55 / 89
第六章「妖精の剣」
2
しおりを挟む
それからも、わたしたちはひたすら前を目指した。ラランとソララの案内のおかげで、あんまり魔獣に出くわさずにすんでる。
さっきみたいに飛び出してきた魔獣は、ソルが応戦してくれた。
戦うところを初めて見たけど、ソルはやっぱりすごく強い。
「もう少しで着くわ」
「る、ルミエール姫。大丈夫ですか?」
「え、ええ……平気よっ」
いつものドレス姿とは違って、ルミエール姫は動きやすいワンピースに身を包んでる。それでもやっぱり、こんな風に歩くのは辛そうだ。
わたしもそこまで体力があるわけじゃないけど、ルミエール姫は王女さまだ。慣れてなくても当たり前だと思う。
それにいつ魔獣が出てくるか分からないから、恐怖でつい歩くペースも早くなる。
「わ、わたしにつかまってください」
「そんなことしなくたって」
「大丈夫だから、ほら」
額に玉のような汗を浮かべて荒い呼吸を繰り返しているルミエール姫に、わたしは肩を差し出す。
「……まったく、平気だと言っているのに」
拗ねたような口調とは裏腹に、彼女はしっかりとわたしに捕まる。その様子がおかしくて、思わず笑みがこぼれた。
「ここよ、メイ!」
ラランとソララが声を上げて、くるくると私の周りを回る。目の前がパッと開けて、さっきまで薄暗かった森の中にそこだけキラキラと光が差し込んでいた。
「すごい……」
あまりに幻想的で、無意識に声がもれる。
「ここだけは、妖精の力で守られてるんだ。魔女も手は出せない、神聖な場所だ」
ソララから聞いたことを、わたしが二人に説明する。ルミエール姫はわたしに寄りかかっていた体を起こした。
「あ、あの……ルミエール姫。なにか感じますか?」
本のストーリーでは、この場所でルミエール姫が聖なる剣を引き抜く。その剣で、魔女と戦って勝つんだ。
「わたくしは、なにも感じないわ」
「あ、ご、ごめんなさい」
「いいのよ、別に」
わたしは、自分の言葉にすごく後悔した。
さっきみたいに飛び出してきた魔獣は、ソルが応戦してくれた。
戦うところを初めて見たけど、ソルはやっぱりすごく強い。
「もう少しで着くわ」
「る、ルミエール姫。大丈夫ですか?」
「え、ええ……平気よっ」
いつものドレス姿とは違って、ルミエール姫は動きやすいワンピースに身を包んでる。それでもやっぱり、こんな風に歩くのは辛そうだ。
わたしもそこまで体力があるわけじゃないけど、ルミエール姫は王女さまだ。慣れてなくても当たり前だと思う。
それにいつ魔獣が出てくるか分からないから、恐怖でつい歩くペースも早くなる。
「わ、わたしにつかまってください」
「そんなことしなくたって」
「大丈夫だから、ほら」
額に玉のような汗を浮かべて荒い呼吸を繰り返しているルミエール姫に、わたしは肩を差し出す。
「……まったく、平気だと言っているのに」
拗ねたような口調とは裏腹に、彼女はしっかりとわたしに捕まる。その様子がおかしくて、思わず笑みがこぼれた。
「ここよ、メイ!」
ラランとソララが声を上げて、くるくると私の周りを回る。目の前がパッと開けて、さっきまで薄暗かった森の中にそこだけキラキラと光が差し込んでいた。
「すごい……」
あまりに幻想的で、無意識に声がもれる。
「ここだけは、妖精の力で守られてるんだ。魔女も手は出せない、神聖な場所だ」
ソララから聞いたことを、わたしが二人に説明する。ルミエール姫はわたしに寄りかかっていた体を起こした。
「あ、あの……ルミエール姫。なにか感じますか?」
本のストーリーでは、この場所でルミエール姫が聖なる剣を引き抜く。その剣で、魔女と戦って勝つんだ。
「わたくしは、なにも感じないわ」
「あ、ご、ごめんなさい」
「いいのよ、別に」
わたしは、自分の言葉にすごく後悔した。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
妖怪が見えるボッチな私の初めての友達は妖怪でした。
無月兄
児童書・童話
私、錦結衣は、学校には友達のいない、所謂ボッチ。
その理由は、私には妖怪が見えるから。
昔、妖怪が見えると騒いだせいで、学校のみんなからは変なやつ扱いされ、見事に孤立してしまった。
今日は夏祭り。学校のみんなと会うのが嫌な私は、祭りには行かず近所の山に登って時間を潰していたのだけど、そこで一人の天狗の少年に出会う。
意味不明なことに、妖怪の彼は、人間の私に、友達にならないかと言ってきた。
人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜
犬型大
ファンタジー
神様にいっぱい希望を出したら意思疎通のズレから竜人になりました。
異世界を救ってほしい。
そんな神様からのお願いは異世界に行った時点でクリア⁉
異世界を救ったお礼に好きなように転生させてくれるっていうからお酒を飲みながらいろいろ希望を出した。
転生しても人がいい……そんな希望を出したのに生まれてみたら頭に角がありますけど?
人がいいって言ったのに。
竜人族?
竜人族も人だって確かにそうだけど人間以外に人と言われている種族がいるなんて聞いてないよ!
それ以外はおおよそ希望通りだけど……
転生する世界の神様には旅をしてくれって言われるし。
まあ自由に世界を見て回ることは夢だったからそうしますか。
もう世界は救ったからあとはのんびり第二の人生を生きます。
竜人に転生したリュードが行く、のんびり異世界記ここに始まれり。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
王子さまと七色のカラス ~眠れる城のお姫さま~
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
お姫様が眠りから覚めない!?
王子さまの大切な人のために、
健気なカラスが奔走します……!!
☆…☆…☆
※ 小4以降の漢字(や、むずかしいと思う漢字)には、ふり仮名をふりました。
※ 大人でも楽しめる童話として書きました♪
お楽しみいただけましたら、幸いです☆*。
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
その付喪神、鑑定します!
陽炎氷柱
児童書・童話
『彼女の”みる目”に間違いはない』
七瀬雪乃は、骨董品が大好きな女の子。でも、生まれたときから”物”に宿る付喪神の存在を見ることができたせいで、小学校ではいじめられていた。付喪神は大好きだけど、普通の友達も欲しい雪乃は遠い私立中学校に入ることに。
今度こそ普通に生活をしようと決めたのに、入学目前でトラブルに巻き込まれて”力”を使ってしまった。しかもよりによって助けた男の子たちが御曹司で学校の有名人!
普通の生活を送りたい雪乃はこれ以上関わりたくなかったのに、彼らに学校で呼び出されてしまう。
「俺たちが信頼できるのは君しかいない」って、私の”力”で大切な物を探すの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる