ワガママ姫とわたし!

清澄 セイ

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第六章「妖精の剣」

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妖精の剣を手に入れたわたしたち。もうだいぶ日も暮れたし、その場所で野宿することに決めた。ここは他と違って、魔獣たちも近寄って来れないらしい。

持ってきたパンと、ソルが作ってくれた即席のスープ。体があったまるし、緊張してた心がホッと落ち着いた。

食事を終えて、わたしたちは焚き火のそばに座る。わたしを真ん中にして、ソルとルミエール姫。ラランとソララは休むと言って、木の上に飛んでいってしまった。

「火起こしもあっという間だったし、ソルはなんでもできるんだね」
「騎士見習いとして遠征についていくこともあるし、このくらいは当然だ」
「悪かったわね。どうせわたくしは足手まといよ」
「誰もそんなこと言ってないだろ?」

ソルとルミエール姫の視線がバチッと合わさったから、わたしは慌てて間に入る。

「そ、そういえばね?わたしのクラス……えっと、知り合いにアリス君っていう男の子がいるんだけど」

なんとか話題を、って思った時にソルの顔が視界に入ってきて、わたしは有栖君の名前を出した。

「ソルと顔がソックリなんだよ。初めて会った時ビックリしちゃった」
「ああ、そういやすごい顔してたもんな」
「しっ、してないよ!」
「してたしてた」

おかしそうに笑われて、わたしは少しだけ唇を尖らせる。

「わたくしたちも瓜二つだし、不思議なこともあるものだわ」
「確か、お前の本の世界と似てるんだっけ?」
「うん。わたしのお母さんが描いた“”っていう絵本とおんなじ」

そう口にして、ふと首を傾げる。

「二人とも、信じてくれるんだ……」
「なによ、いまさらそんなこと」
「最初は信じてくれなかったくせに」
「あら、そうだったかしら」

しれっとしてるルミエール姫に、わたしは苦笑いするしかできない。

ソルもソルで、いたって普通だ。

「わざわざそんなウソついてまで命かけるヤツなんかいないだろ」
「命……そうだよね」

もといた場所とは違う。ここには、なんの補償もないんだ。

「この世界を元に戻せば、きっと帰れる気がする。根拠はないけど…」
「戻れなくたって、わたくしの影武者として雇ってあげるわよ」
「あ、あはは…」

それは遠慮します、とは言えない。

「話は戻るけど、ソルにソックリなアリス君もすごくいい人なんだよ。明るくて優しくて、いつも話しかけてくれるんだ」
「へぇ、さすが俺に似てるだけはあるな」
「でもわたし、話すのが苦手で。アリス君にもいつも、嫌な態度しかとれなくて……」

しょんぼりとうつむくわたしの両隣から、それぞれ声が降ってくる。

「あら、あなた最初に比べたらずいぶん話せるようになってるわよ」
「今じゃ腰に剣までぶら下げてるしな」
「そっ、それは」
「わたくしに嫌味まで言えるんだもの」
「いっ、嫌味なんてっ」

ソルもルミエール姫も、焦るわたしを見てイタズラっぽく笑った。

「これが終わる頃には、変われてるのかな……」

ポツンと呟くと、二人も笑うのをやめる。

わたしたちは三人揃って、月も星も見えない空を見上げた。
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