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第一章「適当…と言う名の運命」

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「でもまぁ、お前の言い分も一理あるかもしれないな」
「でしょ?僕が良さそうな令嬢を六人候補に選んでくるから、その釣書をテーブルに並べて、一から六までの番号を付ける。そしたら君は、サイコロを一振りするだけ」
 なるほど。一見頭のおかしいやり方ではあるが、確かに僕は性別が女性であるというだけで拒否反応が出る。だったら、選び方に固執するよりもどう結婚生活を乗り切っていくかという方向に舵を切った方が良さそうだ。
「ちなみに、その六人を選ぶ基準は?」
「素朴で、慎ましやかで、逆らわなさそうな家柄の子かな」
「な、なんだそれは!」
「そういう子の方が御しやすいでしょう?借金まみれの貴族でも良いけど、君のお父上が許してくれないだろうしさ」
 つまりは、形だけの「白い結婚」に納得させるというわけか。男として卑怯なやり方ではあるが、背に腹は変えられない。
「浮気性の女性は、君のトラウマだしね」
「……誰だって嫌だろうそんな女」
「まぁまぁ、うだうだ言ってないで。どうする?やるのやらないの?」
「や、やる」
 情けない話だが、もうテミアンに頼るしか方法が浮かばない。辺境伯を継ぐためには、結婚は必要不可欠だ。
「オッケー。じゃあ、さくっと準備するからしばしお待ちを~」
 至極楽しげに瞳を輝かせて、テミアンは軽やかな足取りで部屋を出ていく。その日から三日と経たないうちに、やつはきっちりと準備を整えてきた。

「はい、サイコロ」
 再び僕の自室で、テミアンはずらりとテーブルに釣書を並べた。掌に乗せられた小さな小さなサイコロが、やけにずしりと思い。
「ああ、結婚したくねぇ」
「きっと相手も同じ気持ちだよ」
「お前……」
 歯に絹着せぬ物言いが、今はやけに鼻につく。まったくその通りだからこそ、反論出来ないのが悔しいのだ。
 こうして結婚相手を選んではいるが、相手方が難色を示した場合はすぐに身を引く。なんせ、僕がその女性を愛することなど不可能なのだから。
 せめてもの誠意として、最初から白い結婚だと伝えよう。この思考が間違いかそうじゃないかは、もう全て相手に委ねる。
「よし、いくぞ」
「あ。ちなみに、一が一番おすすめだよ。そこから順番に並べてるから」
 その台詞を聞いたのは、既に「六」の出目が現れた後。ぎろりとテミアンを睨んでみても、数字は変わったりしない。
「わお。まさかの六だ」
「……嫌な言い方をするな、テミアン」
「いやぁ。実はさっきのは嘘で、本当は六が当たり」
 ぱちんとウインクしてみせる彼に向かって、眼前に人差し指を突きつけた。
「目を抉れば、わざわざ瞼を閉じる必要はなくなるぞ」
「ちょちょ、ちょっと待ってよ!ほんのジョークじゃないか!君を和ませようと思っただけさ!」
「……ったく。どうせ、優劣などつけていないくせに」
 ふんと鼻を鳴らせば、今度はぺろりと舌を出された。
「さすがは僕の親友。なんでもお見通しだね」
 へらへらと笑いながら、テミアンが釣書を差し出す。それをぱっと奪い、適当に目を通した。
「だけど、本当は六が当たりって言ったのはあながち嘘じゃないよ。僕にとっては、って意味だけど」
 ヤツの不穏すぎる呟きは、気が立っている僕の耳には入ってこなかった。
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