ワガママ姫とわたし!

清澄 セイ

文字の大きさ
上 下
31 / 89
第四章「あの子にそっくり」

1

しおりを挟む
♢♢♢

まさか、こんなことになるなんて思ってもなかった。お母さんが描いた大好きな絵本の中に、わたしが入っちゃうなんて。

しかも、憧れの存在だったルミエール姫は見た目がわたしにそっくりだし、想像と全然違ってワガママですぐ怒るしツンとしてて怖い。

でも、本来妖精つかいとして誰からも好かれるはずのルミエール姫は、悲しい運命を背負ってた。それを聞いたわたしは、彼女の力になりたいって心からそう思った。

会話が苦手で、目立つことが嫌いで、こんなわたしになにが出来るのかは分からないけど。

やると決めたからには、精いっぱい頑張ろう。魔女を倒して王妃さまの呪いを解き、お母さんのつくったこの世界を平和で幸せにしてみせるんだから……!



「で?具体的にはどうするの?メイ」

一日経って、ルミエール姫はすっかり元通り。赤いドレスに身を包み、不機嫌そうにツンとアゴを上げてる。

「まさか、大口を叩いておいてなんの策もありませんなんてこと、あるはずないわよね?」
「う……っ」
「黙っていないでなんとか言いなさい!この間は偉そうにわたくしに説教までしたくせに!」

説教なんてした覚えないけど、ルミエール姫の中ではそうなってるみたい。

「メイ様はお嬢様のことを思って言ってくださったのですから、そんな言い方をなさってはいけませんよ」
「ま、マーサさん」

ウルウルしながらマーサさんに視線を向けると、優しい笑顔が返ってくる。ここに来てから初めてわたしに優しくしてくれた、すごくいい人だ。

「そんなこと分かっているわよ!だからわたくしなりに、優しくしようと努力しているんじゃない!」

どこがですか!

そう叫びたい気持ちを、ツバと一緒にゴクンと飲み込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キャベツの妖精、ぴよこ三兄弟 〜自宅警備員の日々〜

ほしのしずく
児童書・童話
キャベツの中から生まれたひよこ? たちのほっこりほのぼのLIFEです🐥🐤🐣

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

屋根裏のねずみさん

にゃあちゃん
児童書・童話
 先住民であったねずみと他の動物の話です。

【完結】てのひらは君のため

星名柚花
児童書・童話
あまりの暑さで熱中症になりかけていた深森真白に、美少年が声をかけてきた。 彼は同じ中学に通う一つ年下の男子、成瀬漣里。 無口、無表情、無愛想。 三拍子そろった彼は入学早々、上級生を殴った不良として有名だった。 てっきり怖い人かと思いきや、不良を殴ったのはイジメを止めるためだったらしい。 話してみると、本当の彼は照れ屋で可愛かった。 交流を深めていくうちに、真白はどんどん漣里に惹かれていく。 でも、周囲に不良と誤解されている彼との恋は前途多難な様子で…?

処理中です...