居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

第四章

野菜たっぷりラーメンと、初めてのお出掛け⑫

野々原さんは、私が会社を辞めた理由をそれ以上聞かなかった。近況報告とかそういうのをおもしろおかしく話してくれて、それに笑って癒された。

「今度、飲みに行こうよ。同期のヤツら誘ってでもいいし」

「…」

「山田さん？」

「あっ、はい。ぜひお願いします」

「じゃあ、遅くにごめんね」

「ありがとうございました。おやすみなさい」

「おやすみ」

電話を切った後、無意識に溜息が零れ落ちる。

嬉しいしありがたいけど、申し訳なさの方が勝ってしまう。嘘を吐いている罪悪感が、心にこびりつく。

野々原さんはいい人だし尊敬してるけど、久しぶりに話したら凄く緊張した。

そういえば最初は、大澤係長と話すのも緊張した気がする。特に係長の場合は、仕事完璧人間というイメージが先行していたのもあるし。

だけど不思議だ。それが今は遥か昔のことみたい。話せば話すほど、自然と緊張が解けて肩の力が抜けていく。

いい人だな、優しい人だな、楽しい人だなって。

あの大澤係長相手に居心地がいいなんて、私が言うのもおこがましいかもしれない。

あの夜は、ただ流されただけじゃない。

私が自分の意思で、大澤係長を求めたんだ。

好きや付き合おうと言ってもらえるなんて、一ミリも頭になかった。それでも構わないと、覚悟を決めた。


セフレになるなんて、きっと私には無理だけど。

あの時の私の中には、断る選択肢なんて存在しなかったんだ。

深呼吸を繰り返した後、私はゆっくりとドアを開けた。

「さっきはすみませんでした」

（大丈夫、まだ大丈夫）

この恋心は、ちゃんと心にしまっておける。