居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

第十二章

ケチャップ味のオムライスと、家族のこと⑩

その後も、なんだかんだで翼さんは夕方過ぎまでいてくれた。

「ごめんね。休みの日に長居しちゃって」

「本当だよ」

「アンタに言ってない、私は来未ちゃんに言ったの」

「翼さん、今日はありがとうございました。とても楽しかったです！」

私がそう言うと、翼さんはニッコリ笑って私の手を取る。

「こちらこそ、急に押しかけてごめんね。また今度、ウチのサロンにも来て？ネイルケアだけでもいいから」

「はい、ぜひ！」

「私も楽しかった、ありがとう」

ヒールを履いた翼さんに続いて、私も下まで見送りたくて靴を履こうとしたけど、新太さんに止められた。

「いいって、ここで」

「アンタ腹立つわね。でも本当、ここまででいいから」

「でも」

「これ以上来未ちゃん取ると、結婚式の時にでも新太にぐちぐち言われそうだから」

「はい、じゃあ…ここで。お気をつけて」

「うん、ありがとう」

「じゃあな」

「バイバーイ」

翼さんがいなくなった後も、玄関はしばらくいい匂い。綺麗な人は、残り香まで素敵だった。

「来未なにやってんの」

「翼さんのいい匂いを忘れないように嗅いでるんです」

「なんだそれ」

犬みたいにクンクンさせている私の鼻を、新太さんが笑いながら摘んだ。

「…なぁ、来未」

「あ！」

「えっ」

「シーツ！取り込むの忘れてた！」

新太さんを残して、私はパタパタとベランダへ走った。