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第一章「名前とは全然違うんだ」
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まだ震えが止まならない。ガチガチと歯が鳴って、汗をかいてるのに寒くてたまらない。
「ルミエール姫様、お怪我はございませんか?」
「……あの、わたしは」
「最近この辺りでは人さらいが出没しているとの報告を受け、我ら騎士団が見回りをしておりました。また護衛もつけず、お一人で城を抜け出したのですね」
手にはたいまつを持って、本の中でしか見たことのないような鎧に身を包んでいる。わたしの体を起こしながら、心配そうに顔を覗きこんだ。
「わたしは姫なんかじゃありません!」
「またそんなことを言って。それにその格好、変装でもしたつもりですか」
ため息と一緒に、呆れたような声が降ってくる。
「お乗りください、ルミエール様。城に帰って手当てを」
「だからわたしは……」
「さぁ、早く。いつどこからオオカミが飛び出してくるか分かりませんから」
オオカミ。その単語を聞いて、ノドの奥がヒュッと音を立てる。夢でも、オオカミに襲われるなんて絶対に嫌だ。
どうしてわたしをお姫様だって勘違いしてるのか分からないけど、今はこの人に頼るしかない。助けてもらえなったらきっと今ごろひどい目に……って考えるのも、怖い。
騎士の人に支えてもらいながら、ようやく馬に乗る。本で馬に乗るシーンが書かれてた時は、わたしもいつか乗馬してみたいなって思ってた。でも実際乗ってみるとすごく高くて怖いし、お尻は痛いし体もふらつくし、もう降りたくなってくる。
「なにをぼうっとされているのですか。しっかりおつかまりください、ルミエール様」
「……。」
もし違うってバレたら、どうなるんだろう。考えるとまた泣きそうになるけど、とにかく今はこの人に頼るしかない。
硬い鎧に腕を回して、精いっぱいの力でギュッと抱きつく。騎士の人が足で馬のお腹を叩いた途端、体がグンッと前に引っ張られた。
「キャ……ッ」
これはホントにしっかりつかまってないと、振り落とされてしまいそうだ。暗い森の中を駆け抜けてく感覚が怖くて、叫び出しそうになるのを必死でガマンする。
頬っぺたにあたる風が本物みたいに冷たくて、また涙が出そうになった。
「ルミエール姫様、お怪我はございませんか?」
「……あの、わたしは」
「最近この辺りでは人さらいが出没しているとの報告を受け、我ら騎士団が見回りをしておりました。また護衛もつけず、お一人で城を抜け出したのですね」
手にはたいまつを持って、本の中でしか見たことのないような鎧に身を包んでいる。わたしの体を起こしながら、心配そうに顔を覗きこんだ。
「わたしは姫なんかじゃありません!」
「またそんなことを言って。それにその格好、変装でもしたつもりですか」
ため息と一緒に、呆れたような声が降ってくる。
「お乗りください、ルミエール様。城に帰って手当てを」
「だからわたしは……」
「さぁ、早く。いつどこからオオカミが飛び出してくるか分かりませんから」
オオカミ。その単語を聞いて、ノドの奥がヒュッと音を立てる。夢でも、オオカミに襲われるなんて絶対に嫌だ。
どうしてわたしをお姫様だって勘違いしてるのか分からないけど、今はこの人に頼るしかない。助けてもらえなったらきっと今ごろひどい目に……って考えるのも、怖い。
騎士の人に支えてもらいながら、ようやく馬に乗る。本で馬に乗るシーンが書かれてた時は、わたしもいつか乗馬してみたいなって思ってた。でも実際乗ってみるとすごく高くて怖いし、お尻は痛いし体もふらつくし、もう降りたくなってくる。
「なにをぼうっとされているのですか。しっかりおつかまりください、ルミエール様」
「……。」
もし違うってバレたら、どうなるんだろう。考えるとまた泣きそうになるけど、とにかく今はこの人に頼るしかない。
硬い鎧に腕を回して、精いっぱいの力でギュッと抱きつく。騎士の人が足で馬のお腹を叩いた途端、体がグンッと前に引っ張られた。
「キャ……ッ」
これはホントにしっかりつかまってないと、振り落とされてしまいそうだ。暗い森の中を駆け抜けてく感覚が怖くて、叫び出しそうになるのを必死でガマンする。
頬っぺたにあたる風が本物みたいに冷たくて、また涙が出そうになった。
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