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第三章「わたしの大好きなお姫様」
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マーサさんと一緒にお城に帰って、ルミエール姫の部屋に入る。わたしだと気づいたルミエール姫がクローゼットから飛び出してきて、ビックリした。
まさか、わたしが帰ってくるまでずっとその中にいたの!?
目をまん丸にするわたしの肩を、ルミエール姫が強い力でゆする。
「ちょっと、お茶会はどうだったの?ちゃんと上手くやったんでしょうね?」
「お茶会は……たぶん、上手くいってないです」
「上手くいっていない?」
わたしの言葉を聞いたルミエール姫が、目を吊り上げる。そして、後ろにいるマーサさんをキッとにらんだ。
「マーサ。あなたがついていながらこれは一体どういうことなの!?」
「申し訳ございません、お嬢様」
「一体なにを考えているのかしら!わたくしが雇ってあげなくちゃあなたの家なんて……」
「やめてくださいルミエール姫!」
自分でもビックリするくらい、大きな声が出た。わたしはマーサさんの前に立つと、唇の端をキュッと噛む。
「なによ、なにが言いたいの?いつもモジモジして、ハッキリ喋れないくせに」
ルミエール姫が腕を組んで、バカにするように鼻で笑った。
「あ、あの……」
本当は、すごく怖い。わたしの態度や言葉が、また誰かを傷つけるかもしれないって、そう思うと足がすくんで動けなくなる。
でも今は、わたしがなにも言わなきゃマーサさんがひどいことになるかもしれない。
わたしがちゃんと、言葉にしなきゃ。
「き、今日のお茶会が上手くいかなかったのは、ルミエール姫のせいだと思います」
「なんですって?」
彼女のほっぺたが、ピクッと反応する。
「だってわたしは、知らなかったんです。ルミエール姫は妖精つかいなのに、妖精と話せないってこと」
怖いけど、目は逸らさない。ルミエール姫の顔色が、サッと変わったのが分かる。
「それに、王妃さまはルミエール姫の代わりに魔女の呪いを受けたことも、教えてもらってませんでした」
「……そんなこと、どうしてあなたに教えなきゃならないのよ。関係ないでしょう」
「ルミエール姫のフリをするんだったら、知らなきゃおかしいです」
少しずつ、背筋が伸びていく。ここで黙ったらわたしはまた、なにも知らないままあんな場所に放り出されてしまう。
マーサさんにも、迷惑がかかる。
「ルミエール姫が代わりをさせたかったのは、周りから責められることが分かってたからなんですね。それが怖くて、わたしに押しつけたんだ」
「な、なによ!あなた誰に向かってそんな口を……っ」
「確かにわたしは、ここを追い出されたら行くところがなくなります。だから黙って言うことを聞こうって、そう思ってました。でも、こんなの違う」
鼻から思いっきり息を吸って、言葉と一緒に一気に吐き出した。
「わたしの大好きなルミエール姫は、誰かに押しつけて逃げたりしない!」
ずっとずっと、憧れだったから。
その気持ちを、ちゃんと伝えたいって思ったんだ。
まさか、わたしが帰ってくるまでずっとその中にいたの!?
目をまん丸にするわたしの肩を、ルミエール姫が強い力でゆする。
「ちょっと、お茶会はどうだったの?ちゃんと上手くやったんでしょうね?」
「お茶会は……たぶん、上手くいってないです」
「上手くいっていない?」
わたしの言葉を聞いたルミエール姫が、目を吊り上げる。そして、後ろにいるマーサさんをキッとにらんだ。
「マーサ。あなたがついていながらこれは一体どういうことなの!?」
「申し訳ございません、お嬢様」
「一体なにを考えているのかしら!わたくしが雇ってあげなくちゃあなたの家なんて……」
「やめてくださいルミエール姫!」
自分でもビックリするくらい、大きな声が出た。わたしはマーサさんの前に立つと、唇の端をキュッと噛む。
「なによ、なにが言いたいの?いつもモジモジして、ハッキリ喋れないくせに」
ルミエール姫が腕を組んで、バカにするように鼻で笑った。
「あ、あの……」
本当は、すごく怖い。わたしの態度や言葉が、また誰かを傷つけるかもしれないって、そう思うと足がすくんで動けなくなる。
でも今は、わたしがなにも言わなきゃマーサさんがひどいことになるかもしれない。
わたしがちゃんと、言葉にしなきゃ。
「き、今日のお茶会が上手くいかなかったのは、ルミエール姫のせいだと思います」
「なんですって?」
彼女のほっぺたが、ピクッと反応する。
「だってわたしは、知らなかったんです。ルミエール姫は妖精つかいなのに、妖精と話せないってこと」
怖いけど、目は逸らさない。ルミエール姫の顔色が、サッと変わったのが分かる。
「それに、王妃さまはルミエール姫の代わりに魔女の呪いを受けたことも、教えてもらってませんでした」
「……そんなこと、どうしてあなたに教えなきゃならないのよ。関係ないでしょう」
「ルミエール姫のフリをするんだったら、知らなきゃおかしいです」
少しずつ、背筋が伸びていく。ここで黙ったらわたしはまた、なにも知らないままあんな場所に放り出されてしまう。
マーサさんにも、迷惑がかかる。
「ルミエール姫が代わりをさせたかったのは、周りから責められることが分かってたからなんですね。それが怖くて、わたしに押しつけたんだ」
「な、なによ!あなた誰に向かってそんな口を……っ」
「確かにわたしは、ここを追い出されたら行くところがなくなります。だから黙って言うことを聞こうって、そう思ってました。でも、こんなの違う」
鼻から思いっきり息を吸って、言葉と一緒に一気に吐き出した。
「わたしの大好きなルミエール姫は、誰かに押しつけて逃げたりしない!」
ずっとずっと、憧れだったから。
その気持ちを、ちゃんと伝えたいって思ったんだ。
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