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第十三章

思い出のちらし寿司と、未来の夢①

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ーー

「来未ちゃん、もうできそう?」

「あ、はい。今印刷終わりました!それと、次に使う資材の発注もできてます」

「お、さすが。ありがとう」

「はいっ」

転職してからもうすぐ一年、印刷業の事務の仕事もだいぶ慣れた。

入社すぐの頃に私の指導係をしてくれていた井上さんは、今でも変わらず私を可愛がってくれる。

小さな印刷会社だから社長ともよく話をするし、お菓子や野菜をくれたりと、とてもよくしていただいている。

些細なことかもしれないけど、ありがとうや助かったと言ってもらえるのは、本当に嬉しい。

ここに転職できてよかったと、いつもそう感じている。

「いただきます」

昼休み、休憩室にあるテーブルで同じ事務担当の方達とお弁当を広げた。

「あ、山田ちゃんのそれおいしそう」

私のお弁当を覗きながら、井上さんがそう言った。

彼女が指差しているのは、シリコンカップに入ったハムチーズのオムレツ。

「朝から凝ってるよね」

「これ、レンジで簡単にできるんですよ。カップにハムを敷いて、そこにうずらの卵を落として塩コショウを振って混ぜて、チーズを乗せてチンするだけなんです」

「うそ、そんなに簡単なの?今度娘の弁当に入れてみる」

「はい、ぜひ!」

こうしてみんなでわいわいお喋りするのは、凄く楽しい。

同じ自分が作ったお弁当でも、一人でポツンと食べるより何倍もおいしく感じる。

「そういえば山田ちゃん、今度彼のご両親に挨拶に行くって言ってなかった?」

正面に座っている事務員さんが、そう口にする。多分私のお母さんと歳が近くて、いつもなにかと声をかけてくれる優しい人だ。

「そうなんです。今週末だから、もう今から緊張しちゃって」

「山田ちゃんなら絶対大丈夫よ。ねぇ?」

「そうそう、気に入られないわけないわよ」

「実はまだ手土産に迷ってて…」

「ご両親の好きなもの、彼に聞いた?」

「聞いたんですけど、あんまり知らないみたいです。甘いものは、嫌いではないみたいだけど」

「やだ、なにそれ!ちょっとしっかりしなさいよ彼氏!」

「あっ、いや彼が悪いわけじゃなくてっ」

「まぁ、手土産なんてなんだっていいわよ」

「そうそう。無難に有名どころのお菓子持っていけば」

「あんまり深く考えなくても大丈夫、いつもの山田ちゃんで。ね?」

「…はい、ありがとうございます!」

井上さんが私の肩をポンと叩いて、ニッコリ笑ってくれる。

他の人達も、口々に私を励ましてくれて。

まるで家族がたくさんいるような気持ちになって、自然と笑顔が溢れた。
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