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第十二章
ケチャップ味のオムライスと、家族のこと⑨
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「急に来るなよ」
革靴を脱ぎながら、新太さんが眉間に皺を寄せる。
「しょうがないでしょ。アンタ連絡したって出ないじゃない」
「忙しいんだ」
「こんなに可愛い彼女と一緒に住んでることだって、内緒にしてるし」
「別に黙ってたわけじゃねぇよ。言うタイミングなかっただけ」
そのやり取りを聞いて、新太さんは家族に私のことを言っていなかったんだと改めて思う。
「来未?」
急に黙り込んだ私を案じるように、新太さんが私の顔を覗き込んだ。
心のモヤモヤに気づかれないように、慌てて笑顔を作る。
「ていうか、まだ帰ってないの」
「なによその言い草。私は来未ちゃんといたいの」
「そんなのは俺だって」
言い合いをしてる二人を見ながら、本当に仲がいいんだと微笑ましく思う。同時に、その関係性を少し羨ましく思った。
新太さんと小競り合いをしていた翼さんは、思い出したように「そういえば」とバッグをゴソゴソし始める。
「今日はこれが目的だったの、忘れてた」
クリーム色の、シンプルだけど高級感のあるカードのようなもの。
「結婚式の招待状。日付とか場所確認のために渡しとくわ」
「ん」
(え、それだけ?)
「ちょっと、他に言うことないわけ?」
私と同じこと思っていたようで、翼さんも不満げな声を上げる。
「結婚するかもって話は聞いてたし」
「だからってさぁ。もっとこう、あるでしょ?おめでとうとか、寂しいとか」
「おめでとう」
「声に感情が込もってない!」
「なんなんだよ一体…」
ウンザリと嫌そうな顔してる新太さんは、なんだか新鮮だ。
(って、そうじゃなくて!)
「翼さん、ご結婚されるんですね。おめでとうございます!」
「ありがとう来未ちゃん。本当可愛い反応、新太とは大違い」
「そうかよ」
「ウエディングドレス姿、きっと凄くお綺麗でしょうね」
私はニコニコしながら、真っ白なドレスに包まれた翼さんを想像する。そんな私の腕に、翼さんがそっと指を添えた。
「来未ちゃん。私は今日会ったばかりだけど、来未ちゃんのこと凄くいい子だって思ってる」
「あ、ありがとうございます」
翼さんは私に優しい眼差しを向けた後、今度は新太さんをギン!と睨みつけた。
「ちょっと新太、アンタしっかりしなさいよ。そんなんじゃ、来未ちゃんに愛想尽かされても知らないからね」
「つ、翼さん!?」
結婚式の話をしてただけなのに、彼女はなぜか急に怒りはじめる。
「本当、アンタって怖がりなんだから。そういうところは全然変わらない」
フンと腕組みしながら鼻を鳴らす翼さんと、図星をつかれたように複雑な顔をしている新太さん。
そんな二人の間で、私の頭の上は疑問符でいっぱいだった。
革靴を脱ぎながら、新太さんが眉間に皺を寄せる。
「しょうがないでしょ。アンタ連絡したって出ないじゃない」
「忙しいんだ」
「こんなに可愛い彼女と一緒に住んでることだって、内緒にしてるし」
「別に黙ってたわけじゃねぇよ。言うタイミングなかっただけ」
そのやり取りを聞いて、新太さんは家族に私のことを言っていなかったんだと改めて思う。
「来未?」
急に黙り込んだ私を案じるように、新太さんが私の顔を覗き込んだ。
心のモヤモヤに気づかれないように、慌てて笑顔を作る。
「ていうか、まだ帰ってないの」
「なによその言い草。私は来未ちゃんといたいの」
「そんなのは俺だって」
言い合いをしてる二人を見ながら、本当に仲がいいんだと微笑ましく思う。同時に、その関係性を少し羨ましく思った。
新太さんと小競り合いをしていた翼さんは、思い出したように「そういえば」とバッグをゴソゴソし始める。
「今日はこれが目的だったの、忘れてた」
クリーム色の、シンプルだけど高級感のあるカードのようなもの。
「結婚式の招待状。日付とか場所確認のために渡しとくわ」
「ん」
(え、それだけ?)
「ちょっと、他に言うことないわけ?」
私と同じこと思っていたようで、翼さんも不満げな声を上げる。
「結婚するかもって話は聞いてたし」
「だからってさぁ。もっとこう、あるでしょ?おめでとうとか、寂しいとか」
「おめでとう」
「声に感情が込もってない!」
「なんなんだよ一体…」
ウンザリと嫌そうな顔してる新太さんは、なんだか新鮮だ。
(って、そうじゃなくて!)
「翼さん、ご結婚されるんですね。おめでとうございます!」
「ありがとう来未ちゃん。本当可愛い反応、新太とは大違い」
「そうかよ」
「ウエディングドレス姿、きっと凄くお綺麗でしょうね」
私はニコニコしながら、真っ白なドレスに包まれた翼さんを想像する。そんな私の腕に、翼さんがそっと指を添えた。
「来未ちゃん。私は今日会ったばかりだけど、来未ちゃんのこと凄くいい子だって思ってる」
「あ、ありがとうございます」
翼さんは私に優しい眼差しを向けた後、今度は新太さんをギン!と睨みつけた。
「ちょっと新太、アンタしっかりしなさいよ。そんなんじゃ、来未ちゃんに愛想尽かされても知らないからね」
「つ、翼さん!?」
結婚式の話をしてただけなのに、彼女はなぜか急に怒りはじめる。
「本当、アンタって怖がりなんだから。そういうところは全然変わらない」
フンと腕組みしながら鼻を鳴らす翼さんと、図星をつかれたように複雑な顔をしている新太さん。
そんな二人の間で、私の頭の上は疑問符でいっぱいだった。
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