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第十一章
手作りなんかより高級店の方がいいに決まってる⑪
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私以外の庶務課の女子社員達数人にも、今日山田さんを呼び出すことは伝えてあった。だからあえて、会社近くのカフェを指定したのだ。
彼女達には会社前で待つように指示して、山田さんが言い逃れをしたら援護射撃するよう頼んでおいた。
最初から、一人で会うつもりなんてさらさらなかった。
あることないこと言われても嫌だし、証人は必要だ。大澤係長のことがあって妙な空気が流れているとはいえ、彼女達はまだ私に逆らえない。
山田さんに直接嫌がらせをしたのは私じゃなく、彼女達だから。
「ちょっと外に出ましょうか」
ニッコリ笑って、私は立ち上がる。
「…三ノ宮さん」
「行きましょう?いつまでもお店の中で言い争いしてるわけにもいかないし」
「三ノ宮さん!」
(なによ、その顔)
今さらなにかに勘づいて焦ったところで、もう遅い。
「…どうしてそんなに、私を目の敵にするんですか?」
「私はなにもしてないわ。私に恥をかかせたのは、あなたの方じゃない」
「…」
「とにかく、場所を変えましょう」
暗い表情の山田さんを一瞥して、私はそのまま店を出る。後からノソノソとついてくる彼女に、ますますイライラが募った。
「三ノ宮さん」
会社ビルのすぐ横の、歩道脇。そこにはすでに、庶務課の女子社員が数人立っていた。
「えっ」
驚いたように声を上げる山田さんを見て、思わず口角が上がる。
もう遅この場所で私が「山田さんと大澤係長に悪質な嫌がらせをされた」と騒ぎ立て、彼女達がそれに賛同する。
私自身もさらに妙な噂を立てられるかもしれないけど、どうせ辞めるって決めたんだしどうだっていい。
とにかく、山田さんと大澤係長にダメージを与えられるなら。
「みなさん、どうして…」
山田さんは困惑の表情で彼女達を見つめた後、私に視線を移す。
「証人よ。山田さんが言い逃ればかりするから、仕方なかったの」
「でもっ」
「もう、遅いから。ねぇ、みんな?」
「三ノ宮さん…それが…あの…」
女子社員の一人が、今にも泣き出しそうな顔でしどろもどろにそう言った。
「は?なに?もっとハッキリ…」
「利香子さん」
唐突に呼ばれた名前に、驚いて後ろを振り返る。
その瞬間、ここに居るはずのない人物が居ることに思考が停止した。
彼女達には会社前で待つように指示して、山田さんが言い逃れをしたら援護射撃するよう頼んでおいた。
最初から、一人で会うつもりなんてさらさらなかった。
あることないこと言われても嫌だし、証人は必要だ。大澤係長のことがあって妙な空気が流れているとはいえ、彼女達はまだ私に逆らえない。
山田さんに直接嫌がらせをしたのは私じゃなく、彼女達だから。
「ちょっと外に出ましょうか」
ニッコリ笑って、私は立ち上がる。
「…三ノ宮さん」
「行きましょう?いつまでもお店の中で言い争いしてるわけにもいかないし」
「三ノ宮さん!」
(なによ、その顔)
今さらなにかに勘づいて焦ったところで、もう遅い。
「…どうしてそんなに、私を目の敵にするんですか?」
「私はなにもしてないわ。私に恥をかかせたのは、あなたの方じゃない」
「…」
「とにかく、場所を変えましょう」
暗い表情の山田さんを一瞥して、私はそのまま店を出る。後からノソノソとついてくる彼女に、ますますイライラが募った。
「三ノ宮さん」
会社ビルのすぐ横の、歩道脇。そこにはすでに、庶務課の女子社員が数人立っていた。
「えっ」
驚いたように声を上げる山田さんを見て、思わず口角が上がる。
もう遅この場所で私が「山田さんと大澤係長に悪質な嫌がらせをされた」と騒ぎ立て、彼女達がそれに賛同する。
私自身もさらに妙な噂を立てられるかもしれないけど、どうせ辞めるって決めたんだしどうだっていい。
とにかく、山田さんと大澤係長にダメージを与えられるなら。
「みなさん、どうして…」
山田さんは困惑の表情で彼女達を見つめた後、私に視線を移す。
「証人よ。山田さんが言い逃ればかりするから、仕方なかったの」
「でもっ」
「もう、遅いから。ねぇ、みんな?」
「三ノ宮さん…それが…あの…」
女子社員の一人が、今にも泣き出しそうな顔でしどろもどろにそう言った。
「は?なに?もっとハッキリ…」
「利香子さん」
唐突に呼ばれた名前に、驚いて後ろを振り返る。
その瞬間、ここに居るはずのない人物が居ることに思考が停止した。
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