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第一章
唐揚げのお弁当と、元上司⑤
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「あ…すみません」
つい感慨に耽ってしまった。こんな凄い人に顔と名前覚えてもらっていただけでも、私がこの会社で働いてた意味はあったのかもしれない。
なんて。
なんでもいいから、私の存在が会社にとって少しでもプラスだったと、自分の中で理由付けしたかっただけだ。
「別に謝る必要はない」
「あの…今までお世話になりました」
「は?」
「失礼します」
さっき会社に向かってしたように、大澤係長にも深々と頭を下げた。
お世話してねーよって思われそうな気もするけど、まぁいいか。
「ちょっと待って」
そのまま帰ろうとした私の腕を、大澤係長が軽く掴む。
「わっ」
「あ、ごめん」
「いえ、すみません」
引き止められるなんて思っていなかったから、つい大げさに反応してしまった。
「山田さん、なんかあった?」
「え?」
「様子がおかしいから」
「あ、あの」
ほとんど話したこともないのに気にしてくれるなんて、仕事の鬼と言われているらしいけど、実は優しい人なのかもしれない。
普段は近寄りがたい感じしかしなかった。
「違ってたら申し訳ないけど」
「私、今日で会社を辞めるんです。いや、辞めたんです。が正しいかな」
「…は?」
心底驚いたように、大澤係長が目を見開く。
「なんで?まさか、寿退社?」
「違います。一身上の都合、といいますか」
「…ふぅん。でも、誰もそんなこと言ってなかったと思うけど」
「それは、その…少し急だったので」
「急?」
「昨日、決めたんです」
大澤係長の眉間に、グッと深い皺が寄った。
つい感慨に耽ってしまった。こんな凄い人に顔と名前覚えてもらっていただけでも、私がこの会社で働いてた意味はあったのかもしれない。
なんて。
なんでもいいから、私の存在が会社にとって少しでもプラスだったと、自分の中で理由付けしたかっただけだ。
「別に謝る必要はない」
「あの…今までお世話になりました」
「は?」
「失礼します」
さっき会社に向かってしたように、大澤係長にも深々と頭を下げた。
お世話してねーよって思われそうな気もするけど、まぁいいか。
「ちょっと待って」
そのまま帰ろうとした私の腕を、大澤係長が軽く掴む。
「わっ」
「あ、ごめん」
「いえ、すみません」
引き止められるなんて思っていなかったから、つい大げさに反応してしまった。
「山田さん、なんかあった?」
「え?」
「様子がおかしいから」
「あ、あの」
ほとんど話したこともないのに気にしてくれるなんて、仕事の鬼と言われているらしいけど、実は優しい人なのかもしれない。
普段は近寄りがたい感じしかしなかった。
「違ってたら申し訳ないけど」
「私、今日で会社を辞めるんです。いや、辞めたんです。が正しいかな」
「…は?」
心底驚いたように、大澤係長が目を見開く。
「なんで?まさか、寿退社?」
「違います。一身上の都合、といいますか」
「…ふぅん。でも、誰もそんなこと言ってなかったと思うけど」
「それは、その…少し急だったので」
「急?」
「昨日、決めたんです」
大澤係長の眉間に、グッと深い皺が寄った。
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