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第二章「夢じゃないなんてありえない!」
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しばらくして落ち着いたわたしは、突然泣いてしまったことをマーサさんに謝る。すると彼女はニッコリ笑って「気にしないでください」って言ってくれた。
まだ出会ったばっかりだけど、すごく優しくてあったかい人で、グチャグチャだった心の中が少しだけ整理されたような気がする。
「はい、出来ました。とてもよくお似合いですよ、メイ様」
マーサさんの言葉に、わたしは姿見に映った自分を見つめる。初めて着るドレスはちょっと重たくて苦しいけど、それ以上にキラキラ輝いて見えた。
淡いピンク色に、細かくレースがあしらわれたふわふわのドレス。髪の毛も高い位置で編み込まれて、首元にはダイヤモンドのネックレス。
これ、もしかしなくても本物だよね…そう思うと、ちょっと怖い。
こんなに可愛いドレスが着られて嬉しい気持ちと、ホントにルミエール姫のフリをしなきゃいけないんだっていう不安とで、やっぱり心はフクザツだ。
だけどもう、後戻りは出来ない。やるしかないんだ。
「メイ様、これから簡単なレッスンをいたします。お嬢様がおっしゃるには、メイ様は貴族教育を受けていないと」
「あ……は、はい」
当たり前だけど、この世界のことなんてなにも分からない。前に、テレビ番組の特集で昔のヨーロッパの王族の暮らしっていうのを見て、憧れたりはしたけど。
「では、まず基本的な所作から。午後にあるお茶会に向けて、一つずつゆっくりと覚えていきましょうね」
「お、お茶会」
ルミエール姫、そんなのひとことも言ってなかった。ただでさえお姫さまのフリをしなきゃいけないのに、お茶会なんてハードルが高すぎる。
そう考えると、さっきの覚悟がちょっとしぼんだ気がした。
まだ出会ったばっかりだけど、すごく優しくてあったかい人で、グチャグチャだった心の中が少しだけ整理されたような気がする。
「はい、出来ました。とてもよくお似合いですよ、メイ様」
マーサさんの言葉に、わたしは姿見に映った自分を見つめる。初めて着るドレスはちょっと重たくて苦しいけど、それ以上にキラキラ輝いて見えた。
淡いピンク色に、細かくレースがあしらわれたふわふわのドレス。髪の毛も高い位置で編み込まれて、首元にはダイヤモンドのネックレス。
これ、もしかしなくても本物だよね…そう思うと、ちょっと怖い。
こんなに可愛いドレスが着られて嬉しい気持ちと、ホントにルミエール姫のフリをしなきゃいけないんだっていう不安とで、やっぱり心はフクザツだ。
だけどもう、後戻りは出来ない。やるしかないんだ。
「メイ様、これから簡単なレッスンをいたします。お嬢様がおっしゃるには、メイ様は貴族教育を受けていないと」
「あ……は、はい」
当たり前だけど、この世界のことなんてなにも分からない。前に、テレビ番組の特集で昔のヨーロッパの王族の暮らしっていうのを見て、憧れたりはしたけど。
「では、まず基本的な所作から。午後にあるお茶会に向けて、一つずつゆっくりと覚えていきましょうね」
「お、お茶会」
ルミエール姫、そんなのひとことも言ってなかった。ただでさえお姫さまのフリをしなきゃいけないのに、お茶会なんてハードルが高すぎる。
そう考えると、さっきの覚悟がちょっとしぼんだ気がした。
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