ワガママ姫とわたし！

第二章「夢じゃないなんてありえない！」

6

♢♢♢

「あれこれ小言を言われるのが嫌だったのよ」

朝になって、どうしてクローゼットの中に隠れていたのか聞いたら、ルミエール姫はそう言ってため息をついた。

「この王国唯一の王女なのよ？わたくしより優先すべきことなんてなに一つないわ」
「は、はぁ」
「それよりもメイ、あなたって似ているのは見た目だけなのね。その話し方も、質問にすぐ答えないところも、本当にイライラするったらないわ」
「……ごめんなさい」

目の前のルミエール姫は、絵本の中で描かれてるルミエールとは全然違った。言い方がキツいし、思いっきりわたしをバカにしてる。だけど、今頼れるのは彼女しかいない。

ちなみに名前を教えたら「変ね」って言われてちょっとショックだった。

「まぁいいわ。言っておくけど、このことは他言無用よ。わたくしの侍女であるマーサだけには、話しておくから」

ルミエール姫の侍女（お世話係みたいなものだって）のマーサさんは、昨日はお使いに出ていていなかったらしい。

「守ってあげるかわりに、メイは私の言うことはなんでも聞くのよ。分かったわね？」
「あ、あの……ルミエール姫。しもべって一体、なにをすればいいんですか？」
「そんなの決まってるじゃない。わたくしの代わりに国民の前に立つのよ」

当たり前みたいな言い方をされたけど、わたしの顔からサッと血の気が引く。目立つの苦手なのに、国民の前に立つってことはたくさんの人から見られなきゃいけないってことだ。

しかも、ルミエール姫になりきって。

「それってもしバレたら」
「あなたはきっと死刑ね」
「ひぃ……っ！」

そんなの絶対、無理に決まってる！

「あなたに選択肢はないわよ、メイ」
「で、でも……っ」

煮え切らないわたしを見て、ルミエール姫はフカフカの絨毯の上で地団駄を踏んだ。

「ああもう、なんでそんなにハッキリしない物言いなの！腹が立つったら！」
「ご、ごめんなさ……っ」
「いちいち謝らなくていいから、今すぐにやめてちょうだい！」

別の世界に来ても、わたしは結局嫌な顔をされる。

来たくて来たわけじゃないのに……。

喉まで出かかったその言葉を、ゴクンと飲み込んだ。