76 / 89
第七章「わたしたちの覚悟」
10
しおりを挟む
違う、これはきっと魔女のワナだ。だってここは、お母さんの作った絵本の世界。現実みたいで、現実じゃないんだから。
だから、惑わされちゃダメだ。
「メイちゃんと話してもつまんないし」
「わたしたちのこと好きじゃないから、そんな話し方になるんだよ」
「ホントはみんなのこと、バカにしてるんでしょ?」
「ち、ちが……っ!」
大声で否定したいのに、うまくいかない。ひどい風邪をひいた時みたいに、喉が痛くてたまらない。
「や、やめ、そんなこと…な……っ」
目からポロポロと大粒の涙がこぼれおちる。泣きたくなくても、止まってくれなくて。
「やめた方がいいよ、こんなこと」
「そうだよ。メイちゃんには誰も期待してないんだから」
「きっと心の中では思ってるはずだよ。頼りない、メイちゃんじゃない方がいいって」
そう、そうだよね…わたしなんかが、みんなを助けられるわけない。言いたいことも言えなくて、相手をイライラさせて、気を遣わせて、嫌われる。
変わりたいって思うのに、結局行動には移せなくて。都合よく本の世界に逃げてばっかりの、こんなわたしじゃ。
なんにも、誰も、守ることなんてできない。
ガシャン
手からスルッと、妖精の剣が落ちる。拾わなきゃって思うのに、もう一人の自分がそれを止める。
もう、無理だよ。
どうせできっこないよ。
って。
「わ、わ、わたし…わたし……っ」
“大丈夫”
誰かの声が、頭の中でこだまする。
“あなたは絶対、大丈夫だから”
この声、この世界に来る時にも、聞こえた気がする。
よく知ってる、冷たくて優しいわたしのーー
「……っ!!」
瞬間、わたしは閉じていた目を見開いて、再び剣を掴むと大きく振り上げる。
そして目の前の暗闇に向かって、それを思いっきり振り下ろした。
だから、惑わされちゃダメだ。
「メイちゃんと話してもつまんないし」
「わたしたちのこと好きじゃないから、そんな話し方になるんだよ」
「ホントはみんなのこと、バカにしてるんでしょ?」
「ち、ちが……っ!」
大声で否定したいのに、うまくいかない。ひどい風邪をひいた時みたいに、喉が痛くてたまらない。
「や、やめ、そんなこと…な……っ」
目からポロポロと大粒の涙がこぼれおちる。泣きたくなくても、止まってくれなくて。
「やめた方がいいよ、こんなこと」
「そうだよ。メイちゃんには誰も期待してないんだから」
「きっと心の中では思ってるはずだよ。頼りない、メイちゃんじゃない方がいいって」
そう、そうだよね…わたしなんかが、みんなを助けられるわけない。言いたいことも言えなくて、相手をイライラさせて、気を遣わせて、嫌われる。
変わりたいって思うのに、結局行動には移せなくて。都合よく本の世界に逃げてばっかりの、こんなわたしじゃ。
なんにも、誰も、守ることなんてできない。
ガシャン
手からスルッと、妖精の剣が落ちる。拾わなきゃって思うのに、もう一人の自分がそれを止める。
もう、無理だよ。
どうせできっこないよ。
って。
「わ、わ、わたし…わたし……っ」
“大丈夫”
誰かの声が、頭の中でこだまする。
“あなたは絶対、大丈夫だから”
この声、この世界に来る時にも、聞こえた気がする。
よく知ってる、冷たくて優しいわたしのーー
「……っ!!」
瞬間、わたしは閉じていた目を見開いて、再び剣を掴むと大きく振り上げる。
そして目の前の暗闇に向かって、それを思いっきり振り下ろした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【奨励賞】花屋の花子さん
●やきいもほくほく●
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 『奨励賞』受賞しました!!!】
旧校舎の三階、女子トイレの個室の三番目。
そこには『誰か』が不思議な花を配っている。
真っ赤なスカートに白いシャツ。頭にはスカートと同じ赤いリボン。
一緒に遊ぼうと手招きする女の子から、あるものを渡される。
『あなたにこの花をあげるわ』
その花を受け取った後は運命の分かれ道。
幸せになれるのか、不幸になるのか……誰にも予想はできない。
「花子さん、こんにちは!」
『あら、小春。またここに来たのね』
「うん、一緒に遊ぼう!」
『いいわよ……あなたと一緒に遊んであげる』
これは旧校舎のトイレで花屋を開く花子さんとわたしの不思議なお話……。
人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜
犬型大
ファンタジー
神様にいっぱい希望を出したら意思疎通のズレから竜人になりました。
異世界を救ってほしい。
そんな神様からのお願いは異世界に行った時点でクリア⁉
異世界を救ったお礼に好きなように転生させてくれるっていうからお酒を飲みながらいろいろ希望を出した。
転生しても人がいい……そんな希望を出したのに生まれてみたら頭に角がありますけど?
人がいいって言ったのに。
竜人族?
竜人族も人だって確かにそうだけど人間以外に人と言われている種族がいるなんて聞いてないよ!
それ以外はおおよそ希望通りだけど……
転生する世界の神様には旅をしてくれって言われるし。
まあ自由に世界を見て回ることは夢だったからそうしますか。
もう世界は救ったからあとはのんびり第二の人生を生きます。
竜人に転生したリュードが行く、のんびり異世界記ここに始まれり。
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~
立花鏡河
児童書・童話
【第1回きずな児童書大賞】奨励賞を受賞しました!
応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます!
「ひさしぶりだね、魔法少女アイカ」
再会は突然だった。
わたし、愛葉一千花は、何の取り柄もない、フツーの中学二年生。
なじめないバスケ部をやめようかと悩みながら、掛けもちで園芸部の活動もしている。
そんなわたしには、とある秘密があって……。
新入生のイケメン、乙黒咲也くん。
わたし、この子を知ってる。
ていうか、因縁の相手なんですけどっ!?
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
わたしはかつて、魔法少女だったんだ。
町をねらう魔物と戦う日々――。
魔物のリーダーで、宿敵だった男の子が、今やイケメンに成長していて……。
「意外とドジですね、愛葉センパイは」
「愛葉センパイは、おれの大切な人だ」
「生まれ変わったおれを見てほしい」
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
改心した彼が、わたしを溺愛して、心をまどわせてくる!
光と闇がまじりあうのはキケンです!
わたしたちの恋愛、NGだよね!?
◆◆◆第1回きずな児童書大賞エントリー作品です◆◆◆
表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。
さいごの法律
赤木 さわと
児童書・童話
へんてこになっていく今の世の中見ていてたまらなくなって書きました
過激な童話です
みんな死んじゃいます
でも…真実は一つです
でも…終末の代わりに産まれるものもあります
それこそが、さいごの法律です
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる