居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

第七章

鮭茶漬けと、諸悪の根源⑪

「あっ、お帰りなさい」

まさか、起きて待っていくれていたとは。

笑顔で迎えてくれる山田さんを見て、胸が絞られるように苦しくなる。

さっきよりもさらに申し訳なさが襲ってきて、情けない話だが泣きたくなった。

「大澤係長？大丈夫ですか？」

優しい声色が、胸に刺さる。

（ごめん、山田さん）

俺は今日、君のためにならないことをしてしまった。

上司としてもあるまじき行動だったし、山田さんの立場を考えてもあんな風に喧嘩を売るべきではなかった。

あれでは、俺と山田さんが繋がっていると言ってるようなものだ。

ともすれば、山田さんが俺に頼んだと思われるかもしれないのに。

「いや…」

こんなに後悔したことが、今までにあっただろうか。

純粋に俺を心配する彼女を見て、ますます自己嫌悪に陥った。

「なんか、腹減ったな」

（マジで反省したのか、俺）

結局、あの場では何杯かビールを飲んだだけで、料理にはほとんど手をつけなかった。山田さんの顔を見たら安心して、急激に空腹が襲ってきた。

飲み会から帰ってきたくせに腹が減ったと言い出す俺に、山田さんは一瞬目を丸くする。

そして可愛らしく笑いながら「分かりました」と優しい声色でそう言った。




「即席ですけど、どうぞ」

「ありがとう。ごめんな、夜中に用意させて」

「大丈夫です。簡単なものですから気にしないでください」

山田さんが出してくれたのは、お茶漬け。緑茶のいい香りが、フワッと鼻腔をくすぐる。

「素がなかったので、冷凍していた出汁と鮭フレークで作りました」

「…うまい」

色んな意味で、体に沁み渡る。

「ごめん、山田さん」

俺は今日の出来事を、全て正直に話した。山田さんは、ただのひと言も俺を責めなかった。