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第八章「導く声の正体」
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「お前のせいで、わたしもかなりちからをうしなってしもうた。この恨みは、姫を殺した後でたっぷりと償ってもらうからなぁ」
魔女がよどんだ瞳をこっちに向ける。ソルがわたしを庇うように前に出た。
「どうせもう、妖精の力も使えまい。さきほどはただのまぐれ、しょせんお前は偽物だ」
「その人たちを離して…っ!」
「バカな娘だ。なんの関係もないくせに、この姫にまんまとだまされよって」
だました?ルミエール姫がわたしを?
そんな言い方、許せない。
ーー本当はわたくしが、お母様を救いたかった…妖精つかいとして、立派な姿を見ていただきたかった…っ
そう言って泣いたルミエール姫を、本当は誰よりも強いルミエール姫を、知らないくせに。
「これでようやく、わたしがこの世界を支配できる。ついにこの時がやってきたぞ…!」
そう言いながらルミエール姫に杖を突きつけるこの魔女は、自分勝手な理由でたくさんの人を傷つけた。
許せない、絶対好き勝手にさせたくない。
今のわたしは、ただ絵本を外から読んでるだけじゃない。中に入って、話をして、イメージと全然違って。
それでもルミエール姫はやっぱり、わたしの大好きなお姫さまだ。
わたしのお母さんが生み出した、最高のヒーローなんだ…!
胸いっぱいに、息を吸い込む。今ノドがちぎれたって構わないと思うくらい、わたしは力いっぱい叫んだ。
「ルミエール姫ーーーっ!!」
お願いどうか、届いてほしい。
「ルミエール姫お願い!目を覚まして!悪夢に勝ってルミエール姫!!」
彼女の心はきっと、傷だらけ。
でも、負けたりしない。わたしはそう、信じる。
魔女がよどんだ瞳をこっちに向ける。ソルがわたしを庇うように前に出た。
「どうせもう、妖精の力も使えまい。さきほどはただのまぐれ、しょせんお前は偽物だ」
「その人たちを離して…っ!」
「バカな娘だ。なんの関係もないくせに、この姫にまんまとだまされよって」
だました?ルミエール姫がわたしを?
そんな言い方、許せない。
ーー本当はわたくしが、お母様を救いたかった…妖精つかいとして、立派な姿を見ていただきたかった…っ
そう言って泣いたルミエール姫を、本当は誰よりも強いルミエール姫を、知らないくせに。
「これでようやく、わたしがこの世界を支配できる。ついにこの時がやってきたぞ…!」
そう言いながらルミエール姫に杖を突きつけるこの魔女は、自分勝手な理由でたくさんの人を傷つけた。
許せない、絶対好き勝手にさせたくない。
今のわたしは、ただ絵本を外から読んでるだけじゃない。中に入って、話をして、イメージと全然違って。
それでもルミエール姫はやっぱり、わたしの大好きなお姫さまだ。
わたしのお母さんが生み出した、最高のヒーローなんだ…!
胸いっぱいに、息を吸い込む。今ノドがちぎれたって構わないと思うくらい、わたしは力いっぱい叫んだ。
「ルミエール姫ーーーっ!!」
お願いどうか、届いてほしい。
「ルミエール姫お願い!目を覚まして!悪夢に勝ってルミエール姫!!」
彼女の心はきっと、傷だらけ。
でも、負けたりしない。わたしはそう、信じる。
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