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第一章
唐揚げのお弁当と、元上司⑨
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お気に入りの、曲げわっぱのお弁当箱。この子も明日からしばらく出番がないのかと思うと、なんだか寂しい。
「どうぞ」
「お、うまそう」
あの会社で食べるつもりだった最後のお弁当は、私の大好きなおかず達。
にんにくと生姜をたっぷり使った、自家製の唐揚げ。ブラックペッパーとマヨネーズをしっかり揉み込むのが、私のお気に入り。
三ノ宮さんに何か言われたら、これを食べた後の息を顔面に吹きかけてやろうかななんて密かに考えたりしてた。
実際、色んな感情で胸がいっぱいでご飯どころじゃなかったけど。
あとはアスパラガスのわさび和えと、厚焼き玉子、それにパプリカのマリネ。
「いただきます」
「どうぞ」
大澤係長は丁寧に手を合わせて、豪快に唐揚げにかぶりついた。
「…」
「どうでした?傷んでますか?」
「いや、うまい。すげぇうまい」
すぐに、もう一口。唐揚げと一緒に、ごま塩がかかったご飯をパクッと食べる。
「これ、本気でうまい。一個がデカくて食べ応えあるし」
「よかったです。悪くなっていなくて」
大澤係長は、すでに三個目の唐揚げを箸で掴んでる。
「このアスパラもうまい。これも。この卵焼きも、マジでうまい」
「フフッ」
さっきから、係長「うまい」しか言ってない。
気持ちいいくらいの食べっぷりだし、見ているだけで思わず口角が上がる。
「山田さんって、料理上手なんだな」
「上手かどうかは分かりませんが、作るのは好きです。小さな頃から、母に習っていたので」
「じゃあ俺は今、山田家直伝の味を食えてるってわけだ」
「アハハ、大げさです」
「いつも思ってたんだよ、山田さんの弁当うまそうだってさ」
「いつも?」
「そう」
大澤係長が、また手を合わせる。
いつのまにか、お弁当箱は綺麗に空っぽ。お米一粒さえ残っていなかった。
「ご馳走さま」
「お粗末さまでした」
「うまかった、本当に」
そんな大層なものじゃないのに。
でも、褒めてもらえるのは素直に嬉しいと思う。
「どうぞ」
「お、うまそう」
あの会社で食べるつもりだった最後のお弁当は、私の大好きなおかず達。
にんにくと生姜をたっぷり使った、自家製の唐揚げ。ブラックペッパーとマヨネーズをしっかり揉み込むのが、私のお気に入り。
三ノ宮さんに何か言われたら、これを食べた後の息を顔面に吹きかけてやろうかななんて密かに考えたりしてた。
実際、色んな感情で胸がいっぱいでご飯どころじゃなかったけど。
あとはアスパラガスのわさび和えと、厚焼き玉子、それにパプリカのマリネ。
「いただきます」
「どうぞ」
大澤係長は丁寧に手を合わせて、豪快に唐揚げにかぶりついた。
「…」
「どうでした?傷んでますか?」
「いや、うまい。すげぇうまい」
すぐに、もう一口。唐揚げと一緒に、ごま塩がかかったご飯をパクッと食べる。
「これ、本気でうまい。一個がデカくて食べ応えあるし」
「よかったです。悪くなっていなくて」
大澤係長は、すでに三個目の唐揚げを箸で掴んでる。
「このアスパラもうまい。これも。この卵焼きも、マジでうまい」
「フフッ」
さっきから、係長「うまい」しか言ってない。
気持ちいいくらいの食べっぷりだし、見ているだけで思わず口角が上がる。
「山田さんって、料理上手なんだな」
「上手かどうかは分かりませんが、作るのは好きです。小さな頃から、母に習っていたので」
「じゃあ俺は今、山田家直伝の味を食えてるってわけだ」
「アハハ、大げさです」
「いつも思ってたんだよ、山田さんの弁当うまそうだってさ」
「いつも?」
「そう」
大澤係長が、また手を合わせる。
いつのまにか、お弁当箱は綺麗に空っぽ。お米一粒さえ残っていなかった。
「ご馳走さま」
「お粗末さまでした」
「うまかった、本当に」
そんな大層なものじゃないのに。
でも、褒めてもらえるのは素直に嬉しいと思う。
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