上 下
107 / 216
第八章

ポークチャップと、懐かしい思い出⑫

しおりを挟む
ふと思い出しては悲しくなったり悔しくなったり、夢に出てくるくらいにはまだ昇華できてない気持ちもある。

だけど私は。

「やり返しません」

きっぱりと、彼の目を見ながら言いきった。

「もう私は、心の中からあの人達を追い出すって決めたんです。自分の未来のために」

「来未」

「やり返せたらスカッとするかもしれないけど、そうなるまでにまた戦わなくちゃいけないなんて嫌だし、面倒です」

「面倒…そうか」

「そう、だからもう捨てることにします。いつまでも根に持っていても、疲れそうなので」

「ははっ。来未って意外とサッパリしてるな」

そう口にする大澤係長は、なんだか楽しそうだった。

「俺は正直、アイツらをあの会社追い出すだけじゃ足りないくらいだけど」

「それは脳内でもうやりましたから」

「いいなそれ。俺もやるわ」

「ふふっ

私が笑うと、新太さんも嬉しそう笑うから胸がキュンと高鳴る。

「こんな風に思えるのは、新太さんのおかげです」

「俺?」

「私は一人じゃないんだなって思えるから。なにがあっても味方でいると言ってくれたこと、一生忘れません」

「来未…」

「私は本当に、幸せ者です」

「来未を見つけた、俺の方が幸せだ」

「フフッ、なにそれ」

「あんなヤツらのことなんか思い出すヒマもなくなるくらい、俺でいっぱいにするから」

「またかっこいいこと言ってる」

クスクス笑う私の頬っぺたを摘んで、そのままパクッと食べる動作をする。

「ちょっ、大澤係長っ」

「可愛いのが悪い」

そしてペロリと、舐められた。

「呼び方、戻ってる。敬語も」

「あ…」

「また練習する?最中なら、上手に言えてたし。な?」

ニーッて効果音がつきそうな笑顔を浮かべながら、新太さんはあっという間に私を組み敷いた。

「来未、好き」

「ず、ずるっ」

「ハハッ」

楽しげに喉を鳴らしながら、新太さんは私にキスをする。

結局そのまま私は、明け方近くまで寝かせてもらうことはできなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう二度と離さない~元カレ御曹司は再会した彼女を溺愛したい

魚谷
恋愛
フリーライターをしている島原由季(しまばらゆき)は取材先の企業で、司馬彰(しばあきら)と再会を果たす。彰とは高校三年の時に付き合い、とある理由で別れていた。 久しぶりの再会に由季は胸の高鳴りを、そして彰は執着を見せ、二人は別れていた時間を取り戻すように少しずつ心と体を通わせていく…。 R18シーンには※をつけます 作家になろうでも連載しております

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。

紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
★第17回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました★ 夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。 【表紙:Canvaテンプレートより作成】

助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません

和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる? 「年下上司なんてありえない!」 「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」 思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった! 人材業界へと転職した高井綾香。 そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。 綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。 ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……? 「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」 「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」 「はあ!?誘惑!?」 「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」

契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない

ラヴ KAZU
恋愛
橘花ミクは誕生日に恋人、海城真人に別れを告げられた。 バーでお酒を飲んでいると、ある男性に声をかけられる。 ミクはその男性と一夜を共にしてしまう。 その男性はミクの働いている辰巳グループ御曹司だった。 なんてことやらかしてしまったのよと落ち込んでしまう。 辰巳省吾はミクに一目惚れをしたのだった。 セキュリティーないアパートに住んでいるミクに省吾は 契約結婚を申し出る。 愛のない結婚と思い込んでいるミク。 しかし、一途な愛を捧げる省吾に翻弄される。 そして、別れを告げられた元彼の出現に戸惑うミク。 省吾とミクはすれ違う気持ちを乗り越えていけるのだろうか。

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

真面目ちゃんは溺愛されている【完結】

恋愛
優等生で真面目過ぎてまわりから浮いてしまう未智と、そんな未智を溺愛している幼馴染で社長の夏樹の恋模様

処理中です...