居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

第七章

鮭茶漬けと、諸悪の根源⑩

ーーお前は、器用貧乏だ

昔から、家族によく言われていた。なんでもそれなりにこなせても、肝心なところがダメなんだと。

特に対人関係において、本当の意味で相手のことを思いやれていないらしい。

両親からも「お前の頭の中を他人が覗けるわけではないと知れ」と、ことあるごとに叱られていた。

今までは適当に流してきたが、思えば母親の言うことは正しかったんだろう。

山田さんにしてきたことを振り返ってみて、あらためてそう思う。

半ば強引な提案で彼女を引き込み、想いを伝える前に体の関係を持ってしまった。

俺からしてみれば、そもそも好意のない女性を部屋には招かない。

だから、多少言葉足らずでも理解してもらえるだろうと。

だけど山田さんの側に立ってみれば、部屋に住まわせる代わりに体を要求されたと感じても、それは仕方のないこと。

幸い彼女はそんな風には考えていなかったようだが、それで嫌われたとしても俺はなにも言えない状況を、自分で作ってしまった。

さっきの飲み会のこともそうだ。山田さんが、俺になにか行動してほしくて打ち明けてくれたわけではないことは、分かっていたのに。

三ノ宮の態度を見ていたら腹が立ってしたかなくて、あんな子供じみた喧嘩の売り方をしてしまった。

もっと、上手く立ち回れる人間だと思っていたのに。

どうやら俺は自分のことを、買い被り過ぎていたようだ。

「はぁ…」

（俺はなにやってんだ、アホ）

タクシー中に陰気くさい空気が充満している気がする。ミラー越しに映る運転手の顔色が最初よりも青白く見えるのは、俺の気のせいか。