ワガママ姫とわたし!

清澄 セイ

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第七章「わたしたちの覚悟」

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♢♢♢

さっきまでとは、景色が全く違う。ヒュウヒュウという風の音が聞こえて、わたしたちの体に容赦なく吹きつける。

空気もグッと淀みが濃くなって、気を抜くと体から力が抜けてしまいそうだ。

ギイイィィ

全員で力を合わせて、背の何倍もある大きな扉を押す。それは予想外に、簡単に開いた。

「まるで、入ってくださいって言ってるみたいだな」
「例えワナだとしても、入る以外の選択肢なんてないわ」

ソルが剣をグッと握り直したのが分かった。ルミエール姫は、いつも以上に険しい表情をしてる。

いよいよ、魔女と直接戦うんだ…!

わたしたちは慎重に、城の中へと足を踏み入れる。コツコツという足音が、やけに大きく響いてる。

「なんだか寒いわ…」
「負のエネルギーが強くて、頭が割れそうだ」
「だ、大丈夫?二人とも」

いつもキラキラ光ってる羽根が、今は輝きを失ってるように見える。苦痛の表情を浮かべるラランとソララを心配しながら、それぞれを肩に乗せた。

「少しでも休んでて」
「ありがとう、メイ…」
「悪いな、助かる」

二人とも、顔色が悪い。ここに来るまでにもかなり妖精の力を使ってるし、出来るだけ休ませてあげたい。

妖精の力は、妖精つかいの力。妖精つかいの光のエネルギーが強ければ強いほど、妖精たちも力を増していく。

わたしは妖精つかいじゃないけど、この剣が使えるんだからもっとしっかりしなきゃいけない。ルミエール姫の言う通り、落ち込んでるヒマなんかないんだ。

改めて心に誓ったわたしは、剣を握る手に力を込める。あれだけ違和感があったのに、今では不思議と馴染んでる気がした。





ガタガタガタ…ッ

その時、突然城が揺れはじめる。まるで地震みたいに、地面から揺れてる感じだ。

「キャ…ッ!」
「なんだこれ…っ!」

今このタイミングでぐうぜん天災が起こるはずない。これもきっと、魔女の仕業だ。

「…あなたたちにはそれぞれ、とっても深い闇がある。わたしの大好きなくらぁい闇が、ね」

どこからともなく聞こえてくる、ねっとりした女の人の声。

どんどん大きくなる揺れとともに目の前が急に暗くなって、自分のつま先すら見えなくなってしまった。
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