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第五章「衝撃(たぶん)の真実」
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「フィリア。もしも嫌だと感じたら、すぐに言ってくれ」
「わ、分かりました」
彼はそうやって、不慣れな私に逃げ道をくれる。多分、手探り状態の旦那様にとってもそれは必要なんだと思う。
「白い結婚を、白紙に戻してはくれないだろうか。そして改めて、夫婦として共にこのブルーメルで僕と一緒に暮らしてほしい」
「はい、喜んで」
「えっ!」
「えっ?」
まさかそんな反応をされるとは思わず、私達二人はしばらくまったく同じ表情で見つめ合った。
「そ、そんなに簡単に応じてしまっていいのか?」
「そ、そうしたいと思ったので」
「そ、そうか」
「そ、そうみたいです」
『そ』の乱用を繰り返しながら、いい歳をした男女がもじもじぼそぼそと囁いている様子は、側から見れば呆れられるかもしれない。
つまり私と旦那様が本当の家族へと向かう歩みは、沼ガメさえ苛立ってしまうくらいに遅いらしい。
けれど、私達は私達なりのペースで進んでいけば良いのだと思う。今この瞬間、ようやくスタートを切ったばかりなのだから。
「……唇も目も、赤くなっているな」
「平気です、すぐに治りますから」
「少し待っていてくれ」
そう言って立ち上がると、旦那様は何やら向こうでごそごそと作業をして、すぐにまた戻ってきた。その手には、私がさっき受け取らなかったハンカチが握られている。
「ポットに水があったから、それで濡らしてきた」
「この部屋は、なんでも揃っているのですね」
「一通りの支度はいつも自分でしている」
それを聞いて、素直に感心する。自慢じゃないけれど、私はマリッサがいなければ三日で人間らしい生活を止めている自信があるからだ。
「触れてもいいか」
「あ、はい」
「し、失礼する」
まるで国王様に謁見でもするのかと思うくらい、緊張の面持ちを浮かべている旦那様を見て、思わず小さな笑みが溢れる。ハンカチ越しとはいえ、男性から目元や口元に触れられると恥ずかしくて、私まで彼の緊張が移ってしまった。
前言撤回、異性だからではなく旦那様だからこそ、体中の細胞がぶわっと反応して心臓の鼓動が忙しなく血液の循環を促すのだ。そこまでしなくとも私は充分元気なのにと、己の体に訴えたくなる。
「恥ずかしいけど、冷たくて気持ち良いです」
「そうか、良かった」
慈しむような視線を向けられると、なんだか背中のあたりがむず痒い。けれどそれは心地良くて、このままこの人の隣にずっといられたら幸せだなと、漠然とした未来の想像が、無意識に瞼の裏に浮かんだ。
「わ、分かりました」
彼はそうやって、不慣れな私に逃げ道をくれる。多分、手探り状態の旦那様にとってもそれは必要なんだと思う。
「白い結婚を、白紙に戻してはくれないだろうか。そして改めて、夫婦として共にこのブルーメルで僕と一緒に暮らしてほしい」
「はい、喜んで」
「えっ!」
「えっ?」
まさかそんな反応をされるとは思わず、私達二人はしばらくまったく同じ表情で見つめ合った。
「そ、そんなに簡単に応じてしまっていいのか?」
「そ、そうしたいと思ったので」
「そ、そうか」
「そ、そうみたいです」
『そ』の乱用を繰り返しながら、いい歳をした男女がもじもじぼそぼそと囁いている様子は、側から見れば呆れられるかもしれない。
つまり私と旦那様が本当の家族へと向かう歩みは、沼ガメさえ苛立ってしまうくらいに遅いらしい。
けれど、私達は私達なりのペースで進んでいけば良いのだと思う。今この瞬間、ようやくスタートを切ったばかりなのだから。
「……唇も目も、赤くなっているな」
「平気です、すぐに治りますから」
「少し待っていてくれ」
そう言って立ち上がると、旦那様は何やら向こうでごそごそと作業をして、すぐにまた戻ってきた。その手には、私がさっき受け取らなかったハンカチが握られている。
「ポットに水があったから、それで濡らしてきた」
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「一通りの支度はいつも自分でしている」
それを聞いて、素直に感心する。自慢じゃないけれど、私はマリッサがいなければ三日で人間らしい生活を止めている自信があるからだ。
「触れてもいいか」
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慈しむような視線を向けられると、なんだか背中のあたりがむず痒い。けれどそれは心地良くて、このままこの人の隣にずっといられたら幸せだなと、漠然とした未来の想像が、無意識に瞼の裏に浮かんだ。
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