居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

第九章

アボカドとチキンのサンドイッチと、同期の彼⑨

山田さんが俺に気がないのが分かっていたから、なかなか勇気が出せなかった。

同期として全く下心のない顔をして相談を受けながら、本心ではもっと仲良くなりたいと思っていた。そんな卑怯なことをしていたから、バチが当たったのかもしれない。

「大澤係長の側なら、山田さんも安心ですね」

多無理矢理作った笑顔は、きっと痛々しく見えていると思う。

「彼女のことを、全力で大切にする」

大澤係長の誠実な言葉は、俺に向けてのもの。この人はとっくに気づいてるんだ。俺が山田さんに、同期以上の感情を抱いていたということに。

だからこそこういう場を設けてくれたんだろうし、終始申し訳なさそうにしているのも俺を出し抜いたのではないかと思っているから。

大澤係長はなにも悪くない。一歩踏み出せなかった臆病な俺とは違い、ちゃんと行動に移した。

二人の間にどんな出来事があって付き合うまでに至ったのか、詳しいことまでは分からない。

今さら後悔したところでもう遅いけど、どうしても思わずにはいられなった。

（もっと、頑張ればよかった）

もしかしたら今彼女の隣に立っていたのは、俺だったかもしれないのに、と。

「大澤係長がついているなら、もう安心ですね」

最初は、あんなに美味しいと思ってた数々の料理も、最後の方は味すらよく分からなくなった。




「ご馳走様でした。今日はわざわざありがとうございました」

「後半はプライベートな話題ばかりで悪かったな」

「いえ。大澤係長の口から色々と聞けて嬉しかったです」

「これからもよろしく」

「それは俺の台詞ですから！」

大澤係長は、穏やかな笑顔でポンと俺の肩を叩く。見れば見るほどかっこよくて、俺なんかが勝てるわけもないと素直に思う。

「じゃあ、また」

「はい、お疲れ様でした」

大澤係長の背中をボーッと見つめながら、できる男は後ろ姿までサマになるなんて、どうでもいいことを考えた。