。
(贈りものをするって、どちらも嬉しいのね)
贈る側も受け取る側も、これ以上ない程に満ち足りていた。
アザゼル様はしばらく嬉しそうな表情でハンカチを眺めていたけれど、ふと疑問を口にする。
「なぁイザベラ。この金色の小鳥ってさ」
「それですか?アザゼル様の瞳のお色に合わせました」
「それだけか?どっかでこんな鳥を見かけたとか、そういうことじゃなくて?」
どうしてそんなことを聞かれるのか、よく分からない。けれどもしかすると、アザゼル様もあ・の・子・のことを知っているのかもしれないと、胸の奥が反応を示した。
「見かけた…というか、少し前に金色の綺麗な小鳥を家で保護していたことがあるのです。あの子もおそらく、魔物だったのだと思います」
「…ふうん。今、ソイツは?」
「分かりません。今はきっとこの深林のどこかで、幸せに暮らしていると私は信じています。あの子は私にとって、本当に大切な存在でしたから」
思い出すと、今でも心が温かくなる。あの子と暮らした短い日々は、とても幸せに溢れていた。
「すみません。その刺繍、お嫌でしたか?」
「…いや」
ちらりと様子を伺ってみても、確かに不快な表情はしていない。むしろ心なしか、耳や頬が紅く染まっているように見える。
「アザゼル様?」
「なんでもねぇよ」
矢継ぎ早にそう言うと、彼はするりと私の頬に指を沿わせる。そしてあの子と同じ金色の瞳で、じっと私を見つめた。
「イザベラ」
「はっ、はい」
「大切にするから」
それはハンカチのことだと、分かっているのに。痛い程に高鳴る胸の鼓動に、私は抗うことができなかった。
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