ワガママ姫とわたし!

清澄 セイ

文字の大きさ
上 下
79 / 89
第八章「導く声の正体」

3

しおりを挟む
やっとの思いで一番上へと辿り着く。空は薄暗く、今にも雨が降り出しそうだった。太陽の光なんて、一筋も見えない。

「ルミエール姫!!」

屋上の真ん中、膝をついてるルミエール姫が視界に飛び込んできて、わたしは声を張り上げる。

彼女のそばには、杖をついた魔女が立っていた。ローブからチラッと見えた顔は、気味悪く歪んでる。

「遅かったなぁ、待ちくたびれたぞ」
「ルミエール姫になにをしたの!」
「まだなにも。お前たちの目の前でなければ意味がないからなぁ」

しゃがれた声は楽しそうで、頭に血がのぼる。わたしもソルも、剣の切先をまっすぐ魔女に向けた。

「姫の心は弱いなぁ。悪夢を見せてやったら、簡単に壊れたわい」
「そ、そんな……っ」
「お前ふざけんな!」
「ルミエール姫、ルミエール姫…っ!」

必死に名前を叫んでも、ルミエール姫はまるで人形みたいに、ピクリとも動かない。

「このままお前たちの目の前で、姫にトドメを刺してやろう。せいぜい絶望して、負の力に飲まれるといい」
「そんなこと、絶対にさせない!」

わたしたちが駆け出そうとした瞬間、魔女が杖の先をわたしたちに突きつける。

「それ以上近づいたら、アイツらがどうなるか分かるだろう?」

杖の先がゆっくりと動いて、その先には鳥カゴみたいなオリに入ったラランとソララが見えた。

二人はお互いを庇い合うようにしながら、グッタリと倒れてる。

「ララン!ソララ!」
「あのカゴの中に妖精がいるのか!?」
「二人ともつかまってる!」

わたしの声に、魔女はニタリと笑った。

「妖精は妖精らしく、ちょこまか逃げていればいいものを。こんな場所にのこのことやって来るから、こうなるんだ」

魔女が光の力に弱いように、妖精は負の力に弱い。この城に充満してる負のエネルギーは、二人にとって致命傷だ。

それを分かってて、ラランとソララは一緒に来てくれた。前みたいに平和な世界で仲間と暮らしたいって、そのために頑張りたいって、そう言ってたラランの笑顔を思い出す。

「…許せない……っ」

あまりの怒りに、爪が食い込むほどギュッと手のひらを握りしめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】緑の奇跡 赤の輝石

黄永るり
児童書・童話
15歳の少女クティーは、毎日カレーとナンを作りながら、ドラヴィダ王国の外れにある町の宿で、住み込みで働いていた。  ある日、宿のお客となった少年シャストラと青年グラハの部屋に呼び出されて、一緒に隣国ダルシャナの王都へ行かないかと持ちかけられる。  戸惑うクティーだったが、結局は自由を求めて二人とダルシャナの王都まで旅にでることにした。

河童のカンカン

あらら
児童書・童話
河童のカンカンが少年、勇気と交流していく。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

たっくんがバイトをやめてくれない

月山 歩
児童書・童話
幼なじみで彼氏のたっくんが、バイト先で少しずつファンを増やしていると知ったイチカが、バイトをやめてって言ってしまう。でも、断られて、初めてのケンカ。 本当は頑張るたっくんを応援したいのに。

ハート オール デスゲーム/宇宙から来たロボットに拠る地球侵略

桃月熊
児童書・童話
謎の競技(頭脳戦)に強制参加させられる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ jokerを当てろ。 水平思考推理ゲーム。(うみがめのすーぷ) マシュマロ大食いバトル。 携帯ゲーム機。 サイコロ振り。 ルール不明。 偶数 奇数 ルーレット。 苗字を探せ。 ジャンケン最強の手。 大喜利 回答に投票 能力と道具の設定あり。 利き水 百種類から選択。 赤を集めよう。 算数ドリル。 チェス。 人狼ゲームに参加? 使用後に四割の確率で状態異常になるペン。 使用後に八割の確率で状態異常になるペン。 御褒美を選ぼう。 体育館に集合・説明なし。 神経衰弱 カード百枚 ペアは一組。 passwordを推測しろ。 毒薬を当てろ。 他者と被らずに10迄で最も大きい数字。 白線を進む。 現象の名付け親。 討論 超能力の有無の証明vs論破。 Dr.salt登場。 ドミノ。 正反対の意味を内包する同一単語。 選択式野球。 多数派又は少数派。 トランプ七枚選択数字合わせ。 数字のスタンプ押し。 コインの表が出る確率。 鬼不明の鬼ごっこ。 枯葉に書かれた文字。 早押し・完全なる偽者への対処法。 室温調整。 改良・トランプ七枚選択数字合わせ。 言い換え。 二枚のカード 保持と放出。 連携 追跡者から逃亡せよ。 誰にも解けない問題作成。 参加人数を数えて報告。 勝ち抜け四 脱落一 白紙九十五。 肉食え。 トランプで連番五枚。 辞書に載っている単語を作れ。

言い伝えの裏話

夜船 銀
児童書・童話
世の中にあたりまえのようにある根拠のない”言い伝え”。 実はこんな真実があるって知ってましたか?

【奨励賞】花屋の花子さん

●やきいもほくほく●
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 『奨励賞』受賞しました!!!】 旧校舎の三階、女子トイレの個室の三番目。 そこには『誰か』が不思議な花を配っている。 真っ赤なスカートに白いシャツ。頭にはスカートと同じ赤いリボン。 一緒に遊ぼうと手招きする女の子から、あるものを渡される。 『あなたにこの花をあげるわ』 その花を受け取った後は運命の分かれ道。 幸せになれるのか、不幸になるのか……誰にも予想はできない。 「花子さん、こんにちは!」 『あら、小春。またここに来たのね』 「うん、一緒に遊ぼう!」 『いいわよ……あなたと一緒に遊んであげる』 これは旧校舎のトイレで花屋を開く花子さんとわたしの不思議なお話……。

スカートめくりの破天荒なヒーローがいる! 男性向け

ズッコ
児童書・童話
スカートめくり。それは小学生時代にあった一過性の風物詩、、、そう思っていたのに、中学生でそれをやる人がまさかいたなんて! 中学生デビューの学生たちにスポットを当てた歯痒く甘酸っぱい群像ドラマ。お転婆に育ち勝ち気で怖いもの知らずの美祈、短気で背が低く声が高いゆえにコンプレックスを抱える正太郎、周りに無関心で友だちを作ろうともしない瞳、頑固気質と融通さ情緒に欠けて困らせる春信、男子に辛辣だが臆病さの裏返しで心優しい恵、いつもマイペースで本気を見せたことのない新司と、それぞれバラバラを見せる人物たちが、いつしか一つにまとまっていく心温まるストーリーを描く。

処理中です...