ワガママ姫とわたし!

清澄 セイ

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第九章「さよならとただいま」

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ーーこうしてルミエール姫は、自分の力で運命を切り開き、たくさんの人々の笑顔に囲まれいつまでも幸せに暮らしました

パタン

わたしはそっと、絵本を閉じる。

頭の中にはルミエール姫の得意げな笑顔が浮かんで、思わず一人で笑ってしまった。

あの出来事は夢だったのかもしれないと重いくらいに、現実の世界はなにも変わっていなかった。急にいなくなったわたしを、お父さんがどんなに心配してるだろうと思ったけど、ただ夜が次の日の朝になってただけだった。

あんなに長くて濃い時間を過ごしたのに、たった一晩しか経ってないなんて、わたしは驚いてなんども日付を確認してしまった。

だけど、あの日々が夢じゃない証拠がひとつだけ。

「いやぁ、あの日の朝は本当にビックリしたよ。起きてきたメイの髪が短かったんだから」
「えへへ、ごめんね」

そう。私の髪はちゃんと、短いままだった。だからあの出来事は、夢なんかじゃない。

ルミエール姫たちはもう魔女に苦しむことなく、平和で楽しい日々を過ごしてる。

そしてそれは、わたしも。






「こ、心谷さん」

教室で、わたしは心谷さんに声をかける。

「照町《テルマチ》さん。どうしたの?」
「あ、あのこれ。ガチャガチャで同じものが出て、よかったら…って」

わたしが好きな“フェアリーりん”のマスコット。心谷さんも好きだって教えてくれたのに、あの時はろくに返事もできなかった。

「えっ、いいの?」
「迷惑じゃなければ」
「嬉しい、ありがとう!」

心谷さんはニコッと笑いながら、マスコットを受け取ってくれる。

内心ドキドキして心臓が痛いくらいだったけど、勇気を出してよかったって心底思った。

ルミエール姫が言ってたように、簡単には変われない。だから少しずつ、勇気を出して。

だってわたしは剣だって振れたし、魔女だって倒せたんだから。

「…フフッ」

そんなことを思い出して、わたしはこっそり微笑んだ。
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