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第一章「名前とは全然違うんだ」
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有栖君は息を切らしながら、荷物をほとんど持ってくれた。
「違うクラスの友達に呼ばれててさ、ごめんな」
「う、ううん」
「てかこれ重!なに入ってんだろうな」
有栖君は爽やかでかっこよくて、こんなわたしにもちゃんと話しかけてくれる。
あの日からずっと、わたしの心の中で一番輝いてる男の子だ。
結局ロクにお礼も言えずじまいになっちゃったけど、今さらあの時の話をしたってきっと有栖君は覚えていないだろうし。
それに、そんな勇気もない。
「今日の給食のカレー、めちゃくちゃおいしかったよな!俺三杯もおかわりしてさぁ、まだ腹が苦しいわ」
「そ、そうなんだ」
せっかく有栖君が話しかけてくれてるのに、なんでこんなそっけない返事しかできないんだろう…相手が有栖君だと余計に緊張して、もっと言葉が出てこなくなっちゃう。
「お、着いた。ちょっと待って」
職員室のドア前までやってくると、有栖君は持っている段ボールを横に置く。そしてノックの後ドアを開けて、わたしに向かってニコッと笑った。
「重いだろ?先に入れよ」
「…ありがとう」
ほとんど有栖君が持ってくれたから、わたしは重くなんかない。こういう優しいところが、本当はすごく大好きだ。
先生に荷物を渡して、二人で職員室を出る。有栖君はなぜか、ジーッとわたしを見つめた。
「あ、あの…?」
「前から思ってたけど、照町って目の色キレーだよな」
有栖君はそう言って、わたしの顔を覗き込む。ボンッ!って音が出そうなくらい、一瞬で全身が熱くなった。
確かにわたしの瞳は、生まれつき色素が薄い。光の加減によって茶色に見えたりハチミツ色に見たりする。髪の毛の色も同じだ。
「え…えっと…」
「あ、ごめん嫌だった?」
そんなはずない。泣きそうなくらい嬉しいのに、恥ずかしい気持ちもあっていつも以上に上手く喋れない。
「じゃ、お疲れさま!」
結局有栖君とほとんど話せないまま、彼は先に行ってしまった。
「せっかく、褒めてもらえたのに。わたしのバカ…」
ポツリと呟いた言葉は、わたし以外の誰にも届かなかった。
「違うクラスの友達に呼ばれててさ、ごめんな」
「う、ううん」
「てかこれ重!なに入ってんだろうな」
有栖君は爽やかでかっこよくて、こんなわたしにもちゃんと話しかけてくれる。
あの日からずっと、わたしの心の中で一番輝いてる男の子だ。
結局ロクにお礼も言えずじまいになっちゃったけど、今さらあの時の話をしたってきっと有栖君は覚えていないだろうし。
それに、そんな勇気もない。
「今日の給食のカレー、めちゃくちゃおいしかったよな!俺三杯もおかわりしてさぁ、まだ腹が苦しいわ」
「そ、そうなんだ」
せっかく有栖君が話しかけてくれてるのに、なんでこんなそっけない返事しかできないんだろう…相手が有栖君だと余計に緊張して、もっと言葉が出てこなくなっちゃう。
「お、着いた。ちょっと待って」
職員室のドア前までやってくると、有栖君は持っている段ボールを横に置く。そしてノックの後ドアを開けて、わたしに向かってニコッと笑った。
「重いだろ?先に入れよ」
「…ありがとう」
ほとんど有栖君が持ってくれたから、わたしは重くなんかない。こういう優しいところが、本当はすごく大好きだ。
先生に荷物を渡して、二人で職員室を出る。有栖君はなぜか、ジーッとわたしを見つめた。
「あ、あの…?」
「前から思ってたけど、照町って目の色キレーだよな」
有栖君はそう言って、わたしの顔を覗き込む。ボンッ!って音が出そうなくらい、一瞬で全身が熱くなった。
確かにわたしの瞳は、生まれつき色素が薄い。光の加減によって茶色に見えたりハチミツ色に見たりする。髪の毛の色も同じだ。
「え…えっと…」
「あ、ごめん嫌だった?」
そんなはずない。泣きそうなくらい嬉しいのに、恥ずかしい気持ちもあっていつも以上に上手く喋れない。
「じゃ、お疲れさま!」
結局有栖君とほとんど話せないまま、彼は先に行ってしまった。
「せっかく、褒めてもらえたのに。わたしのバカ…」
ポツリと呟いた言葉は、わたし以外の誰にも届かなかった。
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